タグ別アーカイブ: コウボク

  • 便秘薬・毒掃丸の6種類の主原料の1つに、コウボクという生薬(しょうやく:植物の薬効部位)があります。コウボクは、ホオノキという木の樹皮で、お腹の張りを改善するはたらきがあります。このホオノキを山に植樹するイベントが秋田県の美郷町で開催され、当社も参加して参りました。今回は、この美郷町様のイベントの様子をリポートし、その中で、薬樹・ホオノキのことや、生薬栽培をめぐる諸問題について触れてみたいと思います。  

    ■薬樹の森をつくろう

      美郷町は、秋田県仙北郡にある人口18,000人ほどの町で、その名の通り風光明媚な美しいところです。横手盆地の中ほどに位置し、奥羽山脈を水源とする湧水群(六郷湧水群)があるなど、良質な「水」に恵まれているのが特徴です。美郷町は、農業振興の一環として薬用植物の栽培に取り組まれていて、「生薬の里・美郷」と銘打って、様々な薬用植物を栽培されています。そして、10年ほど前、薬樹(やくじゅ)の栽培にも着目されました。 美郷町は、秋田県中東部の仙北郡にある町で、東北地方の地図で考えるとほぼ中央に近い場所に位置しており、秋田県内の駅で考えると大曲駅と横手駅の間にあります。

    美郷町の位置(美郷町様のWebサイトより)

      薬樹とは、その一部が生薬として薬の原料になるような木のことで、樹皮が医薬品の原料になるものが多いです。中でもホオノキは、葉が大きい(写真1)落葉樹であるという特徴があります。ホオノキの落ち葉が山の斜面に堆積して腐葉土となり、土が水をため込むようになれば、山の保水力が高まります。また、山の保水力が高まれば、地下水を守ることにもつながります。ホオノキを山に植えることは、農業振興の枠を超えて、町の大切な資源である山や水を守ることにもつながる・・・美郷町の皆様は、そう考えて、薬樹・ホオノキを山の斜面に植樹することにされたのです。  

    写真1.  ホオノキには、大きな葉がつきます

    ■ホオノキ(朴の木)について

      薬樹・ホオノキとは、どのような木なのでしょうか。ホオノキは、モクレン科の落葉高木で、南千島から九州にかけて分布する、日本の固有種です。ホオノキは漢字では「朴の木」と書きますが、この「朴」は「包(ホウ)」が転じたもので、大きな葉で食べ物などを包むことから来た名前だとも考えられています注1。このホオノキの葉っぱは、大きく、香り良く、殺菌力に優れ、火に強いことから、料理にも活用されます。岐阜県の郷土料理である朴葉味噌(写真2)などは有名です。  

    写真2:朴葉味噌(農林水産省のWebサイトより)

      樹齢20~30年くらいのホオノキの樹皮をはがし、それを乾燥させたものには薬効があり、コウボク(厚朴)として、毒掃丸をはじめとする生薬製剤や、漢方薬に使用されています。胃や腸の調子を良くするはたらきがあり、食欲不振・腹部膨満・腸内異常発酵への効果を期待して毒掃丸にも配合されています。   参考リンク:「生薬の便秘薬と、漢方の便秘薬」   ところで、ホオノキ自体は日本の固有種ですが、2018年の時点で、生薬・コウボクの国産比率は22%しかありません。大多数である78%は、中国からの類似種(カラホウ)を輸入して賄っているのです注2。毒掃丸は今のところ日本産のコウボクを使っていますが、手をこまねいていると、国産のコウボクの入手が難しくなる日がくるかもしれません。風光明媚で水の良い美郷町にホオノキを植樹することは、毒掃丸の良質な原材料を国内で確保する観点から、当社にとっても大切なことなのです(生薬国産化の問題は後述します)。  

    ■植樹イベントの様子

      薬樹・ホオノキの植樹体験イベントは、10月2日(日)に開催されました。このイベントが開催されるのは、もう7回目で、当社は毎回参加しています。2014年に第1回が開催されて以来、毎年実施されてきましたが、第6回の後はコロナ禍で中断されていました。今回は2年ぶりの再開です。   このイベントのポイントは、町民の方々を含めた多くの関係者がボランティアで参加し、植樹を体験しながら、森づくりの意義を感じることだと思います。一般町民の他に、町役場、ボランティア組織、私たちのような企業や生薬栽培の関係者、年によっては学生たちも参加して、薬樹を斜面に植えます。   では、いよいよ当日の様子を振り返りたいと思います!まず、50人くらいの参加者が町内の施設に集まって開会式を行いました。美郷町の松田町長や、生薬栽培で美郷町と連携している公益社団法人東京生薬協会(当社も加盟)の会長、そして美郷町議会議長のご挨拶を拝聴します。その後、東京生薬協会広報委員長の池村氏から、薬樹やホオノキについての講義をうけ、終了後に、バスで植樹会場に移動しました。   植樹会場の様子

    写真3:植樹会場は、正面の山の斜面です。22年10月2日(日)撮影、以下同。

    会場は、横手盆地の東の端にあたる、美郷町の千屋地区(写真3)。昔スキー場だった町有地で、この同じ斜面に、第1回以来、年100本程度ずつ、ホオノキを植えてきました。この場所は、町民が普段車を走らせている時に目に入るところだそうです。植樹をした人が、体験を時々思い出せるように、場所選びも工夫されています。   2014年に植えたホオノキ

    写真4:2014年に植えたホオノキが、大きく育っています。

    斜面を登っていくと、これまで植樹してきたホオノキが私たちを出迎えてくれます(写真4)。このあたりのホオノキは、植えてから8年がたちますが、樹皮をはげるようになるまでには、まだ相当時間が必要そうですね。   植樹会場からの景色

    写真5:植樹会場からの景色

    今年の植樹場所は、これまで植えてきた場所の更に上です。育った樹を切り出すときのことも考えて、下から順に植えているのです。植樹場所からは、稲刈りを終えた秋の横手盆地が一望できます(写真5)。   植え方のレクチャー

    写真6:植樹のやり方を教わり、苗を植えていきます。

    ホオノキを植樹する松田町長

    写真7:美郷町の松田町長もホオノキを植えました。

    木の植え方については、専門の方から説明を受けます。スコップで土を掘り、肥料になる炭を敷き、苗を置いて、土をかぶせます。最後に土をかぶせたところを踏みながら、苗をぐっと上に引いて、地を固めます。美郷町の松田町長はじめ、参加者みんなで斜面にホオノキを植えます(写真7)。もちろん、私も植えさせていただきました。   薬樹の栽培に意義を見い出している人たちが各方面から集い、屋外でともに汗をかき、秋の風を感じながら、しばし語らうーー本当に素晴らしい時間を過ごすことができました。   植樹したホオノキは、山の斜面と地下水を守り、やがて樹皮を採取する時期を迎えます。当社では、この皆で植えたホオノキからとれるコウボクを、毒掃丸に使用することも見込んでいます。   斜面に100本のホオノキが植わりました

    写真8:斜面に100本のホオノキが植わりました

      参加者全員での記念撮影

    写真9:植樹をした全員で、記念撮影をしました。

    ■「生薬の国産化」について

      今回の植樹インベントのように、自治体や製薬会社が薬用植物を植えようとするのには、自然保護といった本質的な目的以外にも、原動力となる社会的背景があります。農業(や林業)の振興、良質な生薬の確保といった理由については触れてきましたが、あと1つ、大切なキーワードがあります。それは、「生薬の国産化」です。   生薬とは、植物などの薬効部位を指します。生薬を加工・配合して作られる漢方薬や家庭薬は、日本中で、人々の健康な生活を支えています。でも、実はその供給体制は盤石とはいえない状態なのです。我が国の生薬使用量は、年間約26万トンと言われていますが、そのうち、国産はわずか1割しかありません。残りの8割は、中国からの輸入で賄われています注3。   中国産の生薬は、同国の経済成長の影響で、(1)中国国内での需要の増加と(2)人件費の高騰に見舞われており、その結果、輸入生薬の価格は上昇を続けています。また、尖閣諸島での中国漁船衝突事故(2010年)をきっかけに、中国への輸入依存度が高かったレアアースが、中国政府によって禁輸となったのは記憶に新しいことと思います。万一、中国政府が生薬の輸出を一時的にでも絞ったなら、漢方薬や、家庭薬の国内生産は大きな打撃をうけることになるでしょう。漢方薬や家庭薬の安定供給のために、我が国は、生薬の国産化率を上げなければなりません。そのため、農林水産省をはじめとする行政、東京生薬協会をはじめとする多くの業界団体、美郷町をはじめとする多くの自治体が、互いに連携して、生薬の国産化に取り組んでいるところです。   そもそも、古来、日本の医学は中国由来でしたので、日本の風土で育たない主要な薬用植物も多く、そうした生薬の供給は、中国からの輸入に頼っていました。江戸時代の鎖国の時期でさえ、出島に出入りする唐船を通じて、大量の生薬が入ってきていたのです。我が国の風土に合わない生薬を安価に栽培するには、技術的・経済的にみて、高めのハードルを越える必要があり、時間がかかるかもしれません。せめて我が国で生育するホオノキのような種は、良質な日本製を増やしていくべきでしょう。   関連リンク:「生薬の話① 生薬の魅力と歴史」/「生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために」/「便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」   気持ちよい初秋の空のもと行われた植樹イベントは、このように、社会の諸課題を解決しながら、良質な生薬と美しい自然環境をはぐくみたいという、関係者の皆さまの熱い努力のうえに成り立っていたのです。    

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      コウボク(厚朴) コウボクの写真

    食欲不振、腹部膨満や腸内異常醗酵に効果があります。

    英名:Magnolia Bark 学名:MAGNOLIAE CORTEX 産地:長野、岐阜、富山、鹿児島県、北海道などの野生品。 中国(四川、湖北など)。

    薬用部位:ホオノキの樹皮。 性状:弱いにおいがあり、味は苦い。 作用:健胃・整腸作用等。

       

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      注1:Webサイト 森と水の里・あきた/あきた森づくり活動サポートセンター総合情報サイト/樹木シリーズ2121 ホオノキ を参照。注2:山本豊ほか,  日本における原料生薬の使用量に関する調査報告 (2), 生薬学雑誌, 2021: 74(2); p.89-105. 注3:農林水産省資料「薬用植物(生薬)をめぐる事情」令和4年7月 を参照   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! また、お買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。 見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。 こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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