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  • 生薬(しょうやく)や漢方の医薬品は、天然の植物・動物の薬効部位をそのまま活用した、自然の恵みを活かしたお薬です。市販されている便秘薬の中には、生薬を用いたものや漢方薬が多くあるので、身近に感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。私たちの毒掃丸も、生薬の便秘薬の一つです。今回は、そんな生薬と漢方の便秘薬について、それぞれが一体どのようなものなのか、違いや共通点をご説明したいと思います。そして、生薬の便秘薬の代表例として毒掃丸をやや詳しくご説明し、あわせて、ドラッグストアで買える漢方便秘薬の代表的な3つの処方についてもご紹介いたします。ぜひ便秘薬選びの参考にしてみてください。    

    ■生薬と漢方薬の違いと関係

        毒掃丸って漢方でしょ?とよく言われますが、まず、毒掃丸は漢方薬ではありません。硬い理屈を言うのは避けたいのですが、違うのに「そうです」と名乗るわけにはいきませんので…。毒掃丸は、漢方薬ではなく、生薬の便秘薬です。生薬と漢方薬、何が違うかお分かりですか?  

    ・生薬とは

      生薬とは、天然の植物・動物の薬効部位を使った薬のことです。植物の場合、葉・花・つぼみ・茎・樹皮・枝・根などの薬効部位を、乾燥させたり粉にしたりして、まるごと薬の原料とします。例えば、今の日本で最も多く使われている生薬は「カンゾウ(甘草)」ですが、これはマメ科の植物の根を用いています。1つの生薬が単体で薬として用いられることもあれば、複数の生薬を組み合わせたり、化学合成薬と組み合わせて使われたりします。漢方薬も、基本的に、生薬を組み合わせて作られます。こうして組み合わせて薬を作る場合には、個別の生薬は「原料」と位置づけられます。   生薬として用いられるような植物・動物の薬効部位は、多くの場合、何種類もの薬効成分を含んでいます。そして、生薬を複数ブレンドすることで、さらに多くの薬効成分を取り入れることができます。複数の生薬を組み合わせた医薬品は、調子の悪い箇所だけではなく、体全体の健康バランスを整えることも期待しているのです。   2021年に公示された最新の日本薬局方(にほんやっきょくほう:国が定めた医薬品の規格基準書)には、約200種類もの生薬が収載されていて注1、これらの生薬の中には、日本で見出されたものもありますが、大半は長い歴史の中で中国から伝わってきたものです。  

    ・漢方薬とは

      一方で、漢方薬とは、中国伝来の医学を源流として日本で発展した漢方医学」に基づいて処方される医薬品のみを指します。漢方薬とは、薬の処方の歴史的ルーツが関わる概念なのです。なお、処方とは薬の配合法のことです。漢方というと中国直輸入の処方のように見えますが、漢方医学は日本で独自の体系化を遂げてきたもので、中国の中医学に基づく中薬(そのように呼びます)とは処方が異なることが多いです。漢方薬は、多くの場合、複数の生薬を組み合わせて作りますので、この場合、生薬は漢方薬を構成する原料です。   漢方薬のルーツとなる中国の医学は、生薬の知識と同様に、古(いにしえ)の中国から、朝鮮半島経由や、直接の交流を通じて、日本に断続的に流入します。例えば、新羅との交流から、あるいは遣隋使や遣唐使を通じて…。これらの知識が、江戸時代以降になって、日本独自の漢方医学と漢方処方を生み出しました。長らく法的な定義も未整備で、市民がちゃんとした漢方処方のお薬を、現代同様に安心して買えるようになったのは、戦後になってからです注2。1950~70年頃から法的整備が進み、2022年現在では、ドラッグストアで買える一般用の医薬品としては294の処方が国により認められ、様々なメーカーにより販売されています。   生薬と漢方薬には、このように微妙な定義の違いがあります。生薬は素材を指し、漢方薬は特定の処方を指します。一方で双方ともに、中国文明の影響を受け、長い日本の歴史の中で成り立っていることと、自然の恵みを生かしていることは、共通しています。   私たちの毒掃丸は、6種類の植物性生薬を原料にして作られた生薬の便秘薬で、漢方医学の考えも取り込んでいますが、日本固有の処方で、漢方薬でもありません。ちなみに、毒掃丸以外でも、龍角散太田胃散救心宇津救命丸といった有名な家庭薬は、生薬をメインにしたお薬であっても、どれも漢方薬ではありません。   関連リンク:「生薬の話① 生薬の魅力と歴史」/「生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために」    

    ■生薬の便秘薬

      漢方薬の法整備が進むまで、自然な成分の便秘薬といえば、生薬を使った日本伝来の処方が中心でした。日本伝来の生薬の便秘薬は、基本的に、お通じを促す生薬と、痛みを緩和したり諸症状を改善する生薬が組み合わされています。当社の毒掃丸も、そうした便秘薬の1つです。  

    ・毒掃丸について

      生薬の便秘薬・毒掃丸(正式には複方毒掃丸)には、選び抜かれた生薬が6種類含まれており、それぞれの作用が一つになって、便秘や便秘に伴う吹出物、肌あれなどの症状を改善します。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。毒掃丸の処方は、代表的な漢方便秘薬の処方である大黄甘草湯(後述)に含まれているダイオウ・カンゾウに、更に4つの生薬が加わったものです。   毒掃丸の発売は、明治20年代にさかのぼります。「体の毒を排出する」ことをコンセプトに開発されたお薬で、江戸時代中期の江州の名医・香川修徳伝来の「香川解毒剤」という処方を参考にして作られたようです。「香川解毒剤」は伝染病等の諸毒に用いられてきた薬ですが、当時は、便秘に効く生薬が毒出しにも使われていたのです(ブログ記事「便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」参照)。その後、毒掃丸の処方は、医学の進歩に合わせて改良され、便秘に関連していない効能は外れます。現在配合されている6つの生薬のうち2つは、初期の毒掃丸には含まれていないものです。小腸の水分を増やすことで排便を促すエイジツと、胃腸の調子を整えるコウボクで、いずれも便秘・便秘にともなう諸症状を緩和することを期待して配合されています。   〇毒掃丸は、こんな人にお勧め 自然な成分の便秘薬が良い方、効き目を調節してちょうどよいお通じを目指したい方、生活改善をしながら薬を飲む量を減らしていきたい方、肌あれや腹部膨満などの便秘に伴う諸症状が気になる方注3   関連リンク:ブログ記事「便秘薬をのむ時に大切なこと」   〇複方毒掃丸 詳細 第2類医薬品 【効能・効果】便秘、便秘に伴う次の症状の緩和:吹出物、肌あれ、食欲不振(食欲減退)、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔、のぼせ、頭重   成分等
    毒掃丸の6つ成分の表
    複方毒掃丸の生薬(成分・分量・働き・薬効部位)
      関連リンク:「薬樹ホオノキの植樹」/複方毒掃丸ブランドサイトおすすめの服用方法複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム   
    複方毒掃丸
    複方毒掃丸
     

    ■漢方の便秘薬

      漢方には、便秘に効く処方が数多くあります。医療用で販売されているものは10種類ほどありますし、漢方専門の薬局でも多くの処方が手に入ります。いずれも魅力的な処方なのですが、普通のドラッグストアで簡単に入手できるのはそのうちの5種類程度です。今回は、その中でも特に入手しやすい代表的な3つの処方をご紹介します。   〇漢方便秘薬は、こんな人におすすめ 自然な成分の便秘薬が良い方、自分の体格や体質に合った薬を探したい方(お店の薬剤師さんに相談してみましょう)、漢方の便秘薬をお探しの方、具体的に試したい漢方処方がある方   〇漢方便秘薬の選び方 漢方薬は、「便秘」といった病態だけでなく、体質に合わせて処方を選びます。漢方薬の箱の【効能・効果】の欄には、どのような体格や体質の人を対象としているのかが書かれている場合があるので、必ず読んでから選ぶようにしましょう。迷ったら、お店の薬剤師さんに相談してみてください。特に体格や体質に関する記述がない場合は、どなたでも使用できる処方です。  

    ・代表的な漢方便秘薬の処方

     

    (1)大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

      第2類医薬品。代表的な漢方便秘薬の処方で、体力に関わらず使用できるため広く販売されている、便秘に対する基本処方注4。   【効能・効果】 便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和   成分:毒掃丸とは、ダイオウとカンゾウ両方が共通しています。
    大黄甘草湯を構成する2つの生薬の表
    大黄甘草湯の構成生薬
     

    (2)麻子仁丸(ましにんがん)

      第2類医薬品。コロコロした乾燥便が多い人や、高齢者に特に適した漢方便秘薬注4。体力が弱い人にもよい。麻子仁丸の名で販売されている場合もあるし、オイル入りであることを強調する販売名がついていることも。   【効能・効果】 体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状なものの次の諸症:便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和   成分:精油成分が多いマシニンを含んでいて、便の滑りをよくする点がポイントです。毒掃丸とは、コウボクとダイオウが共通しています。
    麻子仁丸を構成する6つの生薬の表
    麻子仁丸の構成生薬
     

    (3)防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

      第2類医薬品。いらいらを伴う症状がある人に注4。がっちりタイプの人に合ったお薬です。肥満に対する効果が報告されているため、肥満症の改善をうたって販売されている製品が多いです。   【効能・効果】体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症   成分:とても沢山の生薬を配合しています。毒掃丸とは、センキュウとダイオウとカンゾウが共通しています。
    防風通聖散を構成する18の生薬の表
    防風通聖散の構成生薬
      ◇◇◇◇   なお、今回ご紹介した毒掃丸や漢方便秘薬は、生薬や漢方だからといって副作用がないわけではありません。毒掃丸と、今回ご紹介した3つの漢方処方は、いずれも他の便秘薬(瀉下薬・下剤)との併用はしてはいけないことになっています。また、いずれも授乳中は服用しないか、服用する場合は授乳を避ける必要があります。服用時は使用上の注意をよく読み、不明点はお店の薬剤師さんや、メーカーに問い合わせるようにしてください。   関連リンク:弊社のお問い合わせフォームと、お客様相談窓口   注1:日本薬局方に規定された生薬以外にも、日本薬局方外生薬規格があり、「日本薬局方外生薬規格2018」には83品目が収載されている。 注2:漢方薬の歴史は、株式会社ツムラのwebサイトが分かり易い。戦後の漢方の歴史については、復興 : 5.漢方の歴史 | 漢方について | ツムラ (tsumura.co.jp) を参考にした(2022年2月6日アクセス)。 注3:漢方便秘薬や、生薬以外の便秘薬と比べる観点から。毒掃丸のブランドサイトでは、ほかにも、はじめて便秘薬を試してみようと思っている方、強い便秘薬ではお腹が痛くなってしまう方、排便があるけど、残便感がありスッキリしない方、便秘気味で、便通が滞りやすい方、ガスは出るものの出そうで出ない方、にもおすすめしている。 注4:参考文献:日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年  p.78   (最終更新日:2022年10月9日)   写真説明:生薬の便秘薬や、漢方の便秘薬に多く使われている「ダイオウ(大黄)」です。   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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  • 生薬(しょうやく)という言葉は、ご存じでしょうか?生薬とは、天然の植物・動物の薬効部位を使った薬のこと。たとえば、毒掃丸は冒頭の写真にある6種類の植物性生薬を原料にした便秘薬です。また、漢方薬や多くの家庭薬が、生薬を原料としています。今回は、そんな生薬の魅力と、利用・研究の歴史を簡単にご紹介したいと思います。  

    ■生薬の魅力とは

      生薬の魅力は、特定の薬効成分のみを抽出または化学合成した一般的な医薬品原料と違って、天然の植物・動物の薬効部位をそのまま活用しているところにあります。   例えば、植物の場合、葉・花・つぼみ・茎・樹皮・枝・根など草木によって利用する部分が異なりますが、薬効部位を乾燥させたり粉にしたりして、まるごと薬の原料としています。興味深いことに、生薬になる植物は多くの場合、何種類もの薬効成分を含んでおり、薬効部位をそのまま活用にすることで、すべての薬効成分を体に摂り入れることができます。そして、生薬を使った伝統薬の多くは、複数の生薬を組み合わせています。いくつもの薬効を持つ生薬を更にブレンドすることで、調子の悪い箇所だけではなく、体全体の健康バランスを整えることを期待しているのです。   小皿にのった沢山の生薬   そして、こうした魅力や長所を裏打ちしているのが、生薬の利用と研究の長い歴史です。  

    ■生薬利用と研究の歴史

      現代の日本で使われている生薬は、中国と日本の長い歴史のなかで選び抜かれたものです。   よく薬食同源(または医食同源)と言いますが、薬と食べ物は、その根源はもともと同じです。文明化以前、人類の生活においてはまず食があり、食べることが生きることそのものでした。やがて、一部の食べ物が体に良いことが分かると、天然物を用いた医行為が行われるようになり、生薬の歴史が始まりました。(多くの古代文明で、生薬を活用した医療が現れ、呪術と並行して用いられたことは本ブログでもご紹介したとおりです)それ以来、20世紀に入って化学療法が確立されるまで、薬といえば生薬やその抽出物でした。   先史日本においては、縄文時代の遺跡から、今も生薬として使われるキハダの樹皮が発見されていると言われていますが、生薬を使っていたことを示す考古学的な痕跡はそれだけのようです。本邦で本格的に生薬が使われるようになるのは、中国から医学の知識がもたらされる飛鳥時代以降のことです。   一方、中国では日本より遥かに古くから、生薬の知識は洗練された体系になっていました。中国に於ける最も古い生薬の文献は『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』という書物ですが、これは後漢の時代(西暦25~220年)に書かれ、365種類の生薬が体系的に収載されています。ちなみに、この書名の最初にある「神農」とは、古代中国の伝説上の皇帝で、草木の薬効を調べるために自ら草根木皮を嘗め、最後には植物の毒にあたって死にましたが、神農が選び伝えた生薬により多くの民が救われたとされています。これは、薬の歴史の裏側には犠牲もあったことが分かりやすく示された説話だと思います。その後も幾星霜、中国では独自の医学の発展とともに、生薬の知識が蓄積されていきます。明代に李時珍が著した『本草綱目(ほんぞうこうもく)』は特に有名です。   これら中国の生薬関係の文献は、日本には飛鳥時代に朝鮮半島経由でもたらされ、その内容が徐々に日本社会に受容されていったようです。その後も中国との往来を通じて時折新たな文献ももたらされるなか、平安時代には和名を併記した日本版生薬本も現れます注1。江戸時代に入ると、生薬学は一層盛んになり、中国書の翻訳・解釈にとどまらず、日本に自生する植物・動物などの研究に発展しました。『養生訓』で有名な学者・貝原益軒が1709年に刊行した『大和本草(やまとほんぞう)』(下の写真)は、独自の分類法で日本にある生薬を中心にまとめたことで高く評価されています。   日本で使われている生薬の研究は、このように、文献が残っているものだけで2000年の歴史があります。また現代では、生薬の科学的な成分研究や、生薬を使った製剤の医学薬学研究が行われ、知見は日々深まっています。   国立科学博物館に展示されている大和本草 貝原益軒『大和本草』(国立科学博物館の展示)wikipedia ©Momotarou2012   なお、生薬の魅力と長所をそのまま生かし、長い歴史から得られる知見を実際の薬の効能効果につなげていくためには、処方と製法について工夫が必要です。次回の「生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために」では、これらの点についてお話させて頂きたいと思います。  

    生薬と漢方薬の違い 生薬とは、天然の植物・動物の薬効部位を使った薬のことです。1つの生薬が単体で用いられることもあれば、複数の生薬を組み合わせたり、科学合成薬と組み合わせて使われたりします。組み合わせたり加工する場合には、個別の生薬は、薬の「原料」と位置づけられます。一方、漢方薬は、中国伝来の漢方医学に基づいて処方される医薬品を指しますが、多くの場合、複数の生薬を組み合わせて作ります。つまり、生薬は漢方薬を構成する原料です。生薬は、漢方薬の他にも、市販の家庭薬の原料としても広く活用されています(関連リンク:「生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために」)。

       

    ■毒掃丸と生薬

      生薬の便秘薬・毒掃丸には、選び抜かれた生薬が6種類含まれており、それぞれの作用が一つになって、便秘や便秘に伴う吹出物、肌あれなどの症状を改善します。  

    1.ダイオウ(大黄)

    ダイオウの写真

    大腸の働きを活発にして自然なお通じを促してくれます。

    英名:Rhubarb 学名:RHEI RHIZOMA 産地:中国(青海、甘粛、陜西、四川など)の高地。主に野生品。 国産大黄は、主として北海道で生産。 薬用部位:根茎。 性状:特異なにおいがあり、味はわずかに渋く、苦い 作用:瀉下作用、抗菌作用、抗ウイルス作用等 関連記事:『便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸』  

    2.エイジツ(栄実)

    エイジツの写真

    瀉下作用により、自然なお通じを促してくれます。

    英名:Rose Fruit 学名:ROSAE FRUCTUS 産地:中国、北朝鮮。 薬用部位: ノイバラの偽果又は果実。 性状:わずかににおいがあり、花床は甘くて酸味がある。 堅果は初め粘液ようで、後に渋くて苦く、刺激性がある。 作用:瀉下作用。  

    3.カンゾウ(甘草)

    カンゾウの写真

    おなかの痛みの緩和や痔等の痛みに効果を発揮します。

    英名:Glycyrrhiza 学名:GLYCYRRHIZAE RADIX 産地:中国(内蒙古、甘粛など)、ロシア、アフガニスタン、イラン、パキスタン。 薬用部位:根およびストロン(匍匐ほふく茎)。 性状:弱いにおいがあり、味は甘い。 作用:解毒作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用、鎮咳作用等。 天然の甘味料、グリチルリチン酸の原料。  

    4.コウボク(厚朴)

    コウボクの写真

    食欲不振、腹部膨満や腸内異常醗酵に効果があります。

    英名:Magnolia Bark 学名:MAGNOLIAE CORTEX 産地:長野、岐阜、富山、鹿児島県、北海道などの野生品。 中国(四川、湖北など)。

    薬用部位:ホオノキの樹皮。 性状:弱いにおいがあり、味は苦い。 作用:健胃・整腸作用等。

    関連リンク:「薬樹ホオノキの植樹」  

    5.サンキライ(山帰来)

    サンキライの写真

    便秘に伴う 吹出物、肌あれに効果を発揮します。

    英名:Smilax Rhizome 学名:SMILACIS RHIZOMA 産地:中国の広東省が最も産量多く、他では湖南省など。 薬用部位:塊茎。 性状:わずかににおいがあり、味はほとんどない。 作用:排膿・解毒作用。

    関連記事:『便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸』  

    6.センキュウ(川芎)

    センキュウの写真

    血液の循環を良くして、のぼせ、頭重を和らげてくれます。

    英名:Cnidium Rhizome 学名:CNIDII RHIZOMA 産地:北海道が主。その他岩手、群馬、富山、新潟など。 薬用部位:根茎。 性状:特異なにおいがあり、味はわずかに苦い。 作用:補血、強壮、鎮静、鎮痛作用。 婦人薬に多く配合されています。   以上、生薬の魅力と、利用・研究の歴史を簡単にご紹介しました。「生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために」も併せてご覧ください。 (最終更新日:2022年10月9日)   注1:参考文献 真柳誠「中国本草と日本の受容 」『日本版 中国本草図録』巻9、p218-229,  中央公論社 1993年 (webサイト中国本草と日本の受容 (umin.ac.jp) 2021/10/16 17:34参照)   写真説明:毒掃丸シリーズの便秘薬に使われている生薬の一覧です。   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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  • 毒掃丸のシンボルといえば、ネコ科の猛獣トラ。今も毒掃丸のパッケージの一番目だつところに描かれています。このトラは、明治時代に「毒退治」のシンボルとして毒掃丸に描かれるようになりました。今回は、歴史を振り返りながら、トラに秘められた当社の思いをご紹介します。  

    ■時代背景(1)明治時代に身近になったトラ

      トラは古来、日本にはいない動物です。もちろん、中国や韓国との交流を通じてエリート層にはその存在はかなり古くから知られていましたし、十二支に用いられるなど、市民にもなじみは深いものがありました。しかし、庶民が実物のトラに接することができるようになったのは、割と最近のことです。一般市民が生きたトラを目にすることができるようになったのは、見世物の目玉として実物のトラが出されるようになった江戸末期だといわれています。明治に入ってそんな機会も増えてきて、徐々にトラは身近になってきます。そして、1882年(明治15年)に日本で最初の動物園である東京の上野動物園が開園しますが、開園5年後の1887年(明治20年)になると、いよいよトラが展示されるようになりました。ちなみに、そのトラは、外神田・秋葉ヶ原で興行していた当時大人気だった舶来サーカス団で生まれたトラを動物園側がヒグマと交換で入手したものだそうです注1。当時の上野動物園では、トラが入る前は熊しか猛獣がいなかったので、新たにやってきたトラは、人気を博したといいます注2。   外神田・秋葉ヶ原の舶来サーカス団でトラが生まれた1887年の翌年・1888年(明治21年)に、秋葉ヶ原のすぐ南・神田花房町で、山﨑帝國堂が創業しました。のちに当社がトラを看板商品のシンボルマークに選んだのは、もしかしたら、創業者たちが、当時身近になってきた本物のトラを見て、斬新さを鮮烈に感じたからなのかもしれません。  

    ■時代背景(2)病魔退散のシンボル・トラ

      大阪にある薬の街・道修町で、「神農(しんのう)さん」として親しまれている少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)は、日本医薬総鎮守として、病気平穏・健康成就を祈る神社です。この少彦名神社では、普通の神社だと狛犬がいるようなところに、今もトラの像が鎮座しています。そして、本堂の中にも張子のトラが鎮座しています。ここではトラは病魔退散のシンボルなのです。   少彦名神社でトラが病魔退散のシンボルになったのには、そう古いことではありません。1822年に大阪でコレラが流行したときに、病除けの薬として「虎頭殺鬼雄黄圓」(ことうさっきうおうえん)というトラの頭蓋骨を砕いたものを入れた丸薬を作り、張子のトラとともに配ったところ、流行がおさまったというのです。本物のトラが極めて珍しかったころですから、人々は、よく知らない猛獣に、神秘的な力強さを感じたことでしょう。   江戸・明治の時代には、大阪の道修町は日本の薬業の中心でしたから、薬業界に身を置く当社の創業者たちは、トラが道修町で病魔退散のシンボルになっていることを知っていたと思うのですが、確かなことはわかりません。  

    ■「猛虎一聲掃萬毒(もうこいっせいそうばんどく)」と解毒への強い思い

      そうした時代背景のもと、創業したばかりの当社は、現在の毒掃丸のルーツにあたる「腹内毒掃丸」を発売しました。その名前は体内の毒を掃除してくれる丸薬であるということから名付けられました。効能は、梅毒・そう毒・しつ毒・淋毒・胎毒など、当時体内の毒が原因で引き起こされると思われていた諸疾病です。明治30年代には、「毒掃丸」の名で全国展開していきます。 (当時の経緯については、弊社HP「複方毒掃丸の歴史」もぜひご覧ください)   全国展開するようになった明治時代の毒掃丸には、トラがシンボルとして描かれるようになります。猛獣の強そうなイメージと、病魔退散のイメージを融合させたような、「毒退治」のシンボルです。そしてトラには「猛虎一聲掃萬毒(もうこいっせいそうばんどく)」というキャッチフレーズが添えられます。このフレーズは、力強い虎が一吠えすれば全ての毒が一掃される、といった意味で、つい数年前まで毒掃丸のパッケージに絵柄として描かれていたフレーズです。ここには、当社の、体内の不要物を出すことで人の健康をとりもどしたいという強い思いが込められています。   明治時代の毒掃丸の新聞広告   これは、明治35年1月1日の東京朝日新聞(今の朝日新聞)に出されていた当社の広告です。新聞一面を使ったかなり大きな広告で、明治時代とは思えない大胆なグラフィックだと感じます。リアルに描写された猛虎が、諸毒に襲い掛かる様が描かれています。  

    ■改良された処方と、変わらぬ思い

      このように、毒退治のトラを掲げてひろまっていった明治時代の毒掃丸ですが、実際に毒消しになったのでしょうか?(注意:現在の毒掃丸は、便秘薬であり、解毒の効能効果は認められていません。)   初期の毒掃丸の処方の組み立て方を見ると、確かに、体の不要なものを排出することへの強いこだわりが見て取れます。江州の名医・香川修徳伝来の処方に「香川解毒剤」というものがあり、梅毒等の諸毒に用いられてきましたが、初期の毒掃丸の処方にもちいられている8生薬(下記参照)のうち5生薬が「香川解毒剤」と重なります。また、配合されている8つの生薬全てが、古来、瀉下・排膿解毒・利尿のうちいずれか・もしくは複数の目的で用いられていたといわれているものです。   明治の毒掃丸が効能にうたっていた疾病の中には、科学の進歩とともに病原体が判明し、根本治療の方法が確立されたものがいくつもあります(例えば梅毒や淋病)。毒掃丸は、こうした疾病を完治させることはできなかったと思いますが、他に治療法がないなか、いわば現在のデトックスのような考えで、服用されてきたものと思います注3。   (当社のデトックスに関する考え方は、『便秘と「デトックス」①デトックスを理解する』を、江戸時代のダイオウやサンキライの用いられ方については『便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸』をご覧ください)     〇初期の毒掃丸の処方注4 ダイオウカンゾウセンキュウサンキライ、ドリュウソウ、ニンドウアロエアケビ   その後、毒掃丸の処方は、時代に合わせて改良されてきました。現在配合されている6つの生薬のうち2つは、初期の毒掃丸には含まれていないものです。小腸の水分を増やすことで排便を促すエイジツと、胃腸の調子を整えるコウボクで、いずれも便秘・便秘にともなう諸症状を緩和することを期待して配合されています。一方で、4つの生薬は、発売当初と同じものです。     〇現在の毒掃丸の処方 ダイオウ、カンゾウ、センキュウ、サンキライ、エイジツ、コウボク (クリックすると詳細が書かれた添付文書がポップアップします)   現代の医学薬学のもとでは、もはや毒掃丸が萬毒を一掃するとは言えませんが、カラダの中の不要物を出すことで人の健康をとりもどしたいという強い思いは、毒掃丸が便秘薬になっても変わりません。  

    ■トラの変遷

    最後に、これまでに当社で用いられてきたトラのマークをいくつかご紹介します。美意識が現在と異なるのか、ユーモラスなトラが多いと感じませんか?   どくそうがん 虎キャラクター1どくそうがん 虎キャラクター2どくそうがん 虎キャラクター3どくそうがん 虎キャラクター4   こちらは、北多摩薬剤師会会長の平井 有先生所蔵の、古い旗に描かれてたトラです。ちょっと人懐っこそうに見えますね!   毒掃丸のトラキャラクター5 販促用旗   このように、明治以降色々なトラが描かれてきました。そんな中で、当社の歴史上もっとも人懐っこくて心優しいトラを挙げるとするならば・・・それは、もちろん現在の当社のキャラクター、さぶろうまる君です!   当社の公式キャラクター トラの さぶろうまる     注1:参考文献:上野動物園HP・上野動物園の歴史  注2:参考文献:濱田陽ほか, 日本人の非日常と日常に棲息する虎たち – 日本十二支考〈寅〉生活文化篇 –,  帝京大学文學部紀要. 日本文化学 2010  (41)   注3:古来用いられている生薬には、解毒作用をうたったものが多くあり、毒掃丸のような和漢薬や、多くの漢方処方に用いられています。しかしながら、そうした生薬の解毒作用の作用機序や、人体での実際の効果や、最適な加工工程などについては、十分な研究が進んでいません。それらの研究は、これからの課題です。 注4:竹内眞哉, 家庭薬物語 第20回 複方毒掃丸, ファルマシア, 2015:  51-9,  p882-883 から抜粋 写真説明:毒掃丸の、古い販促用の旗に描かれたトラ 北多摩薬剤師会会長 平井 有 先生所蔵   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)  

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  • 巷にいう「デトックス」は、医師など専門家の間では、医学的・法的に定義されていないあいまいな用語として、やや胡散臭い用語のように扱われています。でも、過去の歴史を紐解いてみると、当の医術や薬の専門家たち自身が(もちろん市民も)長らくデトックスそっくりの思想を抱き続けてきたことがわかります。私たちの毒掃丸をはじめ、今に伝わる伝統的な便秘薬の成分には、そんなデトックスそっくりの医学思想の痕跡が、はっきりと残っています。   前回は、「デトックスを理解する」と題して、現在のデトックスを考察しながら、便秘薬メーカーとして2つの提案をいたしました。今回は、「医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」と題して、特に江戸時代の日本に焦点を当てて、以前はまるでデトックスそのものの医学が実践されていたことをご紹介し、合わせてその思想の痕跡が私たちの毒掃丸の処方に残されていることをお話したいと思います。    

    ■世界に見られる下剤によるデトックスの発想

      古代には、病気は悪魔の仕業であると考えられ、魔術師や祈祷師が病気を治す役割を負っていましたが、吐剤や下剤(以下 瀉下薬(しゃげやく))が発見されるにつれ、体内から病魔を追い出すためにそれらを利用するようになります。メソポタミア、エジプトから始まり、ギリシャ、古代ローマに至るまで、多くの文明で悪いものを出すために便秘というより、病気自体の治療のために瀉下薬を用いていたという記録があります注1。   中国にも医薬の古い歴史がありますが、やはり下剤で体内の悪いものを出すという発想があります。古人は、邪気・悪気が人の五体の外から入って病気(傷寒)を引き起こすので、それを追い出すことが要諦と考え、「汗吐下(かんとげ)」の三法で邪を攻撃できると考えました。「下」は瀉下薬などで便とともに邪を出すことです(ここでいう瀉下薬の主役は複方毒掃丸にも配合されている大黄(ダイオウ)という生薬で、この後何度も登場します)注2。   悪いものを便と共に出してしまう発想は、洋の東西を問わず世界中で生まれ、長いこと違和感なく医薬の現場や生活者に受け入れられてきたようです。    

    ■デトックスを連想させる江戸時代の「万病一毒説」

      目を日本に転じてみましょう。   日本の伝統医学は、中国の伝統医学を起源として独自の発展を遂げてきました。例えば江戸時代の日本では、中国の医薬思想を自分たちなりに咀嚼し、実践的に解釈する医家があらわれるようになります。なかでも吉益東洞(よしますとうどう、1702ー1773)は江戸時代の代表的な医家で、現代にいたる日本の漢方医療に大きな影響を与えた人物です。吉益は、「万病一毒説」といって、すべての病気は体内に生じた毒が原因であり、それを下剤などで出してしまえば病を治療できると説きました。吉益は、その著書『薬徴』でも大黄の活用を推奨しています注3。    

    ■江戸時代の長崎貿易で大量に輸入されていた、2大「解毒」生薬

      奈良時代から江戸時代まで、薬の多くは、生薬(しょうやく)といって、薬用植物をすりつぶしたものでしたが、前述したように日本の医学は中国由来でしたので、日本の風土で育たない主要な薬用植物も多く、そうした生薬の供給は、中国からの輸入に頼っていました。江戸幕府が鎖国政策をとっていたことは有名ですが、鎖国期間中も、長崎には大量の中国産の生薬が陸揚げされていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか。その生薬の輸入を江戸時代を通じてみた時に、輸入量の1位と3位が、「解毒」に使われる生薬でした注4。   輸入量1位だった生薬は、山帰来(サンキライ)という生薬です。これは、当時蔓延していた梅毒を治療するために使われていました。梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌の感染により引き起こされる性感染症で、20世紀に化学治療薬が見つかるまで、まともな治療法がなかったので、感染すると数か月で全身に皮膚症状が現れ、10数年かけて酷い症状に苦しみながら死に至ります。もともと南アメリカからヨーロッパに持ち込まれ、インドや東南アジアを経由して、16世紀はじめに日本に入り、遊郭をつうじて急速に広まりました。江戸では、市民の梅毒の罹患率が50%を超えていたという推計もあります注5。そうした中、山帰来は排膿解毒作用がある生薬なので、治療効果が期待されたのでしょう、我が国での梅毒蔓延に合わせて需要が急増します。1754年には400トン以上が輸入され(おそらく現在の輸入量の100倍近く)、これはその年の中国からの全輸入生薬の47%を占める量だったそうです。また、この量は90万人の梅毒患者が1か月山帰来を連用できる量だとも見積もられています。山帰来の輸入は、江戸時代を通じて常時高い水準で推移します注4。しかしながら、山帰来は症状を緩和することはできても、病気の進行を止めることはできなかったはずです。
    山帰来
    山帰来(サンキライ)
    輸入量の3位だった生薬は、吉益東洞も活用した瀉下薬、大黄です。大黄の輸入量は、多い年には110トン程になりましたが注6、山帰来ほどコンスタントではなく、10年単位の波があり、これは痢疾(コレラやチフス)の流行りと相関しているのではないかといわれています注7。大黄にはタンニン類が含まれていて、古来痢疾にも効果が期待されていますが、細菌性の下痢に対して瀉下薬を使うことは今日ではありえませんし、当時であってもやや使いにくかったことと思います。しかし当時は、体内の悪いものを出す発想で大黄が用いられていたようです注8。実際に、十分な治療効果があったのかどうかは、不明です。
    大黄
    大黄(ダイオウ)
    はっきりとした根拠があるわけではないのですが、当時大量に輸入されていた大黄は、瀉下薬としてではなく、多くが痢疾や毒出しに使われていたのではないか、と私たちは考えています。そう考える理由は、(1)薬の値段は一般的に今よりずっと高く、庶民が舶来の大黄を便秘対策のために日常利用していたか疑問であること、(2)香川解毒剤注9など梅毒の解毒を目的とした当時の処方にも大黄が用いられていること、(3)江戸時代から販売されていた現存する家庭薬「七ふく」「百毒下し」に大黄が含まれ、それらが当時は毒出しの治療薬であったこと、の3つです。    

    ■デトックスの系譜に何を見るか

      今の医療の観点からみても、体に入ってしまった悪いものを出すという発想自体が、原理原則とし間違っているとは言えません。脈々と受け継がれてきた、毒を体から出せば病気が治るという考えそのものは、恐らく有史以来多くの人命を救ってきたことでしょう。しかしながら、江戸時代に大量に輸入され消費されていた「解毒」に役立つ2つの生薬のエピソードが示すように、打ち克てない毒にまで、身近な薬草のチカラで解毒しようとしても、せいぜい対処療法どまりで、根本的な解毒はできなかったと思います。   現代社会での「デトックス」も、健康維持の「心構え」としては悪いものではなく、恐らく、実際に人々の健康の助けになっていることでしょう。ただ、方法論を間違って効果のないものに頼ってしまうと、失うものがあるかもしれません(生薬を中国から買い付けた江戸時代の日本からは、大量の銀が大陸に流出しました)。なお、現代社会におけるデトックスについては、前回の「デトックスを理解する」に簡単な考察と、便秘薬メーカーとしての2つの提案がありますので、ぜひご覧ください。    

    ■毒掃丸のルーツ

      最後に、複方毒掃丸のルーツについても触れさせていただきたいと思います。毒掃丸は明治20年代に当社から発売された薬ですが、今回の記事でとりあげた江戸時代以降のデトックスの流れとは切ってもきれない関係があります(詳しくはHP「複方毒掃丸の歴史」/本ブログ「毒掃丸と「毒退治」のトラ」をご覧ください)。   複方毒掃丸 たとえば、毒掃丸は、6種類の生薬からなる穏やかな効き目の便秘薬なのですが、江戸時代に大量に輸入されていた山帰来と大黄が今でも含まれています。毒掃丸は当初、梅毒他、毒が原因になる諸病の薬として、香川解毒剤等の伝統処方をもとに開発されたようです。その後、処方の改良を経て、便秘と便秘に伴う諸症状に効く薬となり、今に至ります。   山帰来と大黄についてですが、この2つの生薬は、正しく使うことで優れた効果をあらわします。元来、大黄は大腸の働きを良くして便を出す際立った効果があり、山帰来は排膿解毒作用があるので、これらを組み合わせることで、ただ便秘を改善するだけではなく、便秘に伴う吹出物・肌あれを抑える効果が期待できるのです。まず、山帰来に本来期待するべきだったことは、このような活用方法だと思います。大黄については、漢方の世界では今も様々な使われ方をしている、主要な生薬の1つです。しかし、毒掃丸の処方において大黄に期待することは、やはり、効能通り便秘を改善することにより、「快食快便」の毎日を取り戻す手助けをしてもらうことでしょう。     ^^^^^^^^^^^^^   以上、デトックスについて、医薬の歴史にその系譜をたどってみました。人類はデトックスの願いを抱き続けてきたことがわかります。健康への人々の願いは、いつの時代も共通なのですね。   前編目次(クリックで記事に飛びます)  

    便秘と「デトックス」① デトックスを理解する

    1.世の中のほとんどの毒に対して、巷でいうデトックスは無力です 2.腸内環境を整えることや、便秘をしないようにすることで、一部の毒から身を守ることができます ① 腸内環境を整えて、大腸のバリアを維持しましょう ② 悪玉菌を減らして、体内に吸収される有害物質を減らしましょう ③ 水をしっかり飲んで、新陳代謝を維持しましょう ④ 有酸素運動は、便秘を改善し、発汗機能や解毒機能にも好影響   (最終更新日:2022年4月26日)   写真説明: タイトル文字の後ろにある道具は、当社に残る昔の「薬研(やげん)」です。この道具は、生薬原料をすりつぶして粉末状にするために用いました。   注1:この段落の参考文献 石坂哲夫:くすりの歴史 日本評論社 1979 年 p.9~51 注2:「汗吐下」の三法は張子和(1156?-1228)により『儒門事親』で提唱された。この段落の参考文献 山脇悌二郎:近世日本の医薬文化 ミイラ・アヘン・コーヒー 平凡社 1995年 p.229 注3:長沢元夫:薬徴における吉益東洞の論理 薬史學雑誌 Vo1.10, No.1., 2. 1975年 注4:山脇悌二郎 前掲書   p.8~12 注5:鈴木隆雄:骨からみた日本人 古病理学が語る歴史 講談社学術文庫版 2010年 p.234 注6:山脇悌二郎 前掲書 p.233 注7 山脇悌二郎 前掲書 p.229 注8 富士川游:日本疾病史 平凡社 1969年 注9 香川解毒剤(ががわげどくざい)は、香川修庵由来の処方で、梅毒一般、諸皮膚疾患や淋病などに良いとされる。山帰・木通・茯苓・川芎・忍冬・甘草・大黄からなる。矢藪道明:臨床応用漢方處方解説 創元社 1981年 p.645   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸毒掃丸整腸薬のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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