タグ別アーカイブ: 運動

  • 便秘の原因

    2023.03.12
    便秘は誰にとっても憂鬱なもの。便秘とは、本来自然に排出できる便を、十分かつ快適に出せない状態のことをいいます。今この瞬間にも、女性や高齢者を中心に、とても多くの人が便秘に悩んでいます。排便回数が少ないことは精神的に負担で、便秘は私たちの生活の質を大きく下げてしまいます。 私たちは何故、便秘になってしまうのでしょうか。実は、便秘の原因は様々で、人によって原因は異なりますし、同じ人でもその時その時によって原因が違うこともあり得ます。今回の記事では、そうした、便秘を引き起こす様々な原因を、生活習慣と体の機能の両面から、解説していきたいと思います。  

    ■生活習慣と関係した原因

      まずは、イメージがわきやすい日常の生活習慣から、便秘の原因を紐解いていきたいと思います。いずれも比較的簡単に対策が取れる「原因」ばかりです。もしあなたが便秘で、ここに挙げる項目に思いあたるものがあったとしたら、まずは各項目のお勧めの改善策をしっかりと実践してみましょう。  

    (1)食物繊維の不足

      食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解されず、大腸まで届く食品成分のことです。野菜やキノコ、海藻、いも類、穀物など様々な食材に含まれています。食物繊維は、便のカサをふやしてくれて、快便のときの「ドッサリ」感のもととなります。これが不足すると、便秘になることがあります。   大腸の動きや、便の排出機能などに問題がなければ、食物繊維を多く摂ることで便秘が改善します。アメリカでの研究によると、便秘症の人147人に植物性の食物繊維(インドオオバコの種子15〜30g/日:不溶性食物繊維を多く含む)を投与したところ、約4割の65人が治癒または改善しました注1。ダイエットなどで食事を少なくすると便秘になる場合がありますが、そういう時にも食物繊維(多くの食物繊維はカロリー0です)を積極的に食べるようにしましょう。   そもそも、現代の日本人は、食生活の欧米化もあって、食物繊維の摂取量が不足しています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18 g以上、男性21 g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めていますが、実際の摂取量は、だいたい15g程度で、2割前後不足しています。せめて毎日あと1品、食物繊維が豊富な食材を摂るようにしたいものです。食物繊維の便秘以外の健康への効果や、詳しい対策は、下記リンク先にあります。   関連リンク:「便秘によい食べ物」/「野菜と便秘の話お勧めの改善策:野菜や食物繊維を多く摂る  

    (2)水分の不足

      人の体の約60%は水でできていますが、便はそれ以上に水を含んでおり、重量のうち60~70%が水分です。便秘の時の便が普段より硬いのは、大腸に長くとどまりすぎることで便の水分が失われているからです。ですから、体の水分不足は、便を固くします。便秘の時のカチコチの便のできあがりです。   人間が1日に必要とする水分は、普通の生活をしている場合、およそ2.5リットルとされています。そのうち1.3リットル程度は食べ物に含まれている水分で、その他に飲み物として1.2リットルの水を飲む必要があります注2。体内の水分が不足した場合、尿が減るばかりでなく、便が硬くなって出にくくなってしまいます。飲料摂取が500cc以下だと便秘になりやすいことと、便秘の人が脱水傾向にある場合には水分を多くとると便通が改善することが分かっています注3。便秘がちの人は、水分を多めにとるようにしましょう。効果的な飲み方や、水以外の飲み物については、下記リンク先をご覧ください。   関連リンク:「便秘によい飲み物お勧めの改善策:1日1.2ℓは水分を飲む・朝起きたらコップ一杯の水  

    (3)運動不足・筋力不足

      運動不足が直接便秘を引き起こすわけではありませんが、運動量(特に有酸素運動や歩行距離)と便秘には関連があることが分かっています注3。運動によるひねりが大腸にちょうどよい刺激になっていたり、あるいは、運動することにより自立神経のバランスが改善されることで便秘が改善されるようです。日々の運動で、特に推奨したいのが、ウォーキングやジョギング、ヨガなどの有酸素運動です。しっかり歩いて便秘を予防しましょう。   また、腹筋などの筋肉量不足も原因になります。私たちは、トイレで排便時に「いきむ」際には、横隔膜と腹筋を意識的に収縮させ、同時に肛門周辺の筋肉を緩めています。そのため、腹筋力が弱いと、排便がうまくいかなくなってしまいます。   詳しくは、下記リンクも参照してください。 関連リンク:「便秘と運動」/「便秘と便意お勧めの改善策:1日30分以上、週2回以上の有酸素運動・腹筋力の維持    

    (4)ストレス

      ストレスを抱え込むような生活をしていると、排便のリズムは乱れ、便秘を引き起こします。ストレスに直面すると、人体は脅威に対処するために、様々な反応が起きるようにできています。その中の一つが、自律神経の反応です。自律神経とは、血圧や呼吸や発汗、大腸の場合は内容物を運ぶ動きである「蠕動運動」など、生命維持の様々なプロセスを調節するために体中に張り巡らされた神経で、意識の支配は及ばず、自動的(自律的)に機能します。   ストレス源に直面すると、自律神経のバランスが崩れてしまい、結果として、大腸の蠕動運動が抑制されてしまいます。すると、内容物は肛門側にむけて運ばれにくくなり、大腸の中に滞留し、便秘になってしまいます。   また、ストレスによって自律神経のバランスが崩れ、睡眠の質が下がることがあります。実は、睡眠不足も便秘を悪化させます注4。本来ヒトの体は、睡眠中に徐々に腸を動かして内容物を運んでおき、朝食後に起こる「大蠕動」という大きな大腸の動きで一気に肛門近くまで便を押しやることで、朝の排便を行うようなリズムになっています。睡眠不足は、このリズムを狂わせてしまう恐れがあります。   このほか、長期間ストレスにさらされることで、心身症の一つである過敏性腸症候群(IBS)になる場合があります。これは、自律神経の失調などで起こるとされ、発症すると腸が刺激に対して過敏な状態が続きます。そして、ちょっとした緊張やストレスで、便秘や下痢を繰り返すようになります。過敏性腸症候群には、主な症状が便秘のものと下痢のものがあるため、便秘型・下痢型・混合型(便秘と下痢のどちらにもなる)・分類不能型に分類されています。少しのストレスで便秘になってしまう方は、この過敏性腸症候群の便秘型(痙攣性便秘ともいいます)なのかもしれません。   下記リンク先にも詳しく書いてあります。 関連リンク:「便秘とストレスの関係お勧めの対策:腹式呼吸でリラックス・有酸素運動・睡眠時間の確保    

    (5)便意を逃している

      普段から便意を我慢していると、直腸(肛門のすぐ上の部分)にある便意を感じるセンサーが鈍くなり、便秘しやすくなります。学校での排便を忌避しがちな学童や、自分のペースでトイレに行けない仕事をしている人は、便意を逃すことによる便秘になりやすいです。また、例えば朝食後には、大腸が力強く動く「大蠕動」が起こりますが、この時に感じる便意を逃してしまうのはとてももったいないことです。便意を感じたら、なるべくすぐにトイレに行くようにしましょう。   便意を感じるメカニズムを含め、詳しくは下記をご覧ください。 関連リンク:「便秘と便意お勧めの対策:便意を我慢しない・しっかり朝食を食べる  

    (6)腸内環境が悪化している

      人間の大腸の中には沢山の細菌が棲んでいて、その数はおよそ100兆個・1000種類注5、全部あわせると、その重さは1~1.5kgあるといわれています。これらの菌の分類は大変複雑で、専門家以外には理解が難しいでしょう。そこで、腸の中には、体に良い働きをする善玉菌、悪い影響をもたらす悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌の3つのタイプがいると考えるのが分かりやすいです。   一般に、善玉菌は、主に食物繊維や炭水化物を分解して大腸のエネルギーになる短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)を作ることで、大腸の働きを助け、我々の健康全体を維持する働きをします。短鎖脂肪酸は、腸の蠕動運動のエネルギー源なので、善玉菌が少ないと、腸の動きが悪くなって便秘になることが考えられます。   ただ、便秘の人の腸内環境が健常者と比べて実際にどう違っているかは、研究によって結果が様々で注6、実はよくわかっていません。なので、善玉菌の減少が実際に便秘を実際に引き起こしているという分かり易い証拠を示すことは残念ながらできません。それでも、各種のヨーグルト、オリゴ糖や食物繊維などの善玉菌のエサになるような食べ物を多く食べると便通が良くなることは、多くの研究から明らかです。便秘の解消・改善や、予防のために、善玉菌を増やすようにしましょう。   腸内細菌については、次のリンクもご覧ください。 関連リンク:「腸内細菌と、健康・便秘お勧めの対策:ヨーグルトや食物繊維等、善玉菌を増やす食品を食べる    

    ■体の機能と関係した原因

        生活習慣を改善してもなお、便秘しやすい方が多くいらっしゃいます。また、生活が乱れると、すぐに便秘になる方がいらっしゃいます。それは、便秘が生活習慣だけではなく体の機能(はたらきの良しあし)に起因している場合もあるからです。ここでは、大腸や肛門の機能に関連した便秘の原因を、ごく簡単にご紹介します。生活改善をしてもひどい便秘に苦しまれている場合は、原因は体の機能面にあるかもしれません。市販薬を上手に服用したり、お医者様の診断・投薬を受けることも検討しましょう。  

    (1)大腸の動きが悪くなっている

      前述したように、大腸の動きが悪くなれば、内容物の通過に長い時間が必要になり、その間に大腸による水分の吸収が進むことから、便はカチコチになってしまいます。大腸の動きを悪くさせる要因として、まず挙げられるのは、女性ホルモンの影響と、加齢の影響です。  

    ①女性ホルモンの影響

      女性が初潮を迎えると、卵巣から分泌される二つの女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が、便秘にも関係してきます。エストロゲンには、排便をよくする働きがあるのですが、プロゲステロンは、流産しないように子宮を守るため、腸の動きを鈍らせるよう作用します。このためプロゲステロンの分泌の増える排卵日から生理前にかけて、便秘になりやすくなるのです。   女性におすすめの便秘対策は、次のリンク先にあります! 関連リンク:「女性の便秘・男性の便秘 ~年代による、その変化と対策~」/「便秘とマッサージ」/「便秘薬をのむ時に大切なことお勧めの対策:お腹のマッサージをする、市販の便秘薬を上手に使う  

    ②加齢の影響

      高齢者は、大腸の動きが悪くなっており、内容物が通過するのに時間がかかり、そのため便秘になりやすいです。デンマークからの報告によると、高齢者16人(平均81歳)と若者16人(平均24歳)の大腸通過時間を調べたところ、高齢者は平均66時間、若者は平均39時間で、1.7倍の差があったといいます注6。大腸には、水分を吸収する働きがあるので、通過時間が長くなると、便がカチコチに硬くなり、便秘になってしまうのです。齢で腸の動きが悪くなる理由としては、腸管の運動に関係する神経細胞の数やバランスが変化していることが原因と考えられています注7。ヒトの体には、加齢とともに様々な変化が現れますが、それは大腸も例外ではないのです。   高齢者の便秘や、その対策については、次のリンク先をご覧ください。 関連リンク:「高齢者の便秘お勧めの対策:よく歩き、有酸素運動を心がける  

    (2)直腸や肛門周辺の働きが悪くなっている

      大腸を通って運ばれてきた便は、最後に直腸と呼ばれる肛門の真上のあたりに到着します。便がやってきて直腸の内側の壁に圧力がかかる(内圧が上る)と、直腸にあるセンサーから脳に信号が伝わり、便意を感じます。便意を感じると、私たちはトイレを探し、腹筋力などを使って排便を行います。もし大腸の機能が正常でも、直腸や肛門周辺の機能に異常があると、この一連の動作ができず、便秘になってしまいます。   このような、直腸や肛門周辺の働きが悪くなって引き起こされる便秘は、便秘薬の効果があまりみられないため、治療も大変です。ちゃんとお医者様に診てもらうようにしましょう。   高齢になると、特に直腸の機能に問題が生じやすくなります。まず、加齢により、直腸の内圧の上昇を脳に伝える神経の感度が下がりやすくなります。そのため、便が肛門近くまで運ばれてきても、すぐにトイレに行きたいという気持ちにならなくなってしまいます。海外からの報告では、便意を感じ始める内圧、便意が切迫してくる内圧、痛みを感じ始める内圧のいずれも、高齢者は若者よりも高かく、つまり便意を感じにくかったということです注7。   関連リンク:「高齢者の便秘お勧めの対策:便意を我慢しない・腹筋力を落とさないようにする    

    ■そのほかの原因

        生活習慣や、大腸・肛門の機能以外にも、便秘になる原因はいくつかあります。それは、腸の形などに問題がある場合、薬の副作用、他の病気による便秘、の3つです。これらについては、更に専門性が高いこともあり、別の機会に個別に触れていきたいと思います。  

    ◇ ◇ ◇

      以上、便秘の原因についてかなり網羅的に見てきました。便秘は様々な要因が重なって起こるため、どれか1つだけが原因とは限りません。一方で、複数の原因のうち1つを改善するだけで、便通がよくなる場合もあります。    

    ■まとめに変えて…どんな人が便秘になっているか。

        最後に、実際にどんな人たちが便秘になっているかを概観し、便秘の原因についてのお話を終わることにしましょう。     このグラフは、国の基幹統計の1つである「国民生活基礎調査」から作成したもので、便秘の症状がある人の人数(有訴者)を、性・年齢別に示したものです。このグラフを使って人の一生を俯瞰してみると、便秘の有訴者数が、2度大きく変化していることが分かります。最初は思春期で、便秘に悩む女性が一挙に増加します。2回目の変化は、高齢期です。男女ともに、便秘の人が激増しています。これまで見てきたように、女性や高齢者は、大腸や直腸の機能が低下しやすいです。上のグラフは、こうした機能面の変化が、人々の便秘の主要因になっていることを示唆している…そんなふうにも見えます。   そうだとすると、前半で見てきた、生活習慣に関連した諸々の原因は、あまり便秘改善の役には立たない要素なのでしょうか?いいえ、そんなはずはありません。記事の中で推奨した生活習慣の改善策の殆どは、統計的に便秘改善の効果があることが報告されています。   このデータは、生活習慣の改善「だけ」では便秘が改善しない場合があることや、生活習慣の改善で便秘が解消しても、再び生活が乱れるとすぐに便秘に戻ってしまう方が多いことを示していると思います。生活習慣の改善は当然するべきですが、それ「だけ」では便秘が改善しない場合、市販の整腸薬や便秘薬、場合によっては医師の力を借りてみることも必要なのです。   整腸薬や、便秘薬の選び方・飲み方については、次のリンクも参照してみてください。 関連リンク:「便秘解消を目指して ~便秘のセルフケア~」/「便秘薬をのむ時に大切なこと」  

    ◇ ◇ ◇

      関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイトおすすめの服用方法複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム  複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます複方毒掃丸

    複方毒掃丸

    便秘薬を飲むほどでもないという場合は、整腸薬もおすすめです。毒掃丸整腸薬は、乳酸菌と消化酵素と4種類の生薬を配合した、シナモンのような爽やかな香りがする、のみやすい整腸薬です。ぜひ一度お試しください。関連リンク:毒掃丸整腸薬の製品案内毒掃丸整腸薬の無料サンプルお申し込みフォーム
    毒掃丸整腸薬
    毒掃丸整腸薬
      便秘の病理的な分類に基づいた解説については、こちらもご覧ください。関連リンク:「便秘の種類と原因」   (最終更新日:2023年4月16日)   注1:Voderholzer WA et al.,  Clinical response to dietary fiber treatment of chronic constipationAm J Gastroenterol. 1997 Jan ; 92(1) : p95-8. 注2:必要な水分量については、次のサイトを参考にしました。厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動  2023年3月11日アクセス。  注3:吉良いずみ 便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー, 日本看護技術学会誌 2013;12(2):p33-42. 注3:   日本消化器病学会関連研究会,慢性便秘の診断・治療研究会:慢性便秘症診療ガイドライン 2017.南江堂,2017 p.60 注4:例えば、Yamamoto S, et al. Internet Survey of Japanese Patients With Chronic Constipation: Focus on Correlations Between Sleep Quality, Symptom Severity, and Quality of Life. J Neurogastroenterol Motil. 2021 Oct 30 ; 27(4) : p.602-611. 注5:Ruth E Ley, et al. Ecological and Evolutionary Forces Shaping Microbial Diversity in the Human IntestineCell. 2006 Feb 24;124(4):837-48.    注6:尾﨑 隼人ほか,  Ⅲ.慢性便秘症の治療 各論(便秘症と腸内フローラ),  日本大腸肛門病会誌 2019;72:p609-614. 注6:Jan L. Madsen, Jesper Graff, Effects of ageing on gastrointestinal motor functionAge and Ageing, 2004 March ; Volume 33, Issue 2 : p.154–159 注7:日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会 編, 慢性便秘症診療ガイドライン2017, 南江堂, 2017, p.31.  注7:Lagier E, et al. Influence of age on rectal tone and sensitivity to distension in healthy subjects. Neurogastroenterol Motil. 1999 Apr ; 11(2) : p101-7.    ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸毒掃丸整腸薬のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)  

    続きを見る

  • 便秘と高血圧症が、よくない組み合わせであるということは、ご存知ですか? 両方の疾患をもつことで、長期的には寿命を縮めたり、健康でいられる期間を短くしてしまったりする可能性があります。今回は、この便秘と高血圧症の関係について解説し、対策についてもご説明したいと思います。高血圧によるダメージがすでに蓄積されているご高齢の方にはもちろんですが、若い人も、ご自身の健康寿命を延ばすために、ぜひ知っておいてほしいと思います。  

    ■便秘と高血圧症は、よくない組み合わせ

     

    (1)便秘と高血圧の人は、それぞれかなり多い

      便秘とは、本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態をいいます。一方、高血圧とは血圧が高い状態のことで、これがずっと続く病気を高血圧症といいます。   便秘に悩む人の割合は、調べ方によって幅が大きいのですが、日本では、成人のおよそ2~3割が自分を便秘であると考えているという調査があります注1。高血圧の有病者は、2017年時点で成人人口の約4割である4300万人もいると推測されています注2。このスケール感から考えると、両方に悩んでいる人は相当いらっしゃるはずです。どちらも年をとるほどなる人が増えますから、ご高齢者になると、大半の方が両方抱えていらっしゃるのではないでしょうか。  

    (2)この組み合わせがなぜ良くないのか

      その便秘と高血圧症は、なぜ危険な組み合わせなのでしょうか?   便秘の人は、排便時に、強いいきみを何度もします。いきむ時には、息を止めながら腹圧を高めることにより、血圧は激しく乱高下して、その後しばらく高まるのです(この時の一連の体の変化をバルサルバ効果といいます)。この時、血管に強い負荷がかかり、長年の高血圧で血管がもろくなっている人は、脳卒中や心筋梗塞といった心血管疾患が発生してしまう危険があるのです。   いきみの時には、血圧は30~40(mmHg)程度は上がると言われています。もし血圧計をお持ちだったら、ぜひご自分でも計ってみてください。   心血管疾患のうち、どれだけが便秘を引き金にして起こっているのかはまだ不明ですが、便秘の人が心血管疾患で死亡する可能性が高いという報告注3などがあることから、便秘は心血管イベントを誘発していると考えられています注4。そのため、高血圧症の治療においても、便秘を予防するよう指導されたり、便秘薬が処方されたりすることがあります注5。  

    ■心血管疾患の危険さ

      心血管疾患は、死亡したり、要介護状態になるのを早めたりするなど、重大な結果を招く可能性があります。   高血圧状態が長く続くと、血管は次第に厚く、しかも硬くなり(動脈硬化)、弾力性が失われてもろくなります。そのうえで、何かのきっかけで血管が破れたり、血栓が詰まったりすると、脳出血や脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患が起こります。これらの疾患は死に直結することも多く、国内の18万人を対象にした研究では、高血圧による心血管疾患で、年間約10万人が死亡しているとされています注6。   また、心血管疾患は、命は落とさなくても、健康寿命の終わりをもたらす可能性があります。心血管疾患が原因で、これまで通りの日常生活が送れなくなり、介護が必要になる人が多くいます(高齢者でなくても、40代以降は脳血管疾患(脳卒中)で国の介護保険制度の介護認定が受けられます)。2019年の国民生活基礎調査によると、介護が必要になった原因の第二位(16.1%。一位は認知症で17.6%)が脳血管疾患でした。  

    ■便秘対策と、高血圧対策

      では、そんな重大な事態を予防するためにはどうすればよいのでしょうか。便秘と高血圧、それぞれの対処法と、日常生活の中での対策を簡単に見てみましょう。  

    (1)便秘対策

      便秘は、高血圧症のように危険な生活習慣病とは位置づけられていないこともあって、お医者にかからずに、下に挙げるような生活上の対策をとったり、市販薬の服用(便秘薬・整腸薬)で対処することがほとんどです。便秘対策になる生活改善は以下のとおりです。   ★食べ物による便秘改善 食物繊維は、便のカサを増やしたり、腸内環境を整えたりしてくれます。また、ヨーグルト、発酵食品、レジスタントスターチ、オリゴ糖、質のよいオイルなど、腸内環境を整えてくれる食べ物が多くありますので、積極的に摂るようにしましょう。   詳しくは:「便秘によい食べ物」/「便秘によい飲み物」   ★運動による便秘改善 運動の中でも、有酸素運動は、腸への刺激・運動後のリラックス効果・お腹周りの筋肉の維持増強などを通じて便秘を改善します。特に、ウォーキング、ランニング、ジョギング、ヨガなどの体のひねりがある有酸素運動がおすすめです。ご高齢の方は歩くだけでもよいので体を動かしてみましょう。   詳しくは:「便秘と運動」  関連リンク:「高齢者の便秘」   ★その他の生活改善 ・朝起きてコップ一杯の水をのむ・便意を逃さない・十分な量の水をのむ・ストレスを減らしてリラックス・お腹のマッサージなど、様々な便秘対策があります。   詳しくは:本ブログのカテゴリー「便秘解消」  

    (2)高血圧対策

      高血圧は、自覚症状がほとんどないので、まずは毎年の健康診断をちゃんと受け、判定が悪かったら素直に受診することが大切です。結果的に毎日お薬を服薬することになっても、寿命を延ばすことになると考えて、医師の指導を素直に受け入れたいものです。筆者も、近年は毎日降圧剤を服薬しています。   そのうえで、次のような生活習慣を改善しましょう。こうした生活習慣の改善は、服薬している人にも、していない人にも有効で、まだ正常血圧の人には高血圧の予防にもなります。複数の生活改善を組み合わせるとより効果的です。   ★生活改善: 減塩・肥満の予防や改善・節酒・運動をする・野菜や果物を食べる・禁煙・防寒・ストレスを減らす など注7   この中で、運動をすることと、野菜や果物を食べることとによる高血圧対策については、次項で少し詳しく取り上げたいと思います。高血圧全般や、減塩、その他の対策についてもっと詳しく知りたい方は、下記のページも合わせてご覧ください。   厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」  

    (3)便秘対策にも、高血圧対策にもなるもの

      ご覧になられた通り、便秘に良い生活改善の中には、高血圧に効果的なものが2つあります。「運動をする」ことと、「野菜や果物を食べる」ことです。便秘と高血圧の両方に悩んでいる方は、これらに取り組むのはいかがでしょうか。   ★運動   高血圧には、早歩き、ジョギング、ランニングなどの有酸素持久性の運動を、ややつらい程度にするのが良いとされています。毎日30分または週180分(3時間)行うと良いそうです注7。便秘には、それより少ない運動量でも改善効果が現れますが、頑張って運動時間を確保してみましょう。   関連リンク:「便秘と運動」   *重度の高血圧で運動制限がある場合などは、医師の指導に従ってください。   ★野菜や果物の摂取   野菜や果物が便秘に良いのは、これらの食材が食物繊維を豊富に含むからです。食物繊維は、便のカサを増やしたり、腸内の善玉菌のエサになることで、腸内環境を改善したり、大腸の動きを良くしたりしてくれます。   一方、高血圧に野菜と果物を摂ることが推奨されている理由は、野菜や果物に多く含まれるカリウムが血圧を下げてくれるからです。カリウムは、血圧を上昇させる働きをもつナトリウムを排出してくれます。   野菜では、ブロッコリーほうれんそうは、カリウムも食物繊維も豊富です。果物では、アボガドバナナが、カリウム・食物繊維ともに豊富に含んでいます。こうした食材を積極的に摂るようにしましょう。   関連リンク:「野菜と便秘の話」/「便秘によい食材:バナナ」   *腎臓病でカリウム制限がある場合などは、医師の指導に従ってください。  

    ■安全な排便のための工夫

      最後に、便秘や高血圧と共存していく際の安全な排便のための工夫について解説します。   ここまで挙げてきた対策や通院・服薬をもってしても、便秘の解消や、適正血圧の維持につながらない場合もあります。その場合には、次のような方法で、いきむことを減らし、危険を避けることをお勧めします。  

    (1)いきまない工夫

      便意が来たらそれを逃がさないようにし、またトイレでは、極力いきまないようにしましょう。規則正しい生活を送り、毎朝コップ一杯の水を飲み、しっかり朝食をとるようにすると、朝のうちに便意を催す可能性が高まります。この便意を逃さずに、排便をすますことが大切です。トイレでは、前かがみの姿勢をとっていることが大切です。理想的な姿勢は、ロダンの「考える人」(写真)のような恰好です。この姿勢だと、直腸から肛門にかけての角度が一直線に近くなり、スムーズな排便が行われます。排便姿勢を改善させることで、便の量が有意に増加したという報告もありますので注8、次に便意がやってきたら、いきむ時に意識的に「考える人」を真似てみてください。     関連リンク:「便意と便秘」  

    (2)便秘薬も活用

      便秘薬の使用が、心血管疾患での死亡を減らしたというエビデンスはまだありませんが、便秘薬には便を柔らかくする効果があるので、服用によっていきむ回数を減らしたり、いきむ力を弱くすませたりすることが可能です。便秘薬でちょうどよいお通じが得られれば、いきみを減らすことにつながります。ちょうどよい便というのは、下の図の「正常な便の範囲」に入るような形状のもので、特に中央の理想的なバナナ状の便を目指すようにしてみましょう。   関連リンク:「うんちと便秘」   市販の便秘薬を活用する場合、調節しやすいお薬を選ぶことが大切です。効き目が弱すぎてカチカチのままであったり、効きすぎて下痢になったりしては体に負担がかかってしまいます。   関連リンク:「便秘薬をのむ時に大切なこと

    ブリストルスケールの画像ブリストルスケール

     

    ◇  ◇  ◇  ◇

      複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指すのに最適です。生活習慣の改善をしてもお通じがでないときには、ぜひ活用してみてください。   関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイトおすすめの服用方法複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム 
    複方毒掃丸
    複方毒掃丸
      便秘薬を飲むほどでもないという場合は、整腸薬で腸内環境を整えてあげるのもおすすめです。毒掃丸整腸薬は、乳酸菌と消化酵素と4種類の生薬を配合した、シナモンのような爽やかな香りがする、のみやすい整腸薬です。ぜひ一度お試しください。   関連リンク:毒掃丸整腸薬の製品案内毒掃丸整腸薬の無料サンプルお申し込みフォーム
    毒掃丸整腸薬
    毒掃丸整腸薬
      注1:Tamura A, Tomita T, Oshima T, Toyoshima F, Yamasaki T, Okugawa T, et al. ,Prevalence and Self-recognition of Chronic Constipation: Results of an Internet Survey (nih.gov), J Neurogastroenterol Motil. 2016 ;  22 (4) : p.677-84.  注2:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編「高血圧治療ガイドライン2019」、日本高血圧学会 2019; p.4. 注3:Honkura K, et al., Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study.  Atherosclerosis. 2016 Mar ; 246 : p.251-6. 注4:Ishiyama, Y, et al., Constipation-induced pressor effects as triggers for cardiovascular events. J Clin Hypertens.  2019 ;  21 : p.421– 425.  注5:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編 前掲書p.70. 注6 : Ikeda, N, et al., Adult Mortality Attributable to Preventable Risk Factors for Non-Communicable Diseases and Injuries in Japan: A Comparative Risk Assessment, PLoS Med., 2012 ;  9. 注7:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編 前掲書p.64-73. 注8, 槌野 正裕 ほか,  排便姿勢と直腸肛門角,排出量の関係  排便造影検査(Defecography)による研究,  理学療法学 2011 ;  Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会抄録集)   さいごに   最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです!   毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

    続きを見る

  • ぽっこりお腹とは、文字通り、ぽっこりと張り出しているお腹周りや下腹部のことを指します。恰幅のよい太鼓腹から、便秘やガスで張ったお腹、痩せているのに下腹部だけが目立つ状態まで、多様なぽっこりお腹に多くの方が悩んでいらっしゃるようです。今回は、この悩ましいぽっこりお腹について、なぜなってしまうのか、5つの原因を挙げ、その原因ごとの対策を考えてみたいと思います。その中で、便秘によるお腹の張りへの対策についてもお話ししていきます。実は、ぽっこりお腹をへこませる対策の多くは、便秘改善にも効果があり、同時に、便秘対策をすることが、ぽっこりお腹の予防にもなるのです。また、便秘以外の病気によるぽっこりお腹や、肥満に効く漢方処方ついても触れていきたいと思います。  

    ■ぽっこりお腹の原因

      ぽっこりお腹の原因は、5つあると考えられます。そして、原因がどれなのかによって、対策もある程度変わってきます。あなたのお腹がぽっこりして見える原因は、次のうちどれでしょうか?  

    (1)脂肪(皮下脂肪、内臓脂肪)

      体を形作る組織のうち、エネルギーを蓄える役割を担っている脂肪。本来、生存に必要不可欠な脂肪ですが、お腹の周りにつきすぎると、ウエストサイズを大きくすることで、ぽっこりお腹の原因になります。   お腹の脂肪は、皮膚につく皮下脂肪と、内臓につく内臓脂肪に分けられます。皮下脂肪は、太ももやお尻まわり、下腹部などについている、触わると柔らかい、指でつまめる部分です。お腹の周囲だけでなくお尻や太ももなど低い位置にもつくため、皮下脂肪が増えた場合には、お腹だけがぽっこりするというよりも、いわゆる「洋ナシ形」の体形になります。皮下脂肪は、女性によりつきやすいタイプの脂肪です。   一方、内臓脂肪は、腹腔内の内臓のまわりにつく脂肪です。直接つまんだりすることはできず、お腹が膨れるように太ります。内臓脂肪は腹腔内にしかつかないので、体の中心部のボリュームが丸く膨らんだ、いわゆる「リンゴ型」の体形になります。たまった内臓脂肪は、ぽっこりお腹や太鼓腹の大きな原因の1つです。内臓脂肪は、男性によりつきやすい脂肪です。ただし、更年期以降の女性は、女性ホルモンが減少することで、男性同様内臓脂肪がたまりやすくなってきます。内臓脂肪は、皮下脂肪よりも健康への悪影響が大きいので、注意が必要です。一方で、内臓脂肪は運動などで真っ先に落ちる脂肪でもあります。   自分のお腹がどれだけぽっこりしているかの目安になる一般的な計測方法はありませんが、脂肪がつきすぎていないかどうかの目安となる数値は2つあります。皆さまよくご存知の、「腹囲」と「BMI(ビーエムアイ)」です。  

    ・腹囲の測り方と目安

      両足をそろえて立ち、体の力を抜いて、息を吐いた状態でおへその位置にメジャーをあて、地面と平行に体に巻いて測ります。食事の直後を避けて計測しましょう。男性 85cm以上、女性  90cm以上だった場合は、内臓脂肪が蓄積している恐れがあります注1。(女性の方が数値が大きいですが、これは、ウエストより低い位置を測ることと、女性の皮下脂肪が多いことを織り込んだ結果です。) 体格にもよりますが、目安を超えている方は、お腹がぽっこりしていませんか?  

    ・BMIの計算式と目安

      BMIとは、Body Mass Indexの略で、体格指数とも呼ばれます。肥満度を表す指標として国際的に用いられており、日本肥満学会の基準では、18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされています。例えば、身長が165㎝の場合、体重68kg強だとBMI25になります。   BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))   BMI値は22が理想とされていますが、23から25くらいの方が長生きだという日本人を対象にした研究報告がありますので注2、あまりストイックに考えなくてもよいのかもしれません。25を超えると、生活習慣病のリスクが高くなりますし、お腹のお肉も気になる頃だと思いますので、対策を考えたほうがよいかもしれません…。
     

    (2)姿勢

      あまりおなかに脂肪がついていないのにぽっこりお腹が目立つ人や、立派なお腹が張りだしている人は、姿勢が悪いのかもしれません。生活習慣や筋力の偏りなどにより、正しくない姿勢がクセになっている場合があります。そんな悪い姿勢の代表格が、「猫背(ねこぜ)」と「反り腰(そりごし)」で、いずれもお腹がぽっこりと出て見えます。   猫背とは、背中が丸まり、骨盤が後ろに倒れた(後傾)状態に代表される姿勢です。骨盤が後ろに倒れると、下腹部がぽっこりと目立つようになります(イラストの中央)。反り腰とは、骨盤が前傾し、背骨のカーブがきつくなった姿勢です。この場合は、上半身が前に反り気味となり、お腹全体が張り出すように強調され、ぽっこりお腹が目立つようになります(イラストの右)。
    正しい姿勢、猫背、反り腰のイラスト
    猫背と反り腰は、ぽっこりお腹の原因になります
    壁にかかとを付けて立った時に、お尻より先に背中がついたり、壁と背中の間に手が入らない人は、猫背の恐れ大。また、同じようにした時に、壁と腰の間に余裕で手が入ったり、お腹が前に張り出しているような人は、反り腰の恐れ大と言えます。あなたは、姿勢が原因でぽっこりお腹になっていませんでしょうか?  

    (3)筋力不足などによる内臓下垂

      腹筋や、横っ腹の筋力が衰えることにより、腹腔内の内臓の位置が下がってしまい、下腹部が膨らんでしまうことがあります。人間は、二本足で立って歩くようになってから、それまで前後に並んでいた臓器が縦に積み重なることになり、しっかりとホールドしないと内臓が垂れ下がりやすくなってしまいました。腹腔内の内臓の重さを受け止め支えているのは、腹膜などの内臓まわりの組織と、胴回りの腹筋などの筋肉と、骨格と、骨盤下部の筋肉(骨盤底筋)です。このうち、腹筋などの筋肉が弱ると、内臓が重力に負けて下垂してしまい、お腹がぽっこりと出て見えてしまいます。特に、姿勢が悪く内臓脂肪も多い方がこうなると、それほど太っていなくても相当お腹がぽっこりとして見えます。   ちなみに、下腹がぽっこりとしている方の中には、大腸の固定がもともと悪く、大腸が本来の位置よりも下がりがちな方がいらっしゃいます。こうした方は子供のころから便秘がちな傾向があり、この状態は、総腸間膜症、あるいは落下腸などとよばれます。  

    (4)便秘

      便秘によるお腹のハリも、ぽっこりの原因になります。便秘とは、本来体外に排出すべき便を十分量かつ快適に排出できない状態のこと注3。大抵の場合、便を出す回数が減ることで、お腹の中に便が滞留してしまいます。便は1日80~200gほど作られますが、そのうち水分が60~70%を占めています注4。大腸は常に内容物から水を吸収し続けるものなので、便秘でたまっていく便の水分は、古いものほど少なくなり、便も硬く小さくなっていきます。そのおかげで、毎日お腹の中で80~200gずつ便が増えていくという恐ろしいことにはなりませんが、代わりにカチコチの便が大腸に溜まっていくことになります(宿便)。これが、便秘の時のお腹のハリや痛みの原因になります。また、腸での内容物の発酵がより進むことで、ガスが沢山発生して、おならが増えたり膨満感が増すこともあります。   当社の独自調査で、便秘薬ユーザー550人に、便秘解消でもたらされるメリットは何かを聞いたことがあります。その際、便秘を治す最大のメリット(21の選択肢から1択)は、1位「便通に関するストレスがなくなること」16.7%、2位「スッキリすること」16.4%、3位「ぽっこりお腹が軽減、解消すること」15.1%でした注5。いかに便秘によるぽっこりお腹が悩ましいのか…便秘薬メーカーとして身につまされる結果でした。  

    女性の生理前のお腹の張り 生理前に、ぽっこりお腹が気になる方が一定数いらっしゃいます。月経前に分泌されるプロゲストロン(黄体ホルモン)は、腸の蠕動運動を抑制するため、生理前は特に便秘になりやすい時期です。便秘になるとお腹が張って感じられ注6、人によってはぽっこりと出て見えることもあるようです。

      関連リンク:ブログ記事「宿便の話」/「便秘と腹痛」/「うんちと便秘」/「便秘による不調とは ~便秘に伴う諸症状の話~」  

    (5)便秘以外の病気

      便秘以外にも、お腹が徐々に膨らんでくる病気があります。婦人系の疾患である、子宮筋腫卵巣腫瘍でもお腹が目に見えて出てくることがあります。子宮筋腫は、子宮にできる良性の腫瘍で、30~40代を中心に高頻度で発症します。卵巣腫瘍は、卵巣にできる腫瘍で、悪性のものもあります。50~60代を中心に発症します。それぞれの症状や診断方法、治療などについては、日本産科婦人科学会の一般向けページ(子宮筋腫卵巣腫瘍)でご確認下さい。不安な方は、医師にご相談ください。どちらも、大きくなると便秘も引き起こします。  

    注意!すぐに受診が必要なケース 急にお腹が膨らんできたとしたら、急性の重大な疾患が原因かもしれません。腸がふさがっていたり(腸閉塞)、腸に穴が開いてしまっていたり(腸穿孔)していると、人工肛門になったり、命を落としてしまうこともあります。突発的で急な激しい腹痛がある場合や、吐き気・嘔吐を伴う場合は、早急に受診するようにしてください。

      *ほかに、肝硬変、がん、その他の腫瘍などで腹水がたまってお腹がふくらむこともありますが、ここでは取り上げません。    

    ■原因別・ぽっこりお腹対策

      5つの原因について見てきましたが、ここからは、そのうち脂肪、姿勢、内臓下垂、便秘の4つについて、対策をご紹介します。対策のうちかなりのものが便秘改善に良いので、いくつかを組み合わせれば、「ぽっこりお腹+便秘」の両方を改善するメニューが作れます。  

    (1)脂肪を減らしましょう

      世間には脂肪を減らすことをうたう高価な飲料や食品、サービスや施術があふれていますが、最も確実で安上がりなのは、摂取するエネルギーよりも使用するエネルギーの方が多い生活を、ゆっくりと築き上げることです。  

    ・運動不足の解消

      ぽっこりお腹に悩む方は、姿勢や内臓下垂など、脂肪以外の原因も合わせて抱えていらっしゃる場合が多いと思いますが、運動習慣なら、これら全ての改善に応用できます。当社では、健康増進のために、1回30分以上の有酸素運動を週2回以上行うことを推奨しています。この程度の運動だけでは、脂肪が減少しはじめるまで少し時間がかかるかもしれませんが、やがて内臓脂肪が減り始め、ぽっこりお腹が改善していきます。また、ウオーキングやジョギングといった有酸素運動は、便秘改善に有効であるというエビデンスがいくつもあります注7。そして、これらの運動を習慣化して長期間続けることは、姿勢を維持する筋肉を発達させ、内臓を支える胴回りの筋肉も鍛えることになるので、ぽっこりお腹はかなりはっきりと改善します。   もちろん、食べ物を減らすことで脂肪を落としていくことも可能です。この場合、ダイエットに伴う便秘には気を付けてください。食事量を減らすと便秘になる/便秘がひどくなる場合があります。朝食を抜かず、食物繊維や水分はしっかりとるようにしましょう。詳しくは、ブログ記事「ダイエットと便秘」をご覧ください。  

    番外編:漢方医学にみる、体質別の肥満対策の処方

      漢方医学では、同じ太り気味でも、体質によって処方する薬が変わります。市販されている処方で肥満に用いられるものを2つご紹介します。興味がおありでしたら、これらの薬をのんでみるのが一番良いのですが、考え方を取り入れて、自分に合ったぽっこりお腹対策を考えてみるのも楽しいのではないでしょうか。   (1)防己黄耆湯(ぼういおうぎとう):汗をかきやすく、水太りで、むくみのある人の肥満を改善する処方です。黄耆(オウギ)・白朮(ビャクジュツ)・防己(ボウイ)といった生薬の効果で体に溜まった余計な水分を出し、生姜(ショウキョウ)の効果で体を温めてくれます注8。   水太りタイプの方は、外を歩くなどの活動で新陳代謝を上げることや、体を冷やさないようにするなどの工夫を、対策に加えてみてはいかがでしょうか。冷えはむくみや脂肪蓄積の原因になりますから要注意です。   (2)防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):肥満などが原因で体に熱がこもっているような人で、便秘により体から熱の排出ができない状態の人の肥満を改善する処方です。防風(ボウフウ)や黄芩(オウゴン)など18種類もの生薬の組み合わせで作られていて注9、服用することで体重が減ることや注10脂肪燃焼を促すことが報告されています。   肥満気味で体に熱がこもりやすい方は、便秘をしないようにする・運動量を増やして自分のちからで脂肪の燃焼を進めるなどの工夫を試してみてはいかがでしょうか。   関連リンク:ブログ記事「生薬の便秘薬と、漢方の便秘薬」  

    (2)姿勢をよくしましょう

      「反り腰」や「猫背」を矯正するためには、自分の悪い姿勢に気づいて意識すること、縮んだ筋肉をストレッチで伸ばすことと、正しい姿勢を維持する筋肉を鍛えることが大切です。   猫背の方は、胸を開くストレッチや、背中の筋肉の強化をします。また、骨盤が後傾して下腹が出ているなら、後ろ腿(ハムストリング)のストレッチも行います。そのうえで、体幹を強化し、悪い姿勢にならないことを意識します。反り腰の方は、前ももから腰にかけての筋肉(腸腰筋)を伸ばすストレッチや、背中を丸めるストレッチを行い、腹筋群や体幹を強化し、悪い姿勢にならないことを意識します。   体幹の強化については、姿勢に気をつけながら有酸素運動を続けることができるなら、きつい腹筋運動などをしなくても徐々に強化されるでしょう。また、次の(3)でご紹介するエクササイズも有効です。悩みがぽっこりお腹だけではなく、姿勢が原因で体に負担がかかっている(痛みなどがある)方は、接骨院・整体・整形外科に相談してみてはいかがでしょうか。エクササイズをもっと詳しく知りたいという方は、ジムに通われている方場合は、トレーナーに詳しく聞いてみるのもよいと思います。  

    (3)内臓をささえる筋肉をつけましょう

      内臓を支える筋肉を簡単なエクササイズ(筋トレ)で鍛えて、ぽっこりした下腹部を引き締めましょう。腹筋群だけでなく、できれば骨盤底筋も合わせて鍛えるようにしましょう。腹直筋や腹斜筋、腹横筋などの腹筋群を鍛えると、内臓下垂による下腹部のぽっこりは改善します。また、内臓を一番下で支える骨盤底筋も鍛えることで、特に出産を経験した女性の骨盤まわりのゆるみを予防します。
    プランク
    プランクは、腹筋群を鍛えます。床にうつ伏せになり、ひじから下を床につけて上半身を起こします。つま先で立ち、お尻を持ち上げて体全体を支えて30~60秒キープ。身体は一直線で、呼吸はゆっくりと。
    ヒップリフト
    ヒップリフトで骨盤底筋の周囲を鍛えます。仰向けに寝て、手は床・膝は90度にして立てる。ゆっくりとお尻を持ち上げ、その際、トイレを我慢する要領でおしりを締める。上げたところで3秒キープし、ゆっくりと元に戻す。 1セット10回を、3セット行います。
      内臓を支える筋肉を作ることは、ぽっこりお腹の原因のいくつかを同時に改善します。しっかりした体幹は、有酸素運動の効率を上げることで脂肪の燃焼を助けますし、正しい姿勢を維持することも楽にできるようにします。そして、便秘の方は、適度な腹圧や運動自体の刺激が、腸の動きを活発にしてくれますし、トイレでの排便時にいきむ力が増すことで、より便秘になりにくくなります。ぽっこりお腹対策が、同時に便秘対策にもなるのです。  

    (4)便秘を改善しましょう

      これまで見てきたように、運動不足の解消や、体幹の強化は、ぽっこりお腹を改善するとともに、便秘を改善する効果もあります。お腹を気にされるような健康志向の皆様に、ここでおススメの便秘対策を1つ付け加えるとしたら、それは善玉菌優位の健康な腸内環境をつくることです。   私たちの腸の中には、約100兆個もの細菌(腸内細菌)がいて、それらの細菌には健康に良い善玉菌と、体に悪い悪玉菌がいます。腸の中で、悪玉菌が優勢になると、腸内環境は悪化し、便秘がちになることがあります。善玉菌を増やすことは、便秘解消・改善に有効です。また、腸内細菌は人間の健康に様々な影響を及ぼしていることがわかってきています。最近は、腸内細菌の多様性が損なわれることが肥満につながるとも考えられています注11。   ◎腸内環境を改善する方法  ・自分に合ったヨーグルトを見つけて毎日食べる(詳しくは「腸内環境と便秘 ①」)  ・発酵食品を摂る(詳しくは「腸内環境と便秘 ②」)  ・オリゴ糖を摂る同上 ・食物繊維を摂る同上)   関連リンク:「便秘によい食べ物」/「便秘によい飲み物」   便秘のセルフケアの全体像については、ブログ記事「便秘解消を目指して ~便秘のセルフケア~」も参考にしていただけたら幸いです。今回の記事では、便秘解消法そのものについてはあまり触れられませんでしたが、本ブログの「便秘解消」の記事群には、便秘解消のヒントをたくさん書かせて頂いています。興味があるかたは是非ご覧ください。   生活習慣の改善で便秘が解消できない時は、便秘薬・毒掃丸の使用も検討してみてください。複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。  

    ◇◇◇  ◇◇◇  ◇◇◇

    このように、ぽっこりお腹には、様々な原因があり、それぞれに対して対策をとることができます。ぽっこりお腹を解消しながら、便秘にもならない生活を目指してみてください!   関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイトおすすめの服用方法複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム  複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。また、複方毒掃丸には、腹部膨満感をやわらげる生薬コウボクが配合されています。 複方毒掃丸 (最終更新日:2022年8月11日)   注1:日本内科学会などの8つの医学系の学会によるメタボリックシンドロームの診断基準のうち、ウエスト周囲径の目安を参照 注2:Tsugane S,et al. Under- and overweight impact on mortality among middle-aged Japanese men and women: a 10-y follow-up of JPHC study cohort I. Int J Obes Relat Metab Disord. 2002 ; 26(4) : p529-37. 注3:便秘症の定義。日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年による。注4:本間研一 監修,   標準生理学 第9版,  医学書院.  2019;  p.880 注5:当社調べ「便秘有訴者の現状把握のための調査」2018年5月、楽天リサーチでのインターネット調査、N=550 注6:月経前・中に便秘になる人は、月経前に腹部膨満にもなっていることが報告されている。齋藤千賀子ほか,  月経パターンと月経時の不快症状及び対処行動との関係,  山形保健医療研究. 2005 ;  第 8 号: p53-63. 注7:参考文献:高野 正太,   慢性便秘症に対する食事療法、運動療法,、理学療法,  日本大腸肛門病会誌 2019 ; 第72巻10号  : p621-627. 注8:芝野眞喜雄、ミニマムファクター漢方生薬学 第2版.  京都廣川書店.   2022年 ; p.60-61,  注9:前掲書 p.142-143 注10:伊藤隆ほか、防風通聖散の減量効果の検討、日本東洋醫學雜誌  2005 ; 56(6): p933-939. 注11:入江潤一郎ほか,  腸内細菌叢と肥満症,  日本内科学会雑誌, 2015 ; 104(4) : p703-709.   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸毒掃丸整腸薬のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

    続きを見る

  • 体重を減らし、体形を今よりスリムにしたいと考えてダイエットに励む人は多いようです。大手エステサロンチェーンM社の調査では、20~34歳の女性の90%が今の自分の体形に満足していないと答えたそうです。また、私たちは、自分を太り気味だと自己評価する傾向があるようで、厚生労働省が2014年に行った「健康意識に関する調査」では、国民全体の傾向として標準体型の人の多くが自分を太っていると認知していることがうかがえます(下図)。   表:体型についての自己認識 厚生労働省「健康意識に関する調査」2014年 を参考に当社作成   人は、よりよい人生を手に入れるために、よりよい自分を目指し続けるのであり、だとするとダイエットをしようとする気持ち自体はまったく正常で、お互いに応援すべきものだと思います。ただ、方法を誤ったり、過剰なダイエットをしてしまうと、健康を害すのもまた事実です。やり方次第では、ときに不快な便秘も引き起こしてしまいます。   では、どんなダイエットをすると便秘になってしまうのでしょうか。また便秘になりにくいダイエットとはどんなものなのでしょうか。そして、便秘薬の服用や、便秘の解消で体重は落ちるのでしょうか。今回は、よりよい自分を目指す皆さんに、少しでも参考にしていただくために、こうした観点からダイエットと便秘についてまとめてみました。  

    ■ダイエットが便秘の原因になる場合

      ダイエット中には、食生活を大きく変える人が多いと思いますが、バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動と組み合わせることが結局は近道です。次のような場合には、便秘を誘発してしまうことがあるので注意しましょう。  

    ・朝食を抜かす

      排便の仕組みとして、胃・結腸反射というものがあります。結腸(大腸のこと)にある消化後の食べ物は、胃に食べ物が入った時の刺激で反射的に引き起こされる蠕動(ぜんどう)運動で一気に肛門の近くまで運ばれます。この反射は朝食後によく起こることが知られています。ダイエットで朝食を抜くと、胃・結腸反射が起こるチャンスを逸してしまうので、便秘をしやすくなってしまいます。実際に、便秘がちの大学生は、便秘でない大学生よりも朝食を抜かしている率が1.5~2.5倍高かったという研究結果があるそうです注1。  

    ・食事量を減らしすぎる

      食事に含まれる食物繊維や水分が減ってしまうと、便秘が引き起こされます。   野菜などに多く含まれる食物繊維は、人間の消化液では消化されないため多くが便の材料になります。また保水性が高いため、水を吸って膨らみ、便のカサを増します。ダイエットで食事量を減らすときも、食物繊維が不足しないよう気をつけましょう。   また、食事量の減少は、水分の減少にもつながります。ヒトは、1日に摂取する水の量2.5Lのうち、1Lを食べ物から摂っています(厚労省のこのポスターの図がわかりやすいです)。更に、便の重さの7~8割は水分です。そのため、食事量を減らすと便の水分が減り、便のカサが減ってしまいます。すると、便意が正しく起こらないことなどにより、排便回数減少型大腸通過正常型の便秘になってしまうことがあります。実際に、ダイエット経験がある女性には便秘が有意に多く、また1日あたりの水分摂取が1.5Lを超える男性に快便が有意に多いという研究結果があります注2。ファスティングという、断食を柱にした健康法を始めると、便秘をする人がいるといいますが、当然かと思います。   関連リンク:便と水分に関しては「うんちと便秘」  

    ・ストレスがたまり便秘に

      これはダイエット行動に限ったことではありませんが、一般にストレスがたまると、自律神経の働きが乱れ、便秘になることがあります。食事量を減らすだけでなく、ストレスを発散できる身体活動を交えるなど、ダイエットプランを一工夫してみてはいかがでしょうか。  

     (番外編)メディカルダイエットの副作用

      少々特殊な例ですが、GLP-1受容体作動薬という糖尿病治療薬を、「メディカルダイエット」と称して保険外で処方するクリニックが多くあります。その是非についてはここでは論じませんが(日本糖尿病学会の見解はこちら)、この薬は、腸の蠕動運動を抑える働きもあるので、副作用として便秘を誘発します。また、GLP-1は満腹感を持続させることで食事の摂取量を減らしますので、食べ物の量が減り、便秘になりやすくなります。   食べ物の誘惑にかられるダイエット中の女性  

    ■腸活は、健康を増進するダイエット術

      腸活という言葉は皆さんもよくご存知だと思います。腸活とは便秘にならないことや、腸内環境をよくするよことを目的にした活動全般のことです。腸活に含まれている活動の多くは、正しく行えば健康そのものを増進します。(腸活全般については本ブログ『「腸活」について①』を参照ください)   実は、腸活として行うアクティビティには、前の項で挙げた便秘の原因になるダイエットの真逆を行くものがいくつも含まれています。腸活の中にはダイエットの役に立つ考え方が多く含まれているのです。有名医師の中には、腸活ダイエットを提唱する方もいらっしゃいます。   ここでは、皆さんがダイエットプランを立てるときに参考になるような腸活の技術について、いくつかご紹介したいと思います。  

    ・朝食は抜かず、食物繊維や水分をしっかりとる

      忙しい毎日の中で、ダイエットまでしていると、つい朝食を抜きたくなってしまうかもしれません。でも頑張って朝食は抜かないようにしましょう。空になっている胃袋に食べ物が入ると、それが刺激となって腸が動き、お通じを促してくれます。朝起きたときにコップ1杯の水を飲むのもおススメです。胃・結腸反射による蠕動運動が起こることで、大腸の内容物が一気におしりの近くまで運ばれて行きます。また、食物繊維や水分はしっかり摂り、便のかさを確保しましょう。腸内の善玉菌を増やしてくれるヨーグルト、善玉菌のエサになるオリゴ糖や食物繊維が豊富なバナナ、水溶性食物繊維豊富なオートミールなどは、簡単に摂れる腸活食材です。まずはダイエットで便秘になることを避けるようにしましょう。(食べ物による腸活については、本ブログ『「腸活」について② 腸に良い食生活 実践レシピ付き』をご参照ください)   特にヨーグルトについては、毎日食べ続けた時に、他のタンパク質源と比較して体重が減少するという海外の大規模調査の結果がありますので注3、ダイエットに組み込む上では一石二鳥といえるでしょう。   関連リンク:「便秘を改善する食材:バナナ」/「便秘を改善する食材:オートミール」    

    ・有酸素運動をし、腹筋や骨盤まわりの筋肉を鍛える

      有酸素運動は、腸の動きを活発にしてくれます。同時に、ある程度持続した有酸素運動は脂肪を燃焼させることで体重を落とすことにもつながります。個別の種目でいうと、例えばウォーキングやジョギングは、便秘改善に効果があることがわかっていますが、これらは、同時に全身を使った有酸素運動として消費カロリーが高い身体活動でもあります。言うまでもなく、ダイエットの基本は、消費カロリーが摂取カロリーを上回ること。もしこれまで運動をしてこなかった人が、30分以上のウォーキングを週2回続けることができたなら、確実に体重が減少します。運動によるダイエットは、継続することが難しいので、モチベーションを高めることがカギです。もしあなたが便秘がちだったり腸の健康に興味があるようでしたら、運動は腸活にもなると考えて、頑張ってみてはいかがでしょうか。   また、体幹をひねる動き、腹部に圧をかける動きといった、腹筋や骨盤まわりの筋肉を鍛える運動は、(1)腸に刺激をあたえ、(2)排便に必要な筋肉を鍛えるため、便秘によい身体活動です。同時に、これらの運動は姿勢を整え、ぽっこりお腹を改善することに貢献します。(全くの蛇足でありますが、筆者の経験では、年単位でジョギングを続けていると、それだけで反り腰が改善し、お腹が引っ込みます。運動と便秘の関係全般については、本ブログ『便秘と運動』をご参照ください)   関連リンク:「ぽっこりお腹と便秘」    

     (番外編)肥満の人は、ある腸内細菌が少ない

      最近の海外の研究で、肥満の人とそうでない人を比較すると、腸内細菌の構成(腸内フローラ)が異なることがわかってきました注4。肥満の人ではそうでない人と比較してバクテロイデス門という細菌のグループの相対的な割合が少ないというのです。こうした腸内フローラの違いが食事からら取り込むエネルギー量に個人差をもたらし、肥満の原因の1つになっていると考えられるようになっています。腸内フローラと肥満の関係は近年注目があつまっていますが、まだ研究者の間でも細部まで意見が一致しているわけではなく、具体的な肥満症の治療法やダイエット法も、見出されていません。今後の研究の進捗が待たれるところです注5。   今私たちにできることは、腸内細菌の多様性を自ら崩してしまわないように、偏食しないように心がけることではないでしょうか。  

    ■便秘薬で痩せることはあるか

      便秘薬で痩せることを期待する方がいらっしゃるようです。ですが、もし便秘薬で体重が減ったとしたら、それは単に便秘が解消して便の分の体重が減ったか、副作用で下痢になって体の水分が失われたとからでしょう。まず、便秘解消による体重減少は、次の項で述べるように微々たるものですから、決してダイエット目的で便秘薬を飲まないようにしてください。また、副作用の下痢は、要は薬の効きすぎです。これも、便が排出できたこと以外に良い点はひとつもなく、痛みを伴ったり、続けると薬の効きが悪くなってきたりしてしまいます。そのうえ、下痢の後は体が水分を欲し、脱水で減った体重はすぐに元に戻るでしょう。   基本的に、便秘薬は小腸で水分を増やしたり、大腸を動かしたり、便のカサを増やしたりする成分でできています。これらの成分は、食べ物の消化や吸収には影響を与えませんし、一日の消費カロリーを増やす効果もありません。食欲を抑制することもできません。こうした成分だけから成る便秘薬を飲むだけでは、痩せることができません注6。  

    ■便秘解消は、ダイエットになるのか?

      では、便秘を解消すること自体がダイエットになるかどうかも考えてみましょう。実は答えは簡単で、溜まっている便を出すことは体重減少につながりますが、大抵の場合、何キロといった単位にはならず、便自体の重さである数百グラムの減少でしょう。食事量やその日のむくみの状態にもよりますが、例えば、便秘解消だけで普段より1キロ減るようなことはほとんどないはずです(一週間出なくても、恐らく1キロ以下です)注7。   一日の便量は多い時で200g程度ですが、便の60~70%は水分で、腸内に長時間滞留すると水分は大腸に吸収されて体内で再利用されます注8そのため、軽度の便秘なら、たまった便で増えている体重は、あまり多くないのです。また、宿便についての記事に詳しく書いてありますが、腸内に誰でも何キロものドロドロの宿便がこびりついているというのも誤った情報です。   ですので、便秘は体重を軽くするために改善するのではなく、便秘自体で心身に負担をかけないために、またこれ以上便秘をひどくさせないために、改善するべきものです。腸活を長く続けることや、便秘薬を正しく使うことで、便秘自体をあせらず改善し、体内に便が滞留しすぎないようにするという考え方が大切です。溜まっている便を無理やり出しても、しっかり痩せるまでの間にまた便秘でたまってしまっては意味がありません。   関連リンク:「宿便の話」/「うんちと便秘」   したがって、私たちは便秘薬メーカーではありますが、ダイエットのために便秘薬を長く服用することはおすすめしません。便秘薬は、腸活の技術を取り入れてもなお便秘がちな場合や、まちがったダイエットでつらい便秘になってしまったときに、レスキュー用として適宜活用するのが正解です。(便秘薬の使い方については、本ブログ『便秘薬をのむ時に大切なこと』もお読みください。)   なお、一部本記事の内容と重なりますが、便秘解消の方法については、下記を参考にしてください。   ◎腸内環境を改善する  ・自分に合ったヨーグルトを見つけて毎日食べる(詳しくは「腸内環境と便秘 ①」)  ・発酵食品を摂る(詳しくは「腸内環境と便秘 ②」)  ・オリゴ糖を摂る同上 ・食物繊維を摂る同上 ・市販の整腸薬を活用する同上)   →腸内環境の記事一覧腸活の記事一覧   ◎便秘を改善するポイント  ・腸内環境を改善する  ・朝食を食べる  ・リラックスして自律神経を整える  ・運動をする(詳しくは「便秘と運動」)  ・お腹のマッサージをする  ・市販の整腸薬や便秘薬を活用する   生活改善で便秘が解消できない時は、便秘薬・毒掃丸の使用も検討してみてください。複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。  
    毒掃丸の6つ成分の表
    複方毒掃丸の生薬(成分・分量・働き・薬効部位)
      関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイトおすすめの服用方法複方毒掃丸の無料サンプルお申込みフォーム
    複方毒掃丸
    複方毒掃丸
      みなさまが、便秘にならずにダイエット計画を完遂できることを、心からお祈りしております。 (最終更新日:2022年6月4日)   注1:日本消化器病学会関連研究会,慢性便秘の診断・治療研究会:慢性便秘症診療ガイドライン 2017.南江堂,2017 p.11参考。 同書が引用の原著(福田ひとみほか,大学生の食事状況・食行動と便秘状況,平成17年度帝塚山学院大学人間文化学部研究年報 2005;7:91~97)を筆者はまだ確認できていない。注2:山田五郎ほか,大学生における慢性機能性便秘発現に及ぼす性および生活習慣との関連ー横断的研究ー,栄養学雑誌 2009;  67  p. 157-167 注3: プレーンまたは人工甘味料添加のヨーグルトの場合。Jessica D Smith et al. , Changes in intake of protein foods, carbohydrate amount and quality, and long-term weight change: results from 3 prospective cohorts, Am J Clin Nutr 2015 ; 101 : p1216-1224    注4:Turnbaugh, P.J et al, Microbial ecology: human gut microbes associated with obesityNature.  2006 ; 444  : p1027-1031. 注5:参考文献:入江 潤一郎ほか,  腸内細菌叢と肥満症,   日内会誌  2015;  104 : 703-709 注6:但し、漢方処方の防風通聖散の効能(体力に充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症)には、便秘と肥満症の両方が記載されています。この処方は瀉下成分以外の成分を多く含むこと、肥満改善薬として用いられることが多いこと、ドラッグストアなどで便秘薬の棚にふつう置かれていないことから触れていない。注7:思考実験であるが、仮に、ある人の通常の便量を150g、含水量を70%とすると、水分以外の重量は45g。ひどい便秘で含水量が50%に下がるとすると、便の量は90gとなる。これが7日分集積すると630gであり、あとの方の便に含水量が多いことを考えても、1キロにはならない。注8:本間研一 監修,   標準生理学 第9版,  医学書院,  2019. p.880.   写真説明: 伊勢神宮に行ったときに、静かで美しい池を見つけました。その池の写真に、タイトルの文字を重ねてみました。新緑が青空に映える画から涼しさを感じていただけたら、また神秘的な池からダイエット完遂へのパワーを得ていただけたら幸いです。   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。今後、記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

    続きを見る

  • 便秘と運動

    2021.08.01
    運動は便秘解消に効果的で、また運動不足は便秘の原因になる~~皆さまも一度は聞いたことがあるはずです。でも、そうとは知っていながらも、実は十分な運動ができていない…そんな方も多いのではないでしょうか。運動は、便秘のセルフケアの大事な要素で、ご自身の生活スタイルにあう形でしっかり習慣化していくことが大切です。今回は、運動と便秘の関係について、エビデンスに基づいて整理し、どんな運動をどのくらいするのが良いのか、見てみたいと思います。

    ■運動と便秘の関係

      運動の減少が便秘の悪化につながることと、運動の実行が便秘解消に有効であることを示すデータは、多く存在しています。例えば、食べ物が大腸を通過する時間(大腸通過時間)は、運動をしたほうが短くなること、よく歩くことでカプセル内視鏡の排出率が向上すること、また運動量が減った人に便秘の症状が増えてること、などといった報告があります注1。便秘に悩んでいる人は、積極的に運動をするべきでしょう。運動は、立派な腸活なのです!   運動が便秘を改善する理由としては、(1)運動による刺激が腸管運動を促進し、大腸の内容物が直腸にむけて移動しやすくなることや、(2)運動によりリラックスでき、自律神経のバランスが改善し、それが日々の腸管運動のリズムを整えてくれること、の2つが考えられています注2。加えて、排便のために「いきむ」時に、腹筋で腹圧を高める必要があるため、腹筋を鍛えることも便秘を改善させると、広く一般的に考えられています。  

    ■どんな運動を、どれだけすればよいの?

      このように、運動が便秘の改善に効果があることはかなり確実だと言える一方で、どんな運動で実際に効果がでるのかは研究が豊富とはいえません。まず、網羅的に様々な運動が便秘をどの程度解消するかを比較した研究はありません。ただし、ジョギングなど有酸素運動が便秘を改善するという研究結果がいくつかあり、気功やウォーキングなどの有酸素運動が便秘を改善したことを示す海外のメタ解析が存在しています注2。コロナ禍という時節柄、運動を室内で行う方も多いと思いますが、その場合は、スペースが限られる中で効率よく運動をしたいものです。先に挙げたように、便秘対策として行う運動は、動作の際の刺激で腸管を動かすことも期待していますから、体幹をひねったり腹部に圧がかかるような動作がお勧めです。そして運動後でも構わないので、腹式呼吸も組み込むことができたら、より自律神経の働きも整うでしょう。中長期的な便秘対策としては、腹筋を鍛えることも意識してみましょう。   便秘改善のための運動 表は本記事の内容より当社作成   また、どれほどの運動を勧めるかについては、明確なエビデンスがなく、従って医学的な目安はありません注1。ただ、ある程度継続的な運動が必要そうであることは、データから推察することができそうです。慢性便秘症の女性患者を対象とした、便秘のリスク因子に関するアメリカの研究注3では、日常の運動の頻度が便秘にどの程度影響するかを統計的に分析しています。論文のデータ(下の表)によると、週に一度も運動しない人が便秘である割合を1とすると、週2~3回運動をする人では0.68、毎日では0.56と、運動の頻度が上がるに従って便秘を訴える人が減っていく傾向が見て取れます。 運動頻度と便秘 *multivariate   表は Laurent Dukas, et al: Association between physical activity, fiber intake, and other lifestyle variables and constipation in a study of woman. Am J Gastroenterol 98:1790-1796,  2003より作成   1度に行う運動量については、便秘に特化したエビデンスはまだないようです。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」というガイドラインでは、健康全般のために30分以上の運動を週2回以上行うことを推奨しており、一つの目安になりそうです注4   便秘解消にむけたご提案: ジョギングやウォーキングのような室外の有酸素運動、あるいは気功・ヨガ・室内体操などを、1回30分以上を週2回以上、行うことを心がけてみてはいかがでしょうか。   なかなかハードルが高いように見えますが、最初からこの水準を目指す必要はありません。まずはできることから始めることが大切です。また、腸活や、腸活を含む便秘のセルフケアのメニューは、運動だけではありません。本ブログの腸活のタグと、便秘解消のタグにある各記事もぜひ参照していただき、ご自身に合った便秘対策を行ってみてください。また、毒掃丸整腸薬で腸活をサポートしてあげることや、便秘の症状が気になるようになったら、便秘薬・毒掃丸の助けを借りることも併せてご検討ください!   (最終更新日:2022年3月22日)   注1:日本消化器病学会関連研究会,慢性便秘の診断・治療研究会:慢性便秘症診療ガイドライン 2017.南江堂,2017 p.60 注2  高野 正太: V.慢性便秘症に対する食事療法、運動療法,、理学療法,  日本大腸肛門病会誌 第72巻10号  621-627,2019 注3:Laurent Dukas, et al: Association between physical activity, fiber intake, and other lifestyle variables and constipation in a study of woman. Am J Gastroenterol 98:1790-1796,  2003 注4:前掲の「慢性便秘症診療ガイドライン 2017」でも「健康づくりのための身体活動基準2013」の活用を推奨している。   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸毒掃丸整腸薬のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

    続きを見る

  • 3回にわたってお届けしている「腸活」についての話題ですが、初回は腸活全般について、2回目は腸に良い食生活について書かせていただきました。そして3回目にあたる今回は、食べる以外の腸活について、ご紹介してまいります。   「腸活」とは一般に、腸内環境を整えたり腸の働きをよくすることで、便秘を改善したり、より健康な全身状態を目指したりすることを指します。この腸活の中には、リラックス、運動、マッサージ、ツボの刺激…など食べる以外にも、色々な方法があります。その多くは、健康法としての歴史も古く、実践している人も多くらっしゃるのではないでしょうか。こうした活動は、どれも「意思の力では動かすことができない腸に、動いてもらう」ものであるという共通点があります。  

    ■腸への語りかけ

      食べる以外の腸活とは、一言でいうと大腸への語りかけだと思っています(もちろん比喩ですが)。   私たちの腸はいわば筋肉の長~い管みたいなものです。腸の筋肉は、輪状に収縮し、その収縮する場所が食べ物を押し出すように口側から肛門側へと移っていく蠕動(ぜんどう)と呼ばれる運動をして、消化物を運んでいきます。でも、他の多くの内臓同様に、意識して腸を器用に動かし食べ物を運んでいくことはできません。誰もが、便意がおこるまでの長い時間、天から自らに与えられた腸の働きを信じて、任せきりにするしかないのです。   筋肉の管でもある腸は、1.脳とつながっている自律神経と、2.内容物に対して腸に反射的な運動を起こさせる腸壁内の大量の神経、の2種類が、互いに協調することで制御されています(これらの神経系統を、腸管神経系といいます)。私たちが、動いてくれない自らの腸を何とか動かそうとするときには、これらの神経系に信号を与えてあげることが必要です。しかし、何しろ手足のように意識して「動け」と念じても、信号を与えることができません。さてどうするか… 以下に、あの手この手で大腸各所の神経に「おーい、動け、動いてくれ」と呼びかる方法をご紹介します。どれも広く知られていますが、これらは腸への語りかけみたいなものですから、腸との非言語コミュニケーションだと思って自らの腸を慈しむ気持ちで行っていただけたらと思います!   では、代表的なアクティビティを4種類取り上げてみましょう。

    1.リラックスして自律神経を整える

      リラックスして自律神経を整えることで、腸の動きは良くなります。私たちの日々の生命維持を支えてくれている自律神経には、活発に活動しているときに高まる交感神経と、リラックスしているときに高まる副交感神経の二種類があって、両方の神経の活動量のバランスによって、内臓の動き具合を調節しています。腸の活動は、リラックスしているときに高まる副交感神経の働きが優位になっているときに、より活発に動くのです。   お勧めなのが腹式呼吸や深呼吸です。吸う時の2倍程度の時間を掛けて息を吐くことで、副交感神経の働きが高まることが多くの実証実験で分かっています(例えばこちら)。まずは5分でも続けて行い、実際にリラックスが得られることを実感してみましょう。リラックスが実感できたら、隙間時間や緊張状態のときにやってみたり、リラックスタイムの質を更に上げるためにどんどん活用してみてください。自律神経の働きが整ってくると、腸の動きも正常化してくるはずです。   *ストレスで頻繁に便秘や下痢をくりかえす人は、過敏性腸症候群(IBS)かもしれません。リンク先のチェックリストで痙攣性便秘に該当した方は、お医者様に専門的指導を受けることも検討してください。

    2.運動をする

      運動の減少が便秘の悪化につながることと、運動(特に有酸素運動)の実行が便秘解消に有効であることを示すデータは、多く存在しています。体を動かすことで、腸の働きは良くなります。動きが良くなる主な理由としては、運動することで自律神経が整うことと、運動自体で腸管が刺激されることです。   参考文献:高野 正太「V.慢性便秘症に対する食事療法、運動療法,、理学療法.」 日本大腸肛門病会誌 第72巻10号0621頁    また、長期間の運動習慣によってお腹周りの筋肉を鍛えられることも、便秘対策として有効です。私たちは、排便時には意識的に腹圧を高め、その力を利用して便を押し出してしているからです。   運動種目には、ウォーキングが推奨されることも多いですし、ジョギング、ヨガもお薦めです。   当社のお客様相談では、便秘に悩むお客様には体を動かすことを推奨しており、寝たきりやケガなどで運動ができない方には深呼吸だけでも意識的に行うよう伝えています。

    3.マッサージをする

      お腹をマッサージすることも、便秘改善に効果があるとされています(試験報告もあります)。特に「の」の字を描くように大腸をマッサージする方法は広く紹介されていますし、最近は「腸もみ」というコトバもよく見るようになりました。   先にも書いた通り、腸壁の神経は、内容物に対して反射的に運動をおこし、食べ物を運んでいきます。従って、腸をマッサージすることによって蠕動運動をおこすサポートをしたり、もむことの気持ちよさからリラックスできる(→自律神経が整う)ことが期待できそうです。痛みを感じない程度にもむようにしてください。体をねじる動きも、同様におすすめです。     但し、大腸の配置は一般に、皆が皆教科書通りなわけではなく、蛇行していたり、下部によっていたり個性があります。イラストの通りとは限りません。「の」の字マッサージが効かないこともあるかもしれません。   関連リンク:「便秘とマッサージ

    4.ツボ押しをする

      東洋医学伝統のツボ(経穴)は、神経経路の反応を通じて、痛みを緩和したり、内臓の働きを正常化させたりしてくれると考えられています。腸から離れている経穴を押して、腸の動きを改善してくれるのだとしたら、生理学的には自律神経の働きを通じてということになるでしょう。公益社団法人日本鍼灸師会のHPでも、
      身体には皮膚や筋肉などに刺激が加えられると自律神経の活動が変化し、自律神経が支配する臓器・器官の働きが反射的に調節される仕組みも備わっています。鍼や灸の刺激はその仕組みを利用して自律神経活動を変化させ、血管の調節をしたり臓器の働きを良くしたりします。 出展: 鍼灸の基礎知識 – 公益社団法人 日本鍼灸師会https://www.harikyu.or.jp/acupuncture/acupuncture-02/#i-8 2021年5月13日アクセス
      とあります。   便秘によいツボの代表的なものとして、2つ挙げておきます。(便秘に効くツボというのは便秘対策本などの定番ではありますが、個別にツボ押しが便秘に効くというエビデンスは見つけられませんでした。)   (1)合谷(ごうこく):万能のツボとも称されている非常にポピュラーなツボです。頭痛や肩こりによいとされていますが、便秘にも良いとされていることから、多くの便秘薬メーカーのおススメのツボになっています。人差し指と親指の合わさるところから少し指先よりの痛みを感じるくぼみを親指で挟むようにして押します。   (2)天枢(てんすう):胃腸の働きを整えてくれる代表的なツボです。おへそから指2~3本分はなれた両側です。やさしく押すだけでも腸が刺激されるのが実感できます。   いかがだったでしょうか?皆さまが考える腸活のイメージからは少し外れているものもあったかもしれませんが、どれも簡単にできるものばかりです。便秘改善への効果がある程度期待できるうえに、賢く楽しむ分には費用もあまりかからず、比較的安心して取り組めます。ぜひぜひ、様々な腸活にはげんでいただきたいと思います!   ◇   ◇   ◇   ◇   過去2回の腸活の記事の内容は下記のとおりです。   第1回 目次 腸活について① ■腸活とは、なにか? 腸活の目的 腸活のアプローチ (A)善玉菌のチカラを借りるための「食べる腸活」 (B)それ以外の方法で腸の動きを正常にする、「食べる以外の腸活」 腸活の具体的な方法 (A)「食べる腸活」(=腸によい食生活) (B)「食べる以外の腸活」   第2回 目次 「「腸活」について② 腸に良い食生活 実践レシピ付き 1.朝食を食べる 2.ヨーグルトなどの乳酸菌を摂る 3.食物繊維を摂る 4.発酵食品を摂る 5.オリゴ糖を摂る 実践!腸活レシピ     写真:腸活を実践していると、美しい景色に出会えることもあります。爽やかな風が吹く日に、ゆっくり東京都の多摩川沿いをジョギングしていた時の写真です。 (最終更新日:2023年1月11日)   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

    続きを見る