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生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために

2021.11.01

2回シリーズで、生薬(しょうやく)について解説しています。生薬とは、天然の植物・動物の薬効部位を使った薬のこと。前回の「生薬の話①」では、その魅力と歴史について簡単にご紹介しました。今回は、長い歴史から得られる知見を実際の薬の効能効果につなげていくためにの、処方と製法についての工夫についてお話させて頂きたいと思います。

■なぜ処方と製法が大切なのか

 

素晴らしい魅力を秘めた生薬ですが、その自然の力を、現代社会が求める水準の医薬品として活かしていくには、しっかりとした処方と製法で、プロの手によって、お薬に仕上げていく必要があります。

 

みなさまは、「医薬品の3要素」というのを聞いたことはありますでしょうか?それは、「有効性」「安全性」「品質」の3つです。現代社会では、これらを全て高い水準で満たすものだけが、信頼できるお薬とされています。薬を司る法律・薬機法の正式名称が “医薬品、医療機器等の品質有効性及び安全性の確保等に関する法律” であることからも、3要素が決定的に大切であることが分かります。実は、自然の恵みをそのまま薬として活用しようとするときには色々な難しさがあります。そんな中で、処方は「有効性」と「安全性」を担保するものであり、製法は「品質」を現代レベルで担保するために必要なものなのです。

 

 

■生薬をつかった処方について

 

 

一般に「処方」といえば薬の調合や服用法についての指示のことを指しますが、ここでいう処方は、生薬の組み合わせかたのことです。生薬を上手にブレンドし、身体全体に効能をいきわたらせるために、良い組み合わせ方を見つけることは非常に大切です。しかし一方で、生薬はひとつひとつに無数の成分を含み、しかも生薬を組み合わせれば、それぞれの相互作用もでてきます。現代社会で求められるレベルの「有効性」と「安全性」を、全ての物質についてデータを科学的に積み上げていく手法で担保することは困難です。なので、生薬のお薬の「有効性」「安全性」ついては、処方自体の歴史(長いものでは数千年)や長年の使用実績が何よりの担保になってきます。

 

日本の医薬品において、生薬の処方はいくつかの系譜に分類でき、入手できる方法も様々ですが、今回は身近な街のドラッグストアで見かける2大勢力、漢方薬(一般用)と、生薬を用いた家庭薬についてご紹介します。

 

 

(1)漢方薬(一般用)

 

例:葛根湯、防風通聖散

漢方薬は、古代中国から伝来し、その後日本で発達した「漢方医学」の理論に基づいて、生薬を組み合わせた薬です。漢方というと中国直輸入の処方のように見えますが、漢方医学は日本で独自の体系化を遂げてきたもので、中国の中医薬に基づく中薬(そのように呼びます)とは処方や配合量が異なっています。ドラッグストアで買える一般用の医薬品としては、2021年現在294の処方が国により認められ、様々なメーカーにより販売されています。処方の名前そのもので売られていることが多いですが、例えば「ナイシトール」など別の名前がつけられている場合もあります。漢方処方は、処方・剤形・製法が古医書に規定されているのが特徴です注1。長い歴史の裏付けのある、実証と書物に基づいた処方です。

 

(2)生薬を使った家庭薬

 

例:龍角散、毒掃丸

家庭薬とは、「長い伝統と使用経験を積んだ家庭の常備薬」のことで、法的な定義はありませんが、いわゆる薬局薬店でよく見かける昔ながらの一般用医薬品のことを指します。生薬を使ったものが多く、そうした家庭薬の代表例は龍角散太田胃散救心宇津救命丸などで、毒掃丸もその一つです。どれも、一度は聞いたことがある商品ですよね?いずれも複数の生薬を用いていますが、漢方薬とは言いません。

 

これらの家庭薬のルーツは、様々です。例えば毒掃丸は、漢方処方の1つで、江戸時代中期の医師・香川 修徳(かがわしゅうとく)が残したと言われる「香川解毒剤」をもとにしたものですし、他の処方には、漢方を中心に蘭方(江戸時代に日本にもたらされたオランダ医学)の知恵を摂り入れたものもあります。また、数百年前から語り継がれる一子相伝の秘伝薬だったものもあります。古くからの知恵を生かしながらも、古医書に縛られず、新しい知識も取り入れています。

 

生薬を使った家庭薬に共通しているのは、日本社会に広く受け入れられた処方であることと、市場での長い使用実績をもつことです。伝統を踏まえつつも、近代・現代人の生活スタイルにより合った処方といえるでしょう。

 

各製品の歴史がわかるサイト:家庭薬ロングセラー物語 龍角散太田胃散救心宇津救命丸毒掃丸

毒掃丸の歴史はこちらも:毒掃丸と「毒退治」のトラ

生薬が並ぶ棚の写真

 

 

■製法について

 

製法、つまりどのようにして生薬を薬に仕上げるかは、医薬品の3要素の1つ「品質」を担保するために重要です。わかりやすいように製法と表現しましたが、薬の世界の用語でいうと、剤型(=薬のかたち 例:錠剤)や製造方法のことを指しています。古くから臨床応用されてきた処方と同等の品質にならない剤型で作ったり、大切な成分が変質してしまうような製造方法をとれば、期待している有効性が発揮できないかもしれません。

 

生薬を加工した剤型には、様々なものがありますが、伝統的かつ代表的な方法は、煎剤(せんざい)と丸剤です。煎剤とはいわゆる煎じ薬のことで、刻んだ生薬をティーバックのような袋に入れ(現代の場合)、土瓶などを用い、湯で煮詰めたものを飲みます。古来、漢方医学では煎じてのむ処方がほとんどなので、そうした処方の場合は、煎剤が最も「正統な」飲み方で、効果もより期待できます。風味が強いこともありますが、生薬においては、風味も薬の一部です。一方で、飲み手の側で手間がかかるほか、単に水で煮詰めるだけでは精油成分が引き出せないなどの欠点もあります。

 

煎じ薬のイラスト

 

丸剤は、生薬を粉末にしたものを丸く加工したもので、携帯性にすぐれ、すぐに飲める、のみ手には便利な剤型です。また、胃で溶け出すまで時間がかかりますから、ゆっくり効き目が表れるという特徴があります。本来煎剤として伝わってきた漢方処方を、煎じずに粉末にして服用しても、効果が得られないものがあるともいわれ注2、なんでも丸剤にできるわけではないのですが、丸剤は自然の恵みの生薬をまるごと粉末にしているため、水で煮だせない成分などを含む、薬効部位全体を残さず体にとりいれることができる点で優れています。ちなみに、毒掃丸は、のみやすさ・調節のしやすさも考えたうえで、天然の生薬の恩恵を丸ごと活かすために小さな粒の丸剤となっています。

 

煎剤と丸剤の他に、煎剤の欠点を補うために昭和30年代以降に登場した剤型として、エキス剤というものもあります。エキス剤は、生薬を適切な溶剤で浸出し、それを濃縮したもので、煎剤に効果がやや劣る場合があるものの、顆粒として服用できるので携帯に非常に便利です。現代では、エキス化した生薬を原料にすることで、ドリンク剤・錠剤・カプセル剤など様々な剤型の医薬品に生薬が含有されるようになっています。

 

このように、生薬の魅力を活かしながらも品質の高いお薬を作るために、化学成分の医薬品とはちょっとちがう、様々な剤型の生薬製剤が存在しているのです。

丸剤の写真

 

また、製造方法も品質を左右します。まず製薬会社として、製造管理・品質管理の基準(GMP:Good Manufacturing Practice といいます)を遵守することは大原則です。そのうえで、生薬を用いた医薬品を作るには、独特のノウハウが必要です。薬効成分の均一性を保つこと、服用後適切なタイミングで溶けるようにすること、熱をかけるときに成分を破壊してしまわないこと、などなど、天然物を適切に加工しなければなりません。同じ材料を同じ機械で加工しても、ノウハウの有無によって、成分のバランスが変わり、のんだ後の実感が異なることもあり得ます。

 

こうした生薬独特の難しさを克服し、伝統の生薬処方を安全安心の現代的医薬品としてお届けしようと、当社を始め、漢方薬や生薬製剤を扱う製薬会社の製造管理・品質管理の部門のスタッフが、日々の職務に励んでいます。

 

注1:参考サイト 日本漢方生薬製剤協会 webサイト内「漢方の解説」2021年10月29日閲覧 注2:参考文献:秋葉哲夫、医療用漢方製剤の歴史、日東医誌 2010、vol.61-7, p881-888

 

写真説明:丁寧に製造された毒掃丸は、最後に人の目で目視され、ビンに充填されていきます。

 

ひとこと

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