カテゴリー別アーカイブ: 学術情報

  • 便秘と寿命

    2021.06.01
    便秘に悩みながら毎日の生活を送る人はとても多くいますが、普通は数日から長くても1週間くらいで排便があり、たとえつらい思いをしたとしても、ほとんどの場合、生命に影響が及ぶような事態にはなりません。注1.注2.   また、お医者様にかかるような場合も、便秘はほぼ内科的に治療が可能で比較的予後が良く、手術を必要とする症例は少ないと考えられています。注3.  そんな、ありふれていて、しかも危険を感じさせない便秘ですが、実は、長期的にみると、死亡リスクの増加があり、寿命に多少影響しているのではないかという気になる指摘があります。今回は、その中から2つの研究をご紹介します。   ■胃腸障害と生存率の関係についてのアメリカの研究 アメリカ・ミネソタ州の住民を対象行われた、あるコホート研究では、機能性胃腸障害(慢性便秘、消化不良、過敏性腸症候群、腹痛、慢性下痢)をもっている約4,000人の成人を追跡調査し、それぞれの障害の有無が10年後の生存率にどの程度影響するかを統計的に解析しました。解析の過程では、他の重大な疾患が原因でそれらの機能性胃腸障害がおきたことが分かった被験者は除外していますから、例えば癌が原因で便秘になっていたなどというケースは含まれません。 結果は、興味深いものでした。それら機能性胃腸障害のうち、慢性便秘だけが生存率に影響を及ぼしていることが示唆されたのです。慢性便秘でない被験者の10年後の生存率が平均で85%だったのに対し、慢性便秘の被験者は73%で、12%の差がありました(消化不良、過敏性腸症候群、腹痛、慢性下痢については生存率の大きな低下は見られませんでした)。年齢・性別・喫煙・飲酒・教育レベル・併存疾患について統計的に調整をしたあとでも、慢性便秘の人々の生存率は低いままでした。なお、慢性便秘の被験者に大腸など消化管の癌が増えたということは、ありませんでした。 原著はこちら→   Joseph Y Chang, et al. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol. 2010 Apr;105(4):822-32. 著者らは、慢性便秘がなぜ10年後の生存率に影響を及ぼしたのかは不明で、さらなる調査が必要だと述べています。   ■排便頻度と心血管疾患死の関係についての日本の研究 宮崎県で国民健康保険加入者を対象に行われたコホート研究では、排便頻度と循環器系疾患による死亡との関係について検証が行われました。約45,000名を対象にし、排便頻度で被験者を「1日1回以上」「2~3日に1回」「4日に1回以下」3グループに分け、各グループの13年間の心血管疾患(循環器系疾患、脳血管疾患、虚血性心疾患)による死亡リスクを解析しました。 その結果、排便頻度が少ないグループほど、心血管疾患による死亡が多いことが分かったのです。「2~3日に1回」、「4日に1回以下」の各グループの全体的な心血管疾患死のリスクは「1日1回以上」グループと比較して有意に高くいものでした。死亡するリスクの大きさを相対的に示すハザード比は「2~3日に1回」が1.21、「4日に1回以下」が1.39でした。 原著はこちら→   Kenji Honkura, et al. Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016 Mar;246:251-6.   ■便秘だと、本当にリスクが高まるのか? この2つの研究を通してわかるのは、便秘と生存率の相関関係であり、その因果関係についてはよくわからないという点には注意が必要だと思います。 とはいえ、アメリカの報告の方では生存率に関係しそうな諸要素(性・年齢・既往症・喫煙や飲酒の習慣など)の影響を除外する調整を行っていますし、また日本の研究では同様の調整に加え、歩行時間や野菜や果物の摂取傾向についてまでも調整しています。この2つの調査をもってはっきりした関係があると決めつけることはできなくても、「リスクが高まる恐れはある」と考えるに越したことはないかもしれません。 例えば、便秘が大腸癌発生のリスクになるかどうかについては、いまだによく分かっていないのですが、これについては「Yes」を示唆する研究結果と「No」を示唆する研究結果がどちらも沢山存在しています。注3 一方で、死亡リスクについては、便秘がリスクを高めるという研究はこれ以外にもありますが、便秘が寿命を延ばすという研究結果は、少なくとも私たちは、まだ見たことがありません。   ■まずは腸活 やはり、できるだけ便秘解消や便秘予防につとめたほうが良さそうではあります。ただし、10年単位でのリスクを下げることを目的に市販の便秘薬を飲むのは、短絡的すぎますし、薬には副作用があることを無視した誤った発想だと思います。一番良くないのは、便秘であることを気にすることもなく乱れた生活を続け、強い便秘薬をたくさん飲んで出すような日々を送ることです。また、便秘であることを気にして憂鬱になっていては、毎日がつまらないものになってしまいます。 まずは腸活にとりくみ、「快食快便」をゴールに楽しく便秘解消や便秘予防に取り組むのが、一番よいと思います。市販の便秘薬を使うとすれば、生活改善などで便が出なかったときに、頓服用に賢く使うのが理想です。そして、思い悩んだ時には、薬剤師(当社のお客様相談窓口も薬剤師・登録販売者常駐です)や医師に相談するようにしてください。   注1:きわめて重度の便秘は、最終的に腸管が破れてしまったり、敗血症をおこしてしまって死に至る場合がありますが、それは非常にまれであり、また通常はそうなる前に苦しさから受診に至り専門の医療機関で処置が行われることになりますので、このブログでは取り扱いません。 注2:普通の便秘にみえても、急に便秘症になった場合や血便がみられる場合は、他の重大な疾患が隠れていることもありますので、気になる方はお医者様に診てもらうようにしてください。 注3:参考文献:日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年    ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。 見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。 こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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  • 便秘とはなにかー 今回は、便秘の定義についていくつかの視点から整理してみたいと思います。普段暮らしていくうえで、便秘の定義が分からなくても、全く困ることはないのですが、いざ詳しく知るために便秘をきちんと定義しようとすると、実はこれが結構難しいのです。   ■日本語としての便秘 皆さまは、便秘というコトバを最初に知ったのがいつ頃だったか、覚えていますでしょうか?きっと、幼い頃、生活の中で記憶もはっきりしていないうちに覚えた方が多いはずです。3歳か4歳の頃に あなた:「うんちがでない!」 おとな:「あら、便秘なのね…」こんなやり取りを通じて、便秘という日本語を知ったのではないかと思います。 便秘というコトバの日本語の意味は、「広辞苑」によると、
    大便が通じないでとどこおること。便通の回数または量が異常に減少すること。 「広辞苑」第4版 新村 出編 岩波書店 1991年
    だそうです。一見、簡潔です。ただ、「回数や量が異常に減少する」というのは、今一つ具体的ではありません。この語意だと、私たちは、幼少期から今までの自らの経験や周囲の人の様子から、回数や量が正常か異常かを自己判断するしかなくなってしまいます。これでは、広くみんなで比較することができません。   ■国際的な診断基準 しかし一方で、客観的に定義するのも実は結構難儀なことなのです。 研究者の世界では、便秘について(機能性便秘という一般的な便秘)、国際的な診断基準があります。Rome基準という、消化管障害全体の国際基準体系のなかに含まれており、その基準は次の通りになります(太字筆者)。
    RomeⅣ基準による機能性便秘の定義 1 .次の 2 項目以上を満たすこと. a .排便の 1/4(25%)以上のいきみがあること. b .排便の 1/4(25%)以上に兎糞状,硬便(ブリストル便形状スケール 1 ~ 2 )を認める. c .排便の 1/4(25%)以上に残便感がある. d .排便の 1/4(25%)以上に直腸肛門の閉塞感がある. e .排便の 1/4(25%)以上に用手的な操作(例えば摘便,骨盤底の圧迫)が必要である. f .自発的排便が週 3 回未満 2 .下剤を使用せずに軟便になることがほとんどない. 3 .過敏性腸症候群の診断基準を満たさない 日本大腸肛門病会誌 第 72 巻第 10 号 2019 年 10 月・尾﨑隼人ほか
    なお、1.bのブリストルスケールについては、下の図(これは当社作成)をご参照ください。スケール1~2は、下図の便の絵の一番上と、上から2番目です。 ブリストルスケール さて、この国際基準、どう思われましたでしょうか。専門家向けですから、細かいものであるのは仕方がないかもしれません。そして、具体的に定義されていますが、普通の人からみると構造がやや難解かと思います。そして何より、自発的排便が週3回未満というのが、一般人の感覚からいうと結構厳しい基準に見えないでしょうか。   ■一般の人が、便秘を自覚するとき 一般の人たちの便秘についての感じ方は、この国際基準と異なっていることが、実際に指摘されています。 本ブログでは以前、「ニッポン人の便秘事情を俯瞰する」と題したエントリーで、日本人の28%が便秘だと自己認識しているということを示した論文をご紹介しました。 Tamura A, et al. : Prevalence and Self-recognition of Chronic Constipation: Results of an Internet Survey. J Neurogastroenterol Motil. 2016; 22(4): 677-84) この中で著者らは、この28%の便秘と自己認識している人たちの1週間の排便回数の平均は、週4.2回だったと述べています。 また、ある海外の研究で、531人の患者と100人の専門家に便秘の定義について尋ねたところ、患者と専門家で答えが大きく違ったそうです。患者のうち50%が、医学的定義と違う状態を便秘だと言っており、27%が2日おき(週3.5回)以下の排便頻度を便秘だと答えたそうです。 M J Herz, et al.: Constipation: a different entity for patients and doctors.  Fam Pract1996 Apr;13(2):156-9. 一般の人は、専門家が医学上の必要性をもとに考えるよりも、便が出ない状態に、あせり・不快感・不自由を感じやすいようです。もし、本人が悩み苦しんでいるのに、専門家の便秘の定義から漏れているとしたら… 確かに何か本末転倒な気がします。   ■日本のお医者さまの最新の定義 では、日本のお医者様は今、どう考えているのでしょうか。本ブログでも時々参照している2017年の慢性便秘症診療ガイドラインでは、次のように定義されています(太字筆者)。
    本来対外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態 日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年
    この定義では、便秘とは症状名や疾患名ではなく、状態を表すコトバであるとしており、定義の中に排便頻度の目安はありません。このガイドラインが出される前には、前述の国際基準や「3日以上排便がない」等の基準が定義として広く使われてきましたので、結局一周まわって広辞苑のコトバの説明に近いところに戻ってきた気がしない訳ではありません。でも、患者各個人の感じ方にも幅があることを考えると、仕方のないことなのかもしれません。 少々複雑な説明で恐縮ですが、同ガイドラインでは、国際基準RomeⅣをふまえた独自の診断基準を示しながら、その診断基準から外れていても、ガイドラインで定義したような便秘で日常生活に支障がでていたら便秘症と診断して治療することが望ましいとしています。定義を一般的にし、診療現場で柔軟に対応しようという考え方なのですね。   ◇◇◇ 結局、現時点では、本人が排便できず苦しんでいれば便秘と言え、それで日常生活に支障をきたすようならば治療が望ましいということになっています。逆の言い方をすれば、2日か3日排便がなくても、不具合を感じなければ直ちに治療が必要とはされません。 便秘の定義は、簡潔かつ患者目線にしようとすると、どうしてもあやふやさが残るようです。ここは、一般の人は日常生活に支障がない限りあまり細かく考えずに、昨日までの自分と比較しながら、腸活で快食快便を目指していくのもよいように思います。 そして、思い悩んだ時には、薬剤師(当社のお客様相談窓口も薬剤師・登録販売者常駐です)や医師に相談するようにしてください。   写真:大勢の人が悩む便秘。便秘を定義することは難しいですが、市販薬メーカーとして、きめ細かくニーズに寄り添って参りたいと思います。江戸城本丸跡から大手町を望む写真にそんな思いを重ねてみました。   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。 見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。 こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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