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便秘と便意

2022.02.23
便秘と便意

便秘に悩む人にとって、ようやくやってきた便意を上手にとらえて排便できたときの喜びは、格別です。便意とは、便が直腸に溜まったときに感じる内臓感覚であり、体が脳(あなたの意識)に対して、排便の時がきたことを知らせるシグナルです。人の体は本来、便意が来た時にトイレに行くことで、快便が出るようにできています。今回は、そんな排便の仕組みを概観しながら、便意の大切さについてお伝えしていきます。また、便秘と便意の関係や、腸と脳が関係しているために起きているかもしれない便意、そして便意を促すコツについても述べたいと思います。

 

■排便のメカニズムと、便意

 

(1)朝のできごと

 

口から入った食べ物は、ご存知のように、胃と小腸で栄養分が消化吸収され、残ったものが大腸によって肛門の方に運ばれて、最後に便になります(便自体のことについてはブログ記事「うんちと便秘」もどうぞ)。食事で食べたものが便になって排出されるまでの時間は、およそ24~72時間と言われており、その中で、最後の大腸の通過には15から20時間(便秘でなければ)を要します。

 

大腸は、実は寝ている間はあまり動きません。深夜便意を催すことが少ないのはそのためです。そして、朝起きた時に、一日の中でも最大級の勢いで動きを再開します注1。この動きは無意識に起きる反射的なもので、姿勢結腸反射、あるいは起立大腸反射とよばれています。排便の準備は、便意を感じる何時間か前、朝目が覚めた時から始まっています。

 

(2)朝食で大蠕動が引き起こされる

 

それでも、起床時の腸の動きが排便の直接の引き金になる人は多くありません。旅行でも合宿でも、トレイが混みあうのは朝食後というのが相場です。それは、「胃結腸反射」(いけっちょうはんしゃ)という体の仕組みがあって、これが皆に一斉に起こっているからです。私たちは、食事で胃に食べ物が入ると、その刺激が神経を通して伝わることで、数分以内に大腸(結腸)が動き出し、続いて強い蠕動運動=「大蠕動」が起こるように出来ています注2。これが胃結腸反射です。このときに起こる大蠕動で、大腸の内容物が直腸(大腸の一番下の肛門に近い部分)に入り、朝食後の便意をもたらします。被験者を絶食させると、大腸の活発な動きが実際に起きなかったという報告もありますし注3、1日3食のうちでも朝食の後の蠕動運動が一番強かったこと注1も合わせて考えると、朝食は、面倒でも抜かずに毎朝しっかり食べることが、良い便意を得る秘訣と言えるでしょう。

 

 

(3)直腸と、便意

 

大腸内に溜まった便が直腸に送られてくると、それまで空っぽだった直腸は、やってきた便に押されて膨らみ、直腸壁には圧力がかかります。この直腸壁への圧力が一定以上になると、信号が仙髄(背骨と骨盤をつなげる仙骨の中にある中枢神経)にある「排便中枢」という神経組織に伝わり、排便に向けた次の段階が始まります。直腸では、上の方がすぼまり、下の方が緩む動きが起き、便が肛門の近くまで降りてきます。後述しますが肛門でも排便の準備がすすみます。そして、信号が大脳皮質の感覚野に届き、いよいよあなた自身が一種の内臓感覚として、あの「便意」を感じます。

 

感覚野に便意が伝わると、あなたは前頭前野(計画を立てる脳)でトイレにいくことを計画し始め、行動に移るはずです。高度な大脳のおかげで、落ちついて用を足せるトイレを探し、個室の扉を閉め、服をおろし、便器に腰掛けるなどの人間らしい行動をとることができます。そしてついにあなたは肛門を緩めます。

 

ここでのポイントは、脳が便意を感じている時には、直腸と肛門も排便体制にあることです。この機会を逃さないことが快便の秘訣です。

 

(4)排便時の肛門と、いきむ時の姿勢

 

ここで、肛門で起こる出来事に目を移しましょう。そもそも肛門は、普段は便が漏れないように、3重のバリアが講じられています。まず、普段、肛門は内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)と外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)という2段階の筋肉の働きで閉じられています。そして3つ目に、直腸と肛門は、寝ている姿勢や立っている姿勢では一直線にならず、便の圧力で肛門が開いたりしにくくできています。この角度のことを直腸肛門角といいます。日本のお城の門「桝形虎口」が2つの門と直角の動線で敵の侵攻を食い止めようとしている様を連想させます。排便時には、無意識の力と意思の力が合わさって、この3重のバリアが解かれます。

 

まず、直腸壁への圧が高まると、不随意筋(意識して動かせない筋肉)である内肛門括約筋がゆるみ、随意筋(意識して動かせる)である外肛門括約筋の力だけで、つまり大脳の意思による「我慢」だけで肛門を閉じるような状態に切り替わります。便意があるうちにトイレに到着し、2つ目の肛門バリアである外肛門括約筋を意思の力で緩める時、皆さんは同時に「いきむ」動作をします。ふつうは息を止め、腹圧を高め、直腸にある便を肛門から押し出します。これが排便です。

 

この時、前かがみの姿勢をとっていることが大切です。理想的な姿勢は、ロダンの「考える人」(写真)のような恰好です。この姿勢だと、肛門の3つ目のバリアである直腸肛門角が一直線に近づき、スムーズな排便が行われます。排便姿勢を改善させることで、便の量が有意に増加したという報告もありますので注4次に便意がやってきたら、いきむ時に意識的に「考える人」を真似てみてください。

 

 

 

このような一連の動作で排便を行い、直腸が空っぽになると直腸壁にかかる内圧が下がり、スッキリ感を得ることができます。しかし、せっかく体から便意としてシグナルが送られているにも関わらず排便を行わないでいると、やがてスッキリしないままに便意は収まり、排便反射も抑制されてしまいます。俗にいう便が「ひっこんでしまった」状態です。こうなるといきんでも便は出ず、再度便意が起こるのを待たなくてはなりません。とにもかくにも、便意がある間にトイレに行くことが大切です。そうすることで、無意識による①直腸での便の下降と ②肛門の不随意的な開きに加え、意思による ③肛門の随意的な開き、④いきみの腹圧、⑤適切な姿勢、の全てを合わせて、スムーズに便を出せるのです。

 

 

■便秘と便意

 

このように便意は、排便の時が来たことを教えてくれる体からのシグナルです。しかし、便秘で悩む人たちは、次の2つのような悩みを抱えていることが多いです。

・なかなか便意がこない

・便意が来ても、スッキリと排便できない

ここでは、このそれぞれの悩みについて、理由と対策を探っていきます注5

 

(1)なかなか便意がこない場合

 

便秘で悩む人には、なかなか便意がこない人が多いようです。慢性便秘症の条件を満たす人のうち、約6割の人が便意が普通より少ないと自覚しているという学術調査もあります注6。そうした、なかなか便意がこない便秘には、2つのタイプがあると考えられています。

 

・排便回数減少型の便秘

 

なかなか便意がこない場合で、排便の回数も少ない場合は、排便回数減少型の便秘かもしれません。このタイプの便秘の人は、文字通り排便の回数が減っていて、原因別に蠕動運動が弱かったりしておこる大腸通過遅延型(弛緩性便秘ともいいます)の便秘と、便のカサが足りない大腸通過正常型の便秘に分かれます。

 

関連リンク:ブログ記事「便秘の種類と原因

 

蠕動運動が弱まっている大腸通過遅延型の場合は、朝起きて一杯の水を飲む、朝食をしっかり摂る、規則正しい生活をおくる、運動をする、ストレスをためない、といった生活上の工夫が、腸を動かす助けになります。そして、毎日の排便リズムが整うように、便意を感じたらすぐにトイレに行くようにしましょう。こうした工夫だけでは便秘が改善しない時には、市販の便秘薬を活用するのも有効です。

 

便のカサが足りない大腸通過正常型の便秘の人は、食事の量や、食事の中に含まれる食物繊維が足りていないのかもしれません。ダイエット中にこうした便秘が起きることもあります。食物繊維は、体重を増やさずに便のカサを増す働きがありますので、このタイプの便秘の方は、食事にあと一品食物繊維豊富な副菜を足すなどの工夫をしてみてはいかがでしょうか。

 

関連リンク:ブログ記事「ダイエットと便秘」/「腸内環境と便秘 ② 発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用

 

・便意が感じにくくなっている

 

また、蠕動運動や食事の内容に問題がないのに、便意を感じる直腸のセンサーが鈍くなって便秘になっていることも考えられます。忙しかったりして便意を我慢することを繰り返すうちに、直腸の知覚が低下しているのかもしれません。自覚がある方は、今後はトイレを我慢しないようにしましょう。今溜まってしまっている便を出すためには、市販の便秘薬や、浣腸を活用することもよいかもしれません。このタイプの便秘は、トイレを我慢しがちな学童にもよく見られます。

 

関連リンク:ブログ記事「子供の便秘について

 

高齢者などでは、加齢で直腸の知覚が低下してくるとで、便が漏れるようになることもあります。このタイプの便秘は、排便困難型と呼ばれるカテゴリーに分類されます。直腸性便秘と呼ばれることもあります。

 

(2)便意があっても、スッキリと排便できない場合

 

便意があってもスッキリ排便ができないのも、つらいものです。出そうで出ない、こうした場合は、排便困難型の便秘が疑われます。便が硬すぎるか、排便機能自体に問題があるのかもしれません。

 

便が硬すぎるのは、(1)の中で取り上げた排便回数減少型の便秘と同じで、便が長く大腸内に留まりすぎていることが原因です。朝起きて一杯の水を飲む、朝食をしっかり摂る、規則正しい生活をおくる、運動をする、ストレスをためない、といった生活上の工夫が、腸が動くのを助けになります。市販の便秘薬を活用するのも有効です。また、水分摂取量が足りていない人は、水を積極的に飲むようにしましょう。あと、腹筋が弱っているなどの理由で、いきみの時の腹圧が弱くなっているとスッキリしません。腹筋を鍛えることも、便秘対策の1つです。

 

色々ためしても便意が感じられるようにならない・便が硬くないのに排便できない場合は、機能性排便障害の可能性があります。 排便に必要な、直腸や肛門の機能自体が損なわれている状態です。この場合には、専門的診療が必要ですので、お医者様に相談するようにしてください。

 

また、ストレスによって便秘や下痢をくりかえす過敏性腸症候群(IBS)や、直腸瘤などの器質性疾患(組織のかたちが変わってしまうような疾患)に伴う便秘については、本稿で触れられていません。これらについても気になる方はお医者様に相談してください。

 

◇◇◇

 

便秘対策に市販の便秘薬の力を借りる場合は、服用量を上手に調節してバナナ便がでるようにすると、腸に負担が少なくなります。強すぎる薬を漫然と使い続けないようにしましょう。

 

関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイトおすすめの服用方法複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム  複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます

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■腸脳相関と便意?~本とコーヒー~

 

近年、腸脳相関(ちょうのうそうかん)という言葉が使われることが多くなりました。これは、脳と腸管に存在する神経系と腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)が、自律神経系、内分泌系、免疫系を通じて互いに影響を及ぼし合っていることを言いあらわす言葉です。

 

便意に関しても、大脳からの信号が影響を与えているのではないかと考えたくなる不思議な現象がいくつかあります。胃結腸反射のような機械的な反射以外にも、腸の運動を促進するか、排便中枢に作用するかして便意を促す「もの」がいろいろあるようです。やや通俗的な話題ではありますが、この項では、そうしたものを2つご紹介します。

 

日本で良く言われる便意を促す「もの」とは、本の匂いです。古本屋や図書館の匂いで便意を催す人が一定数いるようです。これは本邦において長らく言われていることで、マスメディアやネット上においては「青木まりこ現象」という名前までついています。ちなみにこの言葉は、1985年に雑誌『本の雑誌』(本の雑誌社)で命名されてひろまったもので、青木まりこさんとは、書店で便意を催すことに同誌上で初めて言及した人物のお名前です。この現象は広く共感を集めているようで、定期的に話題に上がりますが、その機序は解明されていません。本の匂いが、気持ちの高ぶりや緊張感、そわそわした気分、ある種の条件反射といったものを引き起こし、これが便意につながっていると考えられますが、もしそうだとしたら、大脳から腸への作用といえそうです。

本の虫のイラスト(男性・触角なし)

欧米においては、本ではなく、コーヒーで便意が引き起こされる人が多いようです。こちらは日本での本の匂い以上にポピュラーなようで、ある程度まで学術研究もおこなわれています。1990年に英国で発表された論文によると、92人の人に事前調査をしたところ、約3割の人が「自分はコーヒーで便意を促される」と答えました。そして事前調査対象者のうち何人かに計測器を直腸から大腸まで挿入して実際にコーヒーを飲んでもらったところ、「便意を促させる」と答えた人たちの腸は飲んだ数分後から動き出し、「便意を促されない」と事前に答えた人たちの腸は動かなかったのです。普通のコーヒーでも、カフェイン抜きのコーヒーでも似た傾向を示しました注7。また、別の研究によれば、1杯のコーヒーが腸を動かす作用は、1000キロカロリーの食事をとったときの胃結腸反射に相当するといいます注8。なぜそんな作用が欧米の人々に(筆者の周りでは聞いたことがありません)起こるのか不思議ですね。機序はわかっていませんが、専門家は恐らく腸脳相関によるものだろうと考えているようです注9

コーヒーのイラスト「コーヒーメーカーとコーヒーカップ」

 

他にも、文化が違えば別の「もの」が便意をさそうのかもしれません。もし大脳の力で便意を呼べるのなら、修行を重ねることによって、実物がなくても、本の匂いやコーヒーの香りを想像するだけで腸を動かすことができるようになるかも…?と思ってしまいますね。

 

 

■便意と排便に関するヒント

 

最後に、まとめに代えて本稿に登場した便意と排便に関するヒントを箇条書きにしておきます。皆様が毎日スッキリできることを祈っております!

1.朝食をしっかり食べる。

2.便意がきたらトイレを我慢しない。

3.排便時は、直腸と肛門が一直線に近くなるよう、考える人のポーズが良い。

4.ダイエットなどによる食物繊維不足に気をつける。

5.朝起きて一杯の水を飲む。水分が足りない人は水を積極的に飲む。

6.「いきみ」には腹筋力も大切。

番外:人によっては、特定の状況で、大脳からの刺激による便意を感じることが、あるかもしれない。

(最終更新日:2022年2月28日)

 

注1:  F Narducci et.al., Twenty four hour manometric recording of colonic motor activity in healthy man, Gut1987 Jan ; 28(1) : p17-25. 注2:  Jordan C. Malone, Physiology, Gastrocolic Reflex,  StatPearls [Internet], Last Update: May 9, 2021.(2022年2月22日アクセス)注3:  G Bassotti et. al., Colonic motor response to eating: a manometric investigation in proximal and distal portions of the viscus in man, Am J Gastroenterol. 1989 Feb ; 84(2) : p118-22. 注4, 槌野 正裕 ほか,  排便姿勢と直腸肛門角,排出量の関係  排便造影検査(Defecography)による研究, 理学療法学 2011 ;  Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会抄録集)注5: 本項の参考文献:日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年 注6:  H Ohkubo et al., Difference in Defecation Desire Between Patients With and Without Chronic Constipation: A Large-Scale Internet Survey, Clin Transl Gastroenterol. 2020 Sep ; 11(9 ): e00230.  注7:  S R Brown et. al.,  Effect of coffee on distal colon func. Gut. 1990 Apr ; 31(4) : p450-3. 注8:   S S Rao et. al., Is coffee a colonic stimulant?  Eur J Gastroenterol Hepatol. 1998 Feb ; 10(2) : p113-8.   注9:  Oregon Health and Science University 教授のDr. Robert MartindaleのThe New York Timesの取材に対するコメント。Alice Callahan, Why Does Coffee Make Me Poop? The New York Times,

 

写真:便意は、目に見えない体内から届くありがたいシグナルです。同じようにありがたく感じた、夜桜の合間に見える月の光の写真をタイトルに用いてみました。

 

とこと

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