皆さん、ご自分の「うんち」を見ていますか? 便チェックで健康管理!
便は、お腹の調子や健康状態を教えてくれる重要な情報源です。
便をしっかり見て、便の形、色、大きさ、におい、便が出た後のスッキリ感などから健康をチェックして体調管理に気をつけましょう。
便を見て健康状態が良くないと思えたら、体調を良くするために生活習慣の改善に直ぐに取り組みましょう。
便は何からできている?
皆さんは、便が何からできているかご存じですか?
食べた物が胃や小腸などで消化・吸収されて、その残ったカスが便になると思われていませんか。
そして、腸は便を貯めて、便を出すところと思っていませんか?
でもチョット違うんです。
食べ物は、口で細かく砕かれ、胃・十二指腸で消化されてドロドロのお粥状になります。
そして、腸に運ばれて栄養素や水分を吸収して体にエネルギーや水分を供給します。
つまり、腸の状態や環境が良くないと体全体に影響してきます。
健康的な便は、約80%位は水分でできていて、残り20%位は食べた物のカス、腸内細菌、はがれた腸の粘膜細胞(垢の様なもの)からできているのです。
この便の水分量の違いによって、便は硬くなったり(水分量が少ない)、ゆるくなったり(水分量が多い)するのです。
食べた物のカスは、消化されなかった食べ物や栄養素を吸収した後の食物繊維などの残りカスです。
腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌です。善玉菌は乳酸菌やブヒィズス菌などで、悪玉菌は大腸菌やウェルシュ菌などです。
腸の環境を良くするには、善玉菌を増やしてあげることが、腸内環境を良くして健康でいられることにつながります。
はがれた腸の粘膜細胞は、皮膚の角質層が剥がれて垢となるように、腸の粘膜も粘膜の基底層で新しく細胞がつくられ、新しく作られた細胞は粘膜の表層に押し上げられ、常に生まれ変わっているのです。
このように食べた物のカス、腸内細菌、はがれた腸の粘膜細胞、そして主に水分によって便はできているのです。
便の形状(国際分類)
皆さんは、毎日ご自分の便の状態を見ていますか。
洋式トイレが普及し、最近ではセンサー対応した自動洗浄スイッチが反応して勝手に流れてしまって、見ることもできなくなってきていますが・・・。
体調が悪く病院に行った際、お医者さんから便の状態について色々と聞かれる場合もありますが、なかなか便の状態を説明することは難しいですね。
ところが、1990年に客観的に便の形状を説明できる指標が考案されたのです。
この指標では、便の形状を7つに分類しています。ブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)と言って、ブリストル大学病院のオドネル博士らの研究チームが考案した指標です。
オドネル博士らは、過敏性腸症候群などの研究をしていて、過敏性腸症候群の患者に適切な治療を行うためには、食べた物が腸の中を通過する時間を把握することが重要だと考えました。腸を通過する時間が短ければ水様の便であり、通過する時間が長ければ硬い便であることから、腸を通過する時間を把握するための客観的な指標として「便の形状」が考え出されたのです。スケールでは、便の表面のひび割れの状態や硬さによって7つに分類されています。ブリストルスケールでは、数字が小さいほど便が含む水分が少なく硬くなり、数字が大きいほど便は水っぽくなります。便秘のときの便は、ブリストルスケールでいうとタイプ1から2の水分の乏しい便になります。
なお、この分類では、便を「ソーセージ」という表現が使われていますが、日本では添付画像のように「バナナ」と表現する場合が多いようです。
出版)
O’Donnell LJD, et al. Br Med J 1990; 300: 439-440
Longstreth GF, et al. Gastroenterology 2006; 130: 1480-1491
慢性便秘ガイドライン 2017 の診断と治療 (南江塘)
便で健康チェック
便には体の調子を知るヒントが色々と隠されています。あまり見たくないものかもしれませんが、ここで少し便を観察してみましょう。
チェックポイントは、排便回数、排便量、形状、におい、色などです。
これらの項目から判断して、それらに変化が見られた時は、今日の自分の体調や体のどこかの不調に早く気付くキッカケとなり、日々の健康管理にも利用できます。
排便回数
1日1~3回から1週3回程度の回数なら正常範囲内です。
便の量
食べるものの量や種類によって違ってきますが、植物性の食物を多く食べる人では便の量が多く軟らかい便で、肉類を多く食べる人では水分の少ない便をする傾向があるようです。
形状
健康な便は、黄褐色のバナナ状でにおいが少なく、するりと出るソフトなものです。
ドロドロ状、水様な便は下痢です。水様の場合、粘液、血液などが混じると細菌性赤痢や伝染性下痢などが考えられます。
ウサギの糞のようなコロコロとした便が出る場合は、大腸のどこかがけいれんしているけいれん性便秘が考えられます。
太くて硬い便の場合は、大腸の運動が低下している弛緩性便秘が考えられます。
におい
食べた物や疾患によって影響されますが、においのもとは腸内細菌によってたんぱく質が分解され、イヤなにおいを放つスカトール、インドールという物質によります。便秘などで腸内の滞留時間が長くなると、においが強くなります。また、肉食が多いときは未消化のたんぱく質などによって強いにおいを発します。
色
正常な便の色調は黄褐色です。
黄色は高度の下痢便などで見られます。
茶~茶褐色は食べ過ぎ、飲み過ぎが考えられます。
濃褐色は便秘の時や肉類の多い食事で見られます。
黒色は上部消化管から出血している可能性があります。また、イカ墨料理、ビスマス剤、鉄剤、薬用炭でも黒色便になります。
緑色は授乳中の赤ちゃんの便やクロロフィルを多く含む緑色野菜を大量に食べる人の便は、緑色になります。
赤色は痔や肛門裂傷による出血やその他、腸の病気が隠れている可能性もあります。
その他、便の色に影響を及ぼすお薬もありますので、お薬を飲んでいる方は、薬剤師に詳しく聞いてください。
こうしたチェックポイントを私たちも知っておくと、日々の健康管理のためにも利用できます。日々の便の状態をきちんと把握することで、腸の健康状態がわかるのです。
株式会社山崎帝国堂 薬剤師。
スポーツファーマシスト/日本薬剤師会、千葉県薬剤師会の会員。
中堅製薬企業にて医薬品開発に従事し、消化性潰瘍治療薬を2品目上市。
現在、専門学術領域は日本微量元素学会、日本微量栄養素学会、日本栄養・食糧学会を中心に活動。 日本微量元素学会の代議員を務める。