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  • 毒掃丸のシンボルといえば、ネコ科の猛獣トラ。今も毒掃丸のパッケージの一番目だつところに描かれています。このトラは、明治時代に「毒退治」のシンボルとして毒掃丸に描かれるようになりました。今回は、歴史を振り返りながら、トラに秘められた当社の思いをご紹介します。  

    ■時代背景(1)明治時代に身近になったトラ

      トラは古来、日本にはいない動物です。もちろん、中国や韓国との交流を通じてエリート層にはその存在はかなり古くから知られていましたし、十二支に用いられるなど、市民にもなじみは深いものがありました。しかし、庶民が実物のトラに接することができるようになったのは、割と最近のことです。一般市民が生きたトラを目にすることができるようになったのは、見世物の目玉として実物のトラが出されるようになった江戸末期だといわれています。明治に入ってそんな機会も増えてきて、徐々にトラは身近になってきます。そして、1882年(明治15年)に日本で最初の動物園である東京の上野動物園が開園しますが、開園5年後の1887年(明治20年)になると、いよいよトラが展示されるようになりました。ちなみに、そのトラは、外神田・秋葉ヶ原で興行していた当時大人気だった舶来サーカス団で生まれたトラを動物園側がヒグマと交換で入手したものだそうです注1。当時の上野動物園では、トラが入る前は熊しか猛獣がいなかったので、新たにやってきたトラは、人気を博したといいます注2。   外神田・秋葉ヶ原の舶来サーカス団でトラが生まれた1887年の翌年・1888年(明治21年)に、秋葉ヶ原のすぐ南・神田花房町で、山﨑帝國堂が創業しました。のちに当社がトラを看板商品のシンボルマークに選んだのは、もしかしたら、創業者たちが、当時身近になってきた本物のトラを見て、斬新さを鮮烈に感じたからなのかもしれません。  

    ■時代背景(2)病魔退散のシンボル・トラ

      大阪にある薬の街・道修町で、「神農(しんのう)さん」として親しまれている少彦名神社(すくなひこなじんじゃ)は、日本医薬総鎮守として、病気平穏・健康成就を祈る神社です。この少彦名神社では、普通の神社だと狛犬がいるようなところに、今もトラの像が鎮座しています。そして、本堂の中にも張子のトラが鎮座しています。ここではトラは病魔退散のシンボルなのです。   少彦名神社でトラが病魔退散のシンボルになったのには、そう古いことではありません。1822年に大阪でコレラが流行したときに、病除けの薬として「虎頭殺鬼雄黄圓」(ことうさっきうおうえん)というトラの頭蓋骨を砕いたものを入れた丸薬を作り、張子のトラとともに配ったところ、流行がおさまったというのです。本物のトラが極めて珍しかったころですから、人々は、よく知らない猛獣に、神秘的な力強さを感じたことでしょう。   江戸・明治の時代には、大阪の道修町は日本の薬業の中心でしたから、薬業界に身を置く当社の創業者たちは、トラが道修町で病魔退散のシンボルになっていることを知っていたと思うのですが、確かなことはわかりません。  

    ■「猛虎一聲掃萬毒(もうこいっせいそうばんどく)」と解毒への強い思い

      そうした時代背景のもと、創業したばかりの当社は、現在の毒掃丸のルーツにあたる「腹内毒掃丸」を発売しました。その名前は体内の毒を掃除してくれる丸薬であるということから名付けられました。効能は、梅毒・そう毒・しつ毒・淋毒・胎毒など、当時体内の毒が原因で引き起こされると思われていた諸疾病です。明治30年代には、「毒掃丸」の名で全国展開していきます。 (当時の経緯については、弊社HP「複方毒掃丸の歴史」もぜひご覧ください)   全国展開するようになった明治時代の毒掃丸には、トラがシンボルとして描かれるようになります。猛獣の強そうなイメージと、病魔退散のイメージを融合させたような、「毒退治」のシンボルです。そしてトラには「猛虎一聲掃萬毒(もうこいっせいそうばんどく)」というキャッチフレーズが添えられます。このフレーズは、力強い虎が一吠えすれば全ての毒が一掃される、といった意味で、つい数年前まで毒掃丸のパッケージに絵柄として描かれていたフレーズです。ここには、当社の、体内の不要物を出すことで人の健康をとりもどしたいという強い思いが込められています。   明治時代の毒掃丸の新聞広告   これは、明治35年1月1日の東京朝日新聞(今の朝日新聞)に出されていた当社の広告です。新聞一面を使ったかなり大きな広告で、明治時代とは思えない大胆なグラフィックだと感じます。リアルに描写された猛虎が、諸毒に襲い掛かる様が描かれています。  

    ■改良された処方と、変わらぬ思い

      このように、毒退治のトラを掲げてひろまっていった明治時代の毒掃丸ですが、実際に毒消しになったのでしょうか?(注意:現在の毒掃丸は、便秘薬であり、解毒の効能効果は認められていません。)   初期の毒掃丸の処方の組み立て方を見ると、確かに、体の不要なものを排出することへの強いこだわりが見て取れます。江州の名医・香川修徳伝来の処方に「香川解毒剤」というものがあり、梅毒等の諸毒に用いられてきましたが、初期の毒掃丸の処方にもちいられている8生薬(下記参照)のうち5生薬が「香川解毒剤」と重なります。また、配合されている8つの生薬全てが、古来、瀉下・排膿解毒・利尿のうちいずれか・もしくは複数の目的で用いられていたといわれているものです。   明治の毒掃丸が効能にうたっていた疾病の中には、科学の進歩とともに病原体が判明し、根本治療の方法が確立されたものがいくつもあります(例えば梅毒や淋病)。毒掃丸は、こうした疾病を完治させることはできなかったと思いますが、他に治療法がないなか、いわば現在のデトックスのような考えで、服用されてきたものと思います注3。   (当社のデトックスに関する考え方は、『便秘と「デトックス」①デトックスを理解する』を、江戸時代のダイオウやサンキライの用いられ方については『便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸』をご覧ください)     〇初期の毒掃丸の処方注4 ダイオウカンゾウセンキュウサンキライ、ドリュウソウ、ニンドウアロエアケビ   その後、毒掃丸の処方は、時代に合わせて改良されてきました。現在配合されている6つの生薬のうち2つは、初期の毒掃丸には含まれていないものです。小腸の水分を増やすことで排便を促すエイジツと、胃腸の調子を整えるコウボクで、いずれも便秘・便秘にともなう諸症状を緩和することを期待して配合されています。一方で、4つの生薬は、発売当初と同じものです。     〇現在の毒掃丸の処方 ダイオウ、カンゾウ、センキュウ、サンキライ、エイジツ、コウボク (クリックすると詳細が書かれた添付文書がポップアップします)   現代の医学薬学のもとでは、もはや毒掃丸が萬毒を一掃するとは言えませんが、カラダの中の不要物を出すことで人の健康をとりもどしたいという強い思いは、毒掃丸が便秘薬になっても変わりません。  

    ■トラの変遷

    最後に、これまでに当社で用いられてきたトラのマークをいくつかご紹介します。美意識が現在と異なるのか、ユーモラスなトラが多いと感じませんか?   どくそうがん 虎キャラクター1どくそうがん 虎キャラクター2どくそうがん 虎キャラクター3どくそうがん 虎キャラクター4   こちらは、北多摩薬剤師会会長の平井 有先生所蔵の、古い旗に描かれてたトラです。ちょっと人懐っこそうに見えますね!   毒掃丸のトラキャラクター5 販促用旗   このように、明治以降色々なトラが描かれてきました。そんな中で、当社の歴史上もっとも人懐っこくて心優しいトラを挙げるとするならば・・・それは、もちろん現在の当社のキャラクター、さぶろうまる君です!   当社の公式キャラクター トラの さぶろうまる     注1:参考文献:上野動物園HP・上野動物園の歴史  注2:参考文献:濱田陽ほか, 日本人の非日常と日常に棲息する虎たち – 日本十二支考〈寅〉生活文化篇 –,  帝京大学文學部紀要. 日本文化学 2010  (41)   注3:古来用いられている生薬には、解毒作用をうたったものが多くあり、毒掃丸のような和漢薬や、多くの漢方処方に用いられています。しかしながら、そうした生薬の解毒作用の作用機序や、人体での実際の効果や、最適な加工工程などについては、十分な研究が進んでいません。それらの研究は、これからの課題です。 注4:竹内眞哉, 家庭薬物語 第20回 複方毒掃丸, ファルマシア, 2015:  51-9,  p882-883 から抜粋 写真説明:毒掃丸の、古い販促用の旗に描かれたトラ 北多摩薬剤師会会長 平井 有 先生所蔵   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)  

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  • 巷にいう「デトックス」は、医師など専門家の間では、医学的・法的に定義されていないあいまいな用語として、やや胡散臭い用語のように扱われています。でも、過去の歴史を紐解いてみると、当の医術や薬の専門家たち自身が(もちろん市民も)長らくデトックスそっくりの思想を抱き続けてきたことがわかります。私たちの毒掃丸をはじめ、今に伝わる伝統的な便秘薬の成分には、そんなデトックスそっくりの医学思想の痕跡が、はっきりと残っています。   前回は、「デトックスを理解する」と題して、現在のデトックスを考察しながら、便秘薬メーカーとして2つの提案をいたしました。今回は、「医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」と題して、特に江戸時代の日本に焦点を当てて、以前はまるでデトックスそのものの医学が実践されていたことをご紹介し、合わせてその思想の痕跡が私たちの毒掃丸の処方に残されていることをお話したいと思います。    

    ■世界に見られる下剤によるデトックスの発想

      古代には、病気は悪魔の仕業であると考えられ、魔術師や祈祷師が病気を治す役割を負っていましたが、吐剤や下剤(以下 瀉下薬(しゃげやく))が発見されるにつれ、体内から病魔を追い出すためにそれらを利用するようになります。メソポタミア、エジプトから始まり、ギリシャ、古代ローマに至るまで、多くの文明で悪いものを出すために便秘というより、病気自体の治療のために瀉下薬を用いていたという記録があります注1。   中国にも医薬の古い歴史がありますが、やはり下剤で体内の悪いものを出すという発想があります。古人は、邪気・悪気が人の五体の外から入って病気(傷寒)を引き起こすので、それを追い出すことが要諦と考え、「汗吐下(かんとげ)」の三法で邪を攻撃できると考えました。「下」は瀉下薬などで便とともに邪を出すことです(ここでいう瀉下薬の主役は複方毒掃丸にも配合されている大黄(ダイオウ)という生薬で、この後何度も登場します)注2。   悪いものを便と共に出してしまう発想は、洋の東西を問わず世界中で生まれ、長いこと違和感なく医薬の現場や生活者に受け入れられてきたようです。    

    ■デトックスを連想させる江戸時代の「万病一毒説」

      目を日本に転じてみましょう。   日本の伝統医学は、中国の伝統医学を起源として独自の発展を遂げてきました。例えば江戸時代の日本では、中国の医薬思想を自分たちなりに咀嚼し、実践的に解釈する医家があらわれるようになります。なかでも吉益東洞(よしますとうどう、1702ー1773)は江戸時代の代表的な医家で、現代にいたる日本の漢方医療に大きな影響を与えた人物です。吉益は、「万病一毒説」といって、すべての病気は体内に生じた毒が原因であり、それを下剤などで出してしまえば病を治療できると説きました。吉益は、その著書『薬徴』でも大黄の活用を推奨しています注3。    

    ■江戸時代の長崎貿易で大量に輸入されていた、2大「解毒」生薬

      奈良時代から江戸時代まで、薬の多くは、生薬(しょうやく)といって、薬用植物をすりつぶしたものでしたが、前述したように日本の医学は中国由来でしたので、日本の風土で育たない主要な薬用植物も多く、そうした生薬の供給は、中国からの輸入に頼っていました。江戸幕府が鎖国政策をとっていたことは有名ですが、鎖国期間中も、長崎には大量の中国産の生薬が陸揚げされていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか。その生薬の輸入を江戸時代を通じてみた時に、輸入量の1位と3位が、「解毒」に使われる生薬でした注4。   輸入量1位だった生薬は、山帰来(サンキライ)という生薬です。これは、当時蔓延していた梅毒を治療するために使われていました。梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌の感染により引き起こされる性感染症で、20世紀に化学治療薬が見つかるまで、まともな治療法がなかったので、感染すると数か月で全身に皮膚症状が現れ、10数年かけて酷い症状に苦しみながら死に至ります。もともと南アメリカからヨーロッパに持ち込まれ、インドや東南アジアを経由して、16世紀はじめに日本に入り、遊郭をつうじて急速に広まりました。江戸では、市民の梅毒の罹患率が50%を超えていたという推計もあります注5。そうした中、山帰来は排膿解毒作用がある生薬なので、治療効果が期待されたのでしょう、我が国での梅毒蔓延に合わせて需要が急増します。1754年には400トン以上が輸入され(おそらく現在の輸入量の100倍近く)、これはその年の中国からの全輸入生薬の47%を占める量だったそうです。また、この量は90万人の梅毒患者が1か月山帰来を連用できる量だとも見積もられています。山帰来の輸入は、江戸時代を通じて常時高い水準で推移します注4。しかしながら、山帰来は症状を緩和することはできても、病気の進行を止めることはできなかったはずです。
    山帰来
    山帰来(サンキライ)
    輸入量の3位だった生薬は、吉益東洞も活用した瀉下薬、大黄です。大黄の輸入量は、多い年には110トン程になりましたが注6、山帰来ほどコンスタントではなく、10年単位の波があり、これは痢疾(コレラやチフス)の流行りと相関しているのではないかといわれています注7。大黄にはタンニン類が含まれていて、古来痢疾にも効果が期待されていますが、細菌性の下痢に対して瀉下薬を使うことは今日ではありえませんし、当時であってもやや使いにくかったことと思います。しかし当時は、体内の悪いものを出す発想で大黄が用いられていたようです注8。実際に、十分な治療効果があったのかどうかは、不明です。
    大黄
    大黄(ダイオウ)
    はっきりとした根拠があるわけではないのですが、当時大量に輸入されていた大黄は、瀉下薬としてではなく、多くが痢疾や毒出しに使われていたのではないか、と私たちは考えています。そう考える理由は、(1)薬の値段は一般的に今よりずっと高く、庶民が舶来の大黄を便秘対策のために日常利用していたか疑問であること、(2)香川解毒剤注9など梅毒の解毒を目的とした当時の処方にも大黄が用いられていること、(3)江戸時代から販売されていた現存する家庭薬「七ふく」「百毒下し」に大黄が含まれ、それらが当時は毒出しの治療薬であったこと、の3つです。    

    ■デトックスの系譜に何を見るか

      今の医療の観点からみても、体に入ってしまった悪いものを出すという発想自体が、原理原則とし間違っているとは言えません。脈々と受け継がれてきた、毒を体から出せば病気が治るという考えそのものは、恐らく有史以来多くの人命を救ってきたことでしょう。しかしながら、江戸時代に大量に輸入され消費されていた「解毒」に役立つ2つの生薬のエピソードが示すように、打ち克てない毒にまで、身近な薬草のチカラで解毒しようとしても、せいぜい対処療法どまりで、根本的な解毒はできなかったと思います。   現代社会での「デトックス」も、健康維持の「心構え」としては悪いものではなく、恐らく、実際に人々の健康の助けになっていることでしょう。ただ、方法論を間違って効果のないものに頼ってしまうと、失うものがあるかもしれません(生薬を中国から買い付けた江戸時代の日本からは、大量の銀が大陸に流出しました)。なお、現代社会におけるデトックスについては、前回の「デトックスを理解する」に簡単な考察と、便秘薬メーカーとしての2つの提案がありますので、ぜひご覧ください。    

    ■毒掃丸のルーツ

      最後に、複方毒掃丸のルーツについても触れさせていただきたいと思います。毒掃丸は明治20年代に当社から発売された薬ですが、今回の記事でとりあげた江戸時代以降のデトックスの流れとは切ってもきれない関係があります(詳しくはHP「複方毒掃丸の歴史」/本ブログ「毒掃丸と「毒退治」のトラ」をご覧ください)。   複方毒掃丸 たとえば、毒掃丸は、6種類の生薬からなる穏やかな効き目の便秘薬なのですが、江戸時代に大量に輸入されていた山帰来と大黄が今でも含まれています。毒掃丸は当初、梅毒他、毒が原因になる諸病の薬として、香川解毒剤等の伝統処方をもとに開発されたようです。その後、処方の改良を経て、便秘と便秘に伴う諸症状に効く薬となり、今に至ります。   山帰来と大黄についてですが、この2つの生薬は、正しく使うことで優れた効果をあらわします。元来、大黄は大腸の働きを良くして便を出す際立った効果があり、山帰来は排膿解毒作用があるので、これらを組み合わせることで、ただ便秘を改善するだけではなく、便秘に伴う吹出物・肌あれを抑える効果が期待できるのです。まず、山帰来に本来期待するべきだったことは、このような活用方法だと思います。大黄については、漢方の世界では今も様々な使われ方をしている、主要な生薬の1つです。しかし、毒掃丸の処方において大黄に期待することは、やはり、効能通り便秘を改善することにより、「快食快便」の毎日を取り戻す手助けをしてもらうことでしょう。     ^^^^^^^^^^^^^   以上、デトックスについて、医薬の歴史にその系譜をたどってみました。人類はデトックスの願いを抱き続けてきたことがわかります。健康への人々の願いは、いつの時代も共通なのですね。   前編目次(クリックで記事に飛びます)  

    便秘と「デトックス」① デトックスを理解する

    1.世の中のほとんどの毒に対して、巷でいうデトックスは無力です 2.腸内環境を整えることや、便秘をしないようにすることで、一部の毒から身を守ることができます ① 腸内環境を整えて、大腸のバリアを維持しましょう ② 悪玉菌を減らして、体内に吸収される有害物質を減らしましょう ③ 水をしっかり飲んで、新陳代謝を維持しましょう ④ 有酸素運動は、便秘を改善し、発汗機能や解毒機能にも好影響   (最終更新日:2022年4月26日)   写真説明: タイトル文字の後ろにある道具は、当社に残る昔の「薬研(やげん)」です。この道具は、生薬原料をすりつぶして粉末状にするために用いました。   注1:この段落の参考文献 石坂哲夫:くすりの歴史 日本評論社 1979 年 p.9~51 注2:「汗吐下」の三法は張子和(1156?-1228)により『儒門事親』で提唱された。この段落の参考文献 山脇悌二郎:近世日本の医薬文化 ミイラ・アヘン・コーヒー 平凡社 1995年 p.229 注3:長沢元夫:薬徴における吉益東洞の論理 薬史學雑誌 Vo1.10, No.1., 2. 1975年 注4:山脇悌二郎 前掲書   p.8~12 注5:鈴木隆雄:骨からみた日本人 古病理学が語る歴史 講談社学術文庫版 2010年 p.234 注6:山脇悌二郎 前掲書 p.233 注7 山脇悌二郎 前掲書 p.229 注8 富士川游:日本疾病史 平凡社 1969年 注9 香川解毒剤(ががわげどくざい)は、香川修庵由来の処方で、梅毒一般、諸皮膚疾患や淋病などに良いとされる。山帰・木通・茯苓・川芎・忍冬・甘草・大黄からなる。矢藪道明:臨床応用漢方處方解説 創元社 1981年 p.645   ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸毒掃丸整腸薬のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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  • 今回は、便秘と「デトックス」について、便秘薬メーカーの視点から考察と提案をしてみたいと思います。今の日本で「体から毒を出すことを指す言葉は何ですか?」と問えば、みなさん「デトックス」と答えるでしょう。20世紀後半にアメリカで広まったこの言葉は、2005年頃に日本にも広まり、今やすっかり定着したようです。デトックスは広辞苑には2018年に初めて登場し、次のように説明されています。  
    デトックス【detox】体にたまった毒素や老廃物を排出すること。解毒。健康法などでいう。   「広辞苑」第7版 新村 出編 岩波書店 2018年
      また、デトックスの元祖、英語圏の辞書にも、似たような説明がされています。  
    detox   1. the process of removing harmful substances from your body by only eating and drinking particular things  以下略(筆者訳:デトックス 特定のものを食べたり飲んだりするだけで、体から有害物質を取り除くプロセスのこと)   Diana Lea ed. Oxford Advanced Learner’s Dictionary of Current English, Oxford University Press,  2020
      デトックスとは、このように、健康のために体から毒を除去することを言います。しかしながら、この言葉は医学用語ではなく、また法的な定義もありません。そのため漠然としたイメージだけが先行し、まともな根拠もなくデトックスをうたう健康食品や健康器具の広告が後を絶たず、この言葉自体がやや胡散臭いイメージを帯びてしまっているように思います。便秘薬も、便を出すという効能からデトックスのイメージと結びつきやすいので(商品名も毒掃丸ですから…)、私たちもこの状況とまったく関係がないとは言えません。「便秘薬を飲むと、デトックスになるんでしょ?」と聞かれて答えづらい思いをすることも結構あります。   そこで、この記事では、「デトックスを理解する」と題して、デトックスを最初に敢えて冷めた目で考察してみたいと思います。その後で、今より健康になりたい皆様のために、私たちなりに、毒から体を守るために何をするべきか、提案をしてみたいと思います。    

    1.世の中のほとんどの毒に対して、巷でいうデトックスは無力です

        毒とは、生体に悪い影響を引き起こす物質のことです(生物由来の物質も含みます)。口から入るものもあれば、目や皮膚から入ってくるものもあります。それら毒性のある物質の範囲は、デトックスという言葉から漠然とイメージする「毒」と比べ、驚くほど広いです。   毒の範囲の広さを体感するために、化学物質の安全対策に関する我が国の法体系をみてみましょう。毒性をもつ化学物質から私たちの身体と生活を守ってくれる法律は、実はたくさんあります。   毒劇法労働安全衛生法農薬取締法食品衛生法医薬品医療機器法家庭用品規制法建築基準法化学物質審査規制法土壌汚染対策法水質汚濁防止法大気汚染防止法廃棄物処理法   以上の法律があり、それぞれが、人体への毒になる膨大な量の化合物について、定量的に客観評価し、物質の急性毒性、慢性毒性、発がん性、催奇性、環境毒性などの見地から、専門的知見に基づいてリストを作り、社会活動を規制しています注1。   毒といっても、例えばダイオキシン・ベンゼン・重金属といった化学物質を、社会として活用しながら生活者の身を守るためには、法律・科学技術・医療の総力を挙げて対処する必要があるのです。個人がサプリによるデトックスで自衛できるものではないということです。それよりも、特定の物質への暴露が増えないよう、多彩な食材を食べるなどの工夫の方が有効でしょう。もちろん便秘薬もこれらの化学物質の解毒には何の効能も認められていません。   続いて、もう少し身近な食中毒についても見てみましょう。食中毒とは、人体の毒となる物を食べてしまうことにより、健康を害してしまうことです(ちなみに中毒の語源は「毒にあた)る」です)。食中毒の原因となるものは、法的にみるとかなり広く、細菌、ウイルス、自然毒、化学物質、寄生虫などが含まれています。関連する法律は、食品衛生法と、コロナ禍で一躍有名になった感染症法です。食中毒の原因の代表例としては、ウイルスではノロウイルス、菌ではO157、自然毒ではフグ、化学物質では魚に含まれるヒスタミン、寄生虫ではアニキサスが挙げられます。指定感染症とされているものとしては、コレラ菌や赤痢菌があります。とても怖い名前ばかりに見えます。皆さまもご存じのものが多いのではないでしょうか。   食中毒から身を守る方法は、「つけない」「ふやさない」「やっつける」で、これは食中毒予防の三原則と呼ばれています注2。ちなみに3つ目の「やっつける」は、十分に加熱することなどであり、デトックスサプリを服用することではありません。また、当然ながら便秘薬も食中毒への効能は認められていません。   ざっと俯瞰すると、この世界にある実際の毒のほとんどは、巷でいわれているデトックスと次元が違うところがあるようです。デトックスに医学的・法的な定義がない理由や、多くのお医者様や行政が冷淡な理由も、察することができる気がします。結局、多彩な食材を用いたバランスの取れた食事を心がけることと、衛生対策をきちんと行うことが、最も効果的かつ経済的な「毒」対策なのではないでしょうか。

    2.腸内環境を整えることや、便秘をしないようにすることで、一部の毒から身を守ることができます

      一方で、デトックスに良いイメージを持っている方は、恐らく前項のような本来の解毒というよりも、「今より健康になる」ことを求めているのだと思います。そうした思いに答えるために、この項では、便秘薬メーカーの視点から、毒から体を守るために私たちにできることを4つ挙げておきたいと思います。これらをデトックスと呼ぶかどうかのご判断は、皆様にゆだねたいと思います。  

    ① 腸内環境を整えて、大腸のバリアを維持しましょう

      大腸には、粘液質のバリアがあり、有害な細菌から人体を守ってくれているのをご存じでしょうか。もしこのバリアが破綻すると、体内に腸内細菌が侵入し(バクテリアルトランスロケーション)、ひどい場合は敗血症や全身性の炎症を引き起こしてしまいます。この大切なバリアを維持するために、腸内環境を整えることが大切であることが近年わかってきました。   口に入った食べ物は、まず胃や小腸でドロドロに消化され、栄養素が吸収され、大腸に運ばれます。大腸では、主に水分が吸収され、残ったものから便を作るのですが、その大腸には、100兆個ともいわれる大量の腸内細菌が生息しています。菌には、体に有益なもの(善玉菌)も多くいますが、有害物質を作り出すもの(悪玉菌)もいますし、食中毒を起こすような病原菌が食べ物に付着してやってくることもあります。粘液質の大腸のバリアは、腸の他の免疫細胞と力を合わせて有害な菌が大腸に直接触れないように守ってくれているのです。この粘液層は、腸内細菌の種類が減ってくると(腸内フローラの乱れ)、粘液が減ってしまったりして機能が低下し、腸内の炎症を引き起こすなどの異常がおこると考えられています注3。   腸活整腸薬注4の服用で腸内環境を良くし、良好な腸内フローラを保つことが大切です。  

    ② 悪玉菌を減らして、体内に吸収される有害物質を減らしましょう

      大腸の中で、腸内細菌たちは、小腸で消化吸収しきれなかった食べ物や食物繊維を分解して生きています。善玉菌たちは、食物繊維やオリコ糖を分解し、人体に有益な物質を多く残してくれます。その一方で、悪玉菌は肉由来のアミノ酸やコレステロールなどを分解して、人体に有害な物質を多く残します。悪玉菌が作る有害な物質の中には、アンモニア、スカトール、インドールなど強い悪臭のもとになる物質が含まれており、便のいやな臭いの元でもあります。   こうした有害物質は、便として体外に排出されもしますが、一部は大腸から水と一緒に吸収されてしまい、体内に入ってしまうのです。大腸から血液に移行した物質は全て、全身を循環する前に門脈(腸から肝臓につながる血管)を通って肝臓に運ばれるので、主な有害物質はすぐに肝臓で分解されることになりますが、もし肝臓が弱っていると、有害物質が全身に運ばれてしまいます(健康な人の場合、最終的には腎臓から排出されます)。疲労臭と呼ばれるアンモニア臭い体臭や、便秘の人の臭い息などは、腸から血中に溶け込んだ有害物質が原因だと考えられています。   腸内フローラが悪玉菌優位になると、そうした有害物質の産出量が増えてきます。また、悪玉菌は腸の働きも悪くするので、便秘がちになり、便の滞留時間が増えることで、大腸と有害物質が接触している時間も長くなります。腸活整腸薬注4の服用で腸内環境を良くし、良好な腸内フローラを保つことが大切です。また、便秘になった場合は、便秘薬を適切に活用することもふくめ、便秘解消おすすめのセルフケアの方法はこちら)を心がけていただきたいと思います。  

    ③ 水をしっかり飲んで、新陳代謝を維持しましょう

      また、毒素の排泄のために大切なのは、しっかりと水を飲むことです。体内に入った有害物質や、体中で起こる代謝で発生した老廃物は、肝臓での分解などを経たうえで、主に尿や便から排出されます。水に溶ける物質は、腎臓から尿として排出され、脂に溶ける物質(脂溶性)は、肝臓経由で胆汁として排出されていきます。その排泄過程をスムーズに行うには、常に水が必要なのです。例えば、尿はほとんどが水ですし、便も実は6割から7割(快便の場合)が水分でできています。   関連リンク:ブログ記事「うんちと便秘」   人間が1日に必要とする水分は、普通の生活をしている場合、およそ2.5リットルとされています。食べ物から摂る分以外に、飲み物として1.2リットルの水を飲む必要があります注5。体内の水分が不足した場合、尿と便の出が滞ってしまいます。若いうちは、尿の量が少なくても尿を濃くすることで毒素がちゃんと排出できますが、高齢になってくると、腎機能の衰えにより、毒素の排出のためにより多くの水が必要になりますから、注意が必要です。便についても水は大切で、飲料摂取が500cc以下だと便秘になりやすいことと、便秘の人が脱水傾向にある場合に、水分を多くとると便秘が改善することを示すエビデンスがあります注6   そもそも、体内の水が不足すると、熱中症、脳梗塞、心筋梗塞など命に関わる健康障害につながります。腎臓病などで医師から水分摂取量を制限されている場合は別ですが、目安とされている1日1.2リットルを目標に、しっかりとこまめに水分を摂って、体を守っていきましょう!   関連リンク:ブログ記事「便秘によい飲み物」  

    ④ 有酸素運動は、便秘を改善し、発汗機能や解毒機能にも好影響

      運動は、糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、ロコモティブシンドローム、認知症など様々な疾患のリスクを減らすことがわかっていますが、私たち便秘薬メーカーの視点からみても、しっかりと運動をすることは、お勧めです。運動は、次のメカニズムで便秘を改善してくれるのです。   (1)運動による刺激が腸管運動を促進し、大腸の内容物が直腸にむけて移動しやすくなる。 (2)運動によりリラックスでき、自律神経のバランスが改善し、日々の腸管運動のリズムを整う。   特にウオーキングやジョギングなどの有酸素運動が便秘を改善するというエビデンスがいくつもあります注7。便秘が改善することで、便が大腸に滞留している時間が短くなり、腸内での有害物質の発生を抑えることが期待できます。   また、運動をすると汗をかきますが、汗は体内の老廃物や毒素を出してくれます。汗の役割は、第一には体温の調節であり、汗が排出してくれる毒素の量はわずかではありますが、発汗ですっきりした経験がある人は多いはずです。汗をかく能力は年とともに自然に衰えてしまうのですが、持久運動トレーニングで日ごろから汗をかくこによって、70代になっても若者並みの発汗機能を維持できるという報告があります注8。また、適度な有酸素運動は、健康な人が、毒素の分解や排出をになう腎臓や肝臓の機能を維持するためにも大切です。私たちは、健康増進と便秘改善のために、1回30分以上の有酸素運動を週2回以上行うことを推奨しています。種目としては、ウオーキング、ジョギング、ヨガやエアロビクスなどを日課にしてみましょう。もちろん、運動で汗をかけば水分が失われますので、水分補給を忘れないようにしましょう!   関連リンク:ブログ記事「便秘と運動」   ^^^^^^^^^^^^^ 以上、デトックスについて考察と提案を書いてみました。 次回は、「便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」では、江戸時代の医学思想と便秘薬の歴史に、デトックス的思考の源流を見出してみたいと思っています。   後編目次(クリックで記事に飛びます)   便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸 ■世界に見られる下剤によるデトックスの発想 ■デトックスを連想させる江戸時代の「万病一毒説」 ■江戸時代の長崎貿易で大量に輸入されていた、2大「解毒」生薬 ■デトックスの系譜に何を見るか ■毒掃丸のルーツ   (最終更新日:2022年5月22日)   注1:法律の羅列は、次のサイトを参考にしました。独立行政法人製品評価技術基盤機構 https://www.nite.go.jp/chem/hajimete/lawquery.html 2021年7月13日アクセス 注2:食中毒については、次のサイトを参考にしました。厚生労働省 食中毒|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 2021年7月14日アクセス 注3:大腸のバリア機能についての参考文献:本田 賢也:  腸内細菌と腸管, 領域融合レビュー, 2, e011 (2013) 注4:整腸薬は、腸内細菌のうち善玉菌と呼ばれる体によい菌や、食べ物の消化に必要な消化酵素の補充を行うことで、腸の調子を整える薬です。詳しくは「便秘解消を目指して ~便秘のセルフケア~」の回をご覧ください。注5:必要な水分量については、次のサイトを参考にしました。厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動  2022年3月26日アクセス  注6:吉良いずみ 便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー, 日本看護技術学会誌 12(2), 33-42, 2013 注7:参考文献:高野 正太,   慢性便秘症に対する食事療法、運動療法,、理学療法,  日本大腸肛門病会誌 第72巻10号  621-627,2019   注8:井上芳光ほか, 運動トレーニングによる高齢者の発汗機能改善特性とその性差, 科学研究費助成事業 研究成果報告書, 2019   最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです!ひとこと 毒掃丸毒掃丸整腸薬のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)

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