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便秘と「デトックス」① デトックスを理解する

2021.07.15
便秘と「デトックス」①

今回は、便秘と「デトックス」について、便秘薬メーカーの視点から考察と提案をしてみたいと思います。今の日本で「体から毒を出すことを指す言葉は何ですか?」と問えば、みなさん「デトックス」と答えるでしょう。20世紀後半にアメリカで広まったこの言葉は、2005年頃に日本にも広まり、今やすっかり定着したようです。デトックスは広辞苑には2018年に初めて登場し、次のように説明されています。

 

デトックス【detox】体にたまった毒素や老廃物を排出すること。解毒。健康法などでいう。

 

「広辞苑」第7版 新村 出編 岩波書店 2018年

 

また、デトックスの元祖、英語圏の辞書にも、似たような説明がされています。

 

detox   1. the process of removing harmful substances from your body by only eating and drinking particular things  以下略(筆者訳:デトックス 特定のものを食べたり飲んだりするだけで、体から有害物質を取り除くプロセスのこと)

 

Diana Lea ed. Oxford Advanced Learner’s Dictionary of Current English, Oxford University Press,  2020

 

デトックスとは、このように、健康のために体から毒を除去することを言います。しかしながら、この言葉は医学用語ではなく、また法的な定義もありません。そのため漠然としたイメージだけが先行し、まともな根拠もなくデトックスをうたう健康食品や健康器具の広告が後を絶たず、この言葉自体がやや胡散臭いイメージを帯びてしまっているように思います。便秘薬も、便を出すという効能からデトックスのイメージと結びつきやすいので(商品名も毒掃丸ですから…)、私たちもこの状況とまったく関係がないとは言えません。「便秘薬を飲むと、デトックスになるんでしょ?」と聞かれて答えづらい思いをすることも結構あります。

 

そこで、この記事では、「デトックスを理解する」と題して、デトックスを最初に敢えて冷めた目で考察してみたいと思います。その後で、今より健康になりたい皆様のために、私たちなりに、毒から体を守るために何をするべきか、提案をしてみたいと思います。

 

 

1.世の中のほとんどの毒に対して、巷でいうデトックスは無力です

 

 

毒とは、生体に悪い影響を引き起こす物質のことです(生物由来の物質も含みます)。口から入るものもあれば、目や皮膚から入ってくるものもあります。それら毒性のある物質の範囲は、デトックスという言葉から漠然とイメージする「毒」と比べ、驚くほど広いです。

 

毒の範囲の広さを体感するために、化学物質の安全対策に関する我が国の法体系をみてみましょう。毒性をもつ化学物質から私たちの身体と生活を守ってくれる法律は、実はたくさんあります。

 

毒劇法労働安全衛生法農薬取締法食品衛生法医薬品医療機器法家庭用品規制法建築基準法化学物質審査規制法土壌汚染対策法水質汚濁防止法大気汚染防止法廃棄物処理法

 

以上の法律があり、それぞれが、人体への毒になる膨大な量の化合物について、定量的に客観評価し、物質の急性毒性、慢性毒性、発がん性、催奇性、環境毒性などの見地から、専門的知見に基づいてリストを作り、社会活動を規制しています注1

 

毒といっても、例えばダイオキシン・ベンゼン・重金属といった化学物質を、社会として活用しながら生活者の身を守るためには、法律・科学技術・医療の総力を挙げて対処する必要があるのです。個人がサプリによるデトックスで自衛できるものではないということです。それよりも、特定の物質への暴露が増えないよう、多彩な食材を食べるなどの工夫の方が有効でしょう。もちろん便秘薬もこれらの化学物質の解毒には何の効能も認められていません。

 

続いて、もう少し身近な食中毒についても見てみましょう。食中毒とは、人体の毒となる物を食べてしまうことにより、健康を害してしまうことです(ちなみに中毒の語源は「毒にあた)る」です)。食中毒の原因となるものは、法的にみるとかなり広く、細菌、ウイルス、自然毒、化学物質、寄生虫などが含まれています。関連する法律は、食品衛生法と、コロナ禍で一躍有名になった感染症法です。食中毒の原因の代表例としては、ウイルスではノロウイルス、菌ではO157、自然毒ではフグ、化学物質では魚に含まれるヒスタミン、寄生虫ではアニキサスが挙げられます。指定感染症とされているものとしては、コレラ菌や赤痢菌があります。とても怖い名前ばかりに見えます。皆さまもご存じのものが多いのではないでしょうか。

 

食中毒から身を守る方法は、「つけない」「ふやさない」「やっつける」で、これは食中毒予防の三原則と呼ばれています注2。ちなみに3つ目の「やっつける」は、十分に加熱することなどであり、デトックスサプリを服用することではありません。また、当然ながら便秘薬も食中毒への効能は認められていません。

 

ざっと俯瞰すると、この世界にある実際の毒のほとんどは、巷でいわれているデトックスと次元が違うところがあるようです。デトックスに医学的・法的な定義がない理由や、多くのお医者様や行政が冷淡な理由も、察することができる気がします。結局、多彩な食材を用いたバランスの取れた食事を心がけることと、衛生対策をきちんと行うことが、最も効果的かつ経済的な「毒」対策なのではないでしょうか。

2.腸内環境を整えることや、便秘をしないようにすることで、一部の毒から身を守ることができます

 

一方で、デトックスに良いイメージを持っている方は、恐らく前項のような本来の解毒というよりも、「今より健康になる」ことを求めているのだと思います。そうした思いに答えるために、この項では、便秘薬メーカーの視点から、毒から体を守るために私たちにできることを4つ挙げておきたいと思います。これらをデトックスと呼ぶかどうかのご判断は、皆様にゆだねたいと思います。

 

① 腸内環境を整えて、大腸のバリアを維持しましょう

 

大腸には、粘液質のバリアがあり、有害な細菌から人体を守ってくれているのをご存じでしょうか。もしこのバリアが破綻すると、体内に腸内細菌が侵入し(バクテリアルトランスロケーション)、ひどい場合は敗血症や全身性の炎症を引き起こしてしまいます。この大切なバリアを維持するために、腸内環境を整えることが大切であることが近年わかってきました。

 

口に入った食べ物は、まず胃や小腸でドロドロに消化され、栄養素が吸収され、大腸に運ばれます。大腸では、主に水分が吸収され、残ったものから便を作るのですが、その大腸には、100兆個ともいわれる大量の腸内細菌が生息しています。菌には、体に有益なもの(善玉菌)も多くいますが、有害物質を作り出すもの(悪玉菌)もいますし、食中毒を起こすような病原菌が食べ物に付着してやってくることもあります。粘液質の大腸のバリアは、腸の他の免疫細胞と力を合わせて有害な菌が大腸に直接触れないように守ってくれているのです。この粘液層は、腸内細菌の種類が減ってくると(腸内フローラの乱れ)、粘液が減ってしまったりして機能が低下し、腸内の炎症を引き起こすなどの異常がおこると考えられています注3

 

腸活整腸薬注4の服用で腸内環境を良くし、良好な腸内フローラを保つことが大切です。

 

② 悪玉菌を減らして、体内に吸収される有害物質を減らしましょう

 

大腸の中で、腸内細菌たちは、小腸で消化吸収しきれなかった食べ物や食物繊維を分解して生きています。善玉菌たちは、食物繊維やオリコ糖を分解し、人体に有益な物質を多く残してくれます。その一方で、悪玉菌は肉由来のアミノ酸やコレステロールなどを分解して、人体に有害な物質を多く残します。悪玉菌が作る有害な物質の中には、アンモニア、スカトール、インドールなど強い悪臭のもとになる物質が含まれており、便のいやな臭いの元でもあります。

 

こうした有害物質は、便として体外に排出されもしますが、一部は大腸から水と一緒に吸収されてしまい、体内に入ってしまうのです。大腸から血液に移行した物質は全て、全身を循環する前に門脈(腸から肝臓につながる血管)を通って肝臓に運ばれるので、主な有害物質はすぐに肝臓で分解されることになりますが、もし肝臓が弱っていると、有害物質が全身に運ばれてしまいます(健康な人の場合、最終的には腎臓から排出されます)。疲労臭と呼ばれるアンモニア臭い体臭や、便秘の人の臭い息などは、腸から血中に溶け込んだ有害物質が原因だと考えられています。

 

腸内フローラが悪玉菌優位になると、そうした有害物質の産出量が増えてきます。また、悪玉菌は腸の働きも悪くするので、便秘がちになり、便の滞留時間が増えることで、大腸と有害物質が接触している時間も長くなります。腸活整腸薬注4の服用で腸内環境を良くし、良好な腸内フローラを保つことが大切です。また、便秘になった場合は、便秘薬を適切に活用することもふくめ、便秘解消おすすめのセルフケアの方法はこちら)を心がけていただきたいと思います。

 

③ 水をしっかり飲んで、新陳代謝を維持しましょう

 

また、毒素の排泄のために大切なのは、しっかりと水を飲むことです。体内に入った有害物質や、体中で起こる代謝で発生した老廃物は、肝臓での分解などを経たうえで、主に尿や便から排出されます。水に溶ける物質は、腎臓から尿として排出され、脂に溶ける物質(脂溶性)は、肝臓経由で胆汁として排出されていきます。その排泄過程をスムーズに行うには、常に水が必要なのです。例えば、尿はほとんどが水ですし、便も実は6割から7割(快便の場合)が水分でできています。

 

関連リンク:ブログ記事「うんちと便秘

 

人間が1日に必要とする水分は、普通の生活をしている場合、およそ2.5リットルとされています。食べ物から摂る分以外に、飲み物として1.2リットルの水を飲む必要があります注5。体内の水分が不足した場合、尿と便の出が滞ってしまいます。若いうちは、尿の量が少なくても尿を濃くすることで毒素がちゃんと排出できますが、高齢になってくると、腎機能の衰えにより、毒素の排出のためにより多くの水が必要になりますから、注意が必要です。便についても水は大切で、飲料摂取が500cc以下だと便秘になりやすいことと、便秘の人が脱水傾向にある場合に、水分を多くとると便秘が改善することを示すエビデンスがあります注6

 

そもそも、体内の水が不足すると、熱中症、脳梗塞、心筋梗塞など命に関わる健康障害につながります。腎臓病などで医師から水分摂取量を制限されている場合は別ですが、目安とされている1日1.2リットルを目標に、しっかりとこまめに水分を摂って、体を守っていきましょう!

 

関連リンク:ブログ記事「便秘によい飲み物

 

④ 有酸素運動は、便秘を改善し、発汗機能や解毒機能にも好影響

 

運動は、糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、ロコモティブシンドローム、認知症など様々な疾患のリスクを減らすことがわかっていますが、私たち便秘薬メーカーの視点からみても、しっかりと運動をすることは、お勧めです。運動は、次のメカニズムで便秘を改善してくれるのです。

 

(1)運動による刺激が腸管運動を促進し、大腸の内容物が直腸にむけて移動しやすくなる。

(2)運動によりリラックスでき、自律神経のバランスが改善し、日々の腸管運動のリズムを整う。

 

特にウオーキングやジョギングなどの有酸素運動が便秘を改善するというエビデンスがいくつもあります注7。便秘が改善することで、便が大腸に滞留している時間が短くなり、腸内での有害物質の発生を抑えることが期待できます。

 

また、運動をすると汗をかきますが、汗は体内の老廃物や毒素を出してくれます。汗の役割は、第一には体温の調節であり、汗が排出してくれる毒素の量はわずかではありますが、発汗ですっきりした経験がある人は多いはずです。汗をかく能力は年とともに自然に衰えてしまうのですが、持久運動トレーニングで日ごろから汗をかくこによって、70代になっても若者並みの発汗機能を維持できるという報告があります注8。また、適度な有酸素運動は、健康な人が、毒素の分解や排出をになう腎臓や肝臓の機能を維持するためにも大切です。私たちは、健康増進と便秘改善のために、1回30分以上の有酸素運動を週2回以上行うことを推奨しています。種目としては、ウオーキング、ジョギング、ヨガやエアロビクスなどを日課にしてみましょう。もちろん、運動で汗をかけば水分が失われますので、水分補給を忘れないようにしましょう!

 

関連リンク:ブログ記事「便秘と運動

 

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以上、デトックスについて考察と提案を書いてみました。

次回は、「便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」では、江戸時代の医学思想と便秘薬の歴史に、デトックス的思考の源流を見出してみたいと思っています。

 

後編目次(クリックで記事に飛びます)

 

便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸

■世界に見られる下剤によるデトックスの発想

■デトックスを連想させる江戸時代の「万病一毒説」

■江戸時代の長崎貿易で大量に輸入されていた、2大「解毒」生薬

■デトックスの系譜に何を見るか

■毒掃丸のルーツ

 

(最終更新日:2022年5月22日)

 

注1:法律の羅列は、次のサイトを参考にしました。独立行政法人製品評価技術基盤機構 https://www.nite.go.jp/chem/hajimete/lawquery.html 2021年7月13日アクセス 注2:食中毒については、次のサイトを参考にしました。厚生労働省 食中毒|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 2021年7月14日アクセス 注3:大腸のバリア機能についての参考文献:本田 賢也:  腸内細菌と腸管, 領域融合レビュー, 2, e011 (2013) 注4:整腸薬は、腸内細菌のうち善玉菌と呼ばれる体によい菌や、食べ物の消化に必要な消化酵素の補充を行うことで、腸の調子を整える薬です。詳しくは「便秘解消を目指して ~便秘のセルフケア~」の回をご覧ください。注5:必要な水分量については、次のサイトを参考にしました。厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動  2022年3月26日アクセス  注6:吉良いずみ 便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー, 日本看護技術学会誌 12(2), 33-42, 2013 注7:参考文献:高野 正太,   慢性便秘症に対する食事療法、運動療法,、理学療法,  日本大腸肛門病会誌 第72巻10号  621-627,2019   注8:井上芳光ほか, 運動トレーニングによる高齢者の発汗機能改善特性とその性差, 科学研究費助成事業 研究成果報告書, 2019

 

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