生薬(しょうやく)や漢方の医薬品は、天然の植物・動物の薬効部位をそのまま活用した、自然の恵みを活かしたお薬です。市販されている便秘薬の中には、生薬を用いたものや漢方薬が多くあるので、身近に感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。私たちの毒掃丸も、生薬の便秘薬の一つです。今回は、そんな生薬と漢方の便秘薬について、それぞれが一体どのようなものなのか、違いや共通点をご説明したいと思います。そして、生薬の便秘薬の代表例として毒掃丸をやや詳しくご説明し、あわせて、ドラッグストアで買える漢方便秘薬の代表的な3つの処方についてもご紹介いたします。ぜひ便秘薬選びの参考にしてみてください。
毒掃丸って漢方でしょ?とよく言われますが、まず、毒掃丸は漢方薬ではありません。硬い理屈を言うのは避けたいのですが、違うのに「そうです」と名乗るわけにはいきませんので…。毒掃丸は、漢方薬ではなく、生薬の便秘薬です。生薬と漢方薬、何が違うかお分かりですか?
生薬とは、天然の植物・動物の薬効部位を使った薬のことです。植物の場合、葉・花・つぼみ・茎・樹皮・枝・根などの薬効部位を、乾燥させたり粉にしたりして、まるごと薬の原料とします。例えば、今の日本で最も多く使われている生薬は「カンゾウ(甘草)」ですが、これはマメ科の植物の根を用いています。1つの生薬が単体で薬として用いられることもあれば、複数の生薬を組み合わせたり、化学合成薬と組み合わせて使われたりします。漢方薬も、基本的に、生薬を組み合わせて作られます。こうして組み合わせて薬を作る場合には、個別の生薬は「原料」と位置づけられます。
生薬として用いられるような植物・動物の薬効部位は、多くの場合、何種類もの薬効成分を含んでいます。そして、生薬を複数ブレンドすることで、さらに多くの薬効成分を取り入れることができます。複数の生薬を組み合わせた医薬品は、調子の悪い箇所だけではなく、体全体の健康バランスを整えることも期待しているのです。
2021年に公示された最新の日本薬局方(にほんやっきょくほう:国が定めた医薬品の規格基準書)には、約200種類もの生薬が収載されていて注1、これらの生薬の中には、日本で見出されたものもありますが、大半は長い歴史の中で中国から伝わってきたものです。
一方で、漢方薬とは、中国伝来の医学を源流として日本で発展した「漢方医学」に基づいて処方される医薬品のみを指します。漢方薬とは、薬の処方の歴史的ルーツが関わる概念なのです。なお、処方とは薬の配合法のことです。漢方というと中国直輸入の処方のように見えますが、漢方医学は日本で独自の体系化を遂げてきたもので、中国の中医学に基づく中薬(そのように呼びます)とは処方が異なることが多いです。漢方薬は、多くの場合、複数の生薬を組み合わせて作りますので、この場合、生薬は漢方薬を構成する原料です。
漢方薬のルーツとなる中国の医学は、生薬の知識と同様に、古(いにしえ)の中国から、朝鮮半島経由や、直接の交流を通じて、日本に断続的に流入します。例えば、新羅との交流から、あるいは遣隋使や遣唐使を通じて…。これらの知識が、江戸時代以降になって、日本独自の漢方医学と漢方処方を生み出しました。長らく法的な定義も未整備で、市民がちゃんとした漢方処方のお薬を、現代同様に安心して買えるようになったのは、戦後になってからです注2。1950~70年頃から法的整備が進み、2022年現在では、ドラッグストアで買える一般用の医薬品としては294の処方が国により認められ、様々なメーカーにより販売されています。
生薬と漢方薬には、このように微妙な定義の違いがあります。生薬は素材を指し、漢方薬は特定の処方を指します。一方で双方ともに、中国文明の影響を受け、長い日本の歴史の中で成り立っていることと、自然の恵みを生かしていることは、共通しています。
私たちの毒掃丸は、6種類の植物性生薬を原料にして作られた生薬の便秘薬で、漢方医学の考えも取り込んでいますが、日本固有の処方で、漢方薬でもありません。ちなみに、毒掃丸以外でも、龍角散、太田胃散、救心、宇津救命丸といった有名な家庭薬は、生薬をメインにしたお薬であっても、どれも漢方薬ではありません。
関連リンク:「生薬の話① 生薬の魅力と歴史」/「生薬の話② 自然の力を医薬品に活かすために」
漢方薬の法整備が進むまで、自然な成分の便秘薬といえば、生薬を使った日本伝来の処方が中心でした。日本伝来の生薬の便秘薬は、基本的に、お通じを促す生薬と、痛みを緩和したり諸症状を改善する生薬が組み合わされています。当社の毒掃丸も、そうした便秘薬の1つです。
生薬の便秘薬・毒掃丸(正式には複方毒掃丸)には、選び抜かれた生薬が6種類含まれており、それぞれの作用が一つになって、便秘や便秘に伴う吹出物、肌あれなどの症状を改善します。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。毒掃丸の処方は、代表的な漢方便秘薬の処方である大黄甘草湯(後述)に含まれているダイオウ・カンゾウに、更に4つの生薬が加わったものです。
毒掃丸の発売は、明治20年代にさかのぼります。「体の毒を排出する」ことをコンセプトに開発されたお薬で、江戸時代中期の江州の名医・香川修徳伝来の「香川解毒剤」という処方を参考にして作られたようです。「香川解毒剤」は伝染病等の諸毒に用いられてきた薬ですが、当時は、便秘に効く生薬が毒出しにも使われていたのです(ブログ記事「便秘と「デトックス」②医薬の歴史にみるデトックスの系譜と、毒掃丸」参照)。その後、毒掃丸の処方は、医学の進歩に合わせて改良され、便秘に関連していない効能は外れます。現在配合されている6つの生薬のうち2つは、初期の毒掃丸には含まれていないものです。小腸の水分を増やすことで排便を促すエイジツと、胃腸の調子を整えるコウボクで、いずれも便秘・便秘にともなう諸症状を緩和することを期待して配合されています。
〇毒掃丸は、こんな人にお勧め
自然な成分の便秘薬が良い方、効き目を調節してちょうどよいお通じを目指したい方、生活改善をしながら薬を飲む量を減らしていきたい方、肌あれや腹部膨満などの便秘に伴う諸症状が気になる方注3
関連リンク:ブログ記事「便秘薬をのむ時に大切なこと」
〇複方毒掃丸 詳細
第2類医薬品
【効能・効果】便秘、便秘に伴う次の症状の緩和:吹出物、肌あれ、食欲不振(食欲減退)、腹部膨満、腸内異常醗酵、痔、のぼせ、頭重
成分等
関連リンク:「薬樹ホオノキの植樹」/複方毒掃丸ブランドサイト/おすすめの服用方法/複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム
漢方には、便秘に効く処方が数多くあります。医療用で販売されているものは10種類ほどありますし、漢方専門の薬局でも多くの処方が手に入ります。いずれも魅力的な処方なのですが、普通のドラッグストアで簡単に入手できるのはそのうちの5種類程度です。今回は、その中でも特に入手しやすい代表的な3つの処方をご紹介します。
〇漢方便秘薬は、こんな人におすすめ
自然な成分の便秘薬が良い方、自分の体格や体質に合った薬を探したい方(お店の薬剤師さんに相談してみましょう)、漢方の便秘薬をお探しの方、具体的に試したい漢方処方がある方
〇漢方便秘薬の選び方
漢方薬は、「便秘」といった病態だけでなく、体質に合わせて処方を選びます。漢方薬の箱の【効能・効果】の欄には、どのような体格や体質の人を対象としているのかが書かれている場合があるので、必ず読んでから選ぶようにしましょう。迷ったら、お店の薬剤師さんに相談してみてください。特に体格や体質に関する記述がない場合は、どなたでも使用できる処方です。
第2類医薬品。代表的な漢方便秘薬の処方で、体力に関わらず使用できるため広く販売されている、便秘に対する基本処方注4。
【効能・効果】 便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和
成分:毒掃丸とは、ダイオウとカンゾウ両方が共通しています。
第2類医薬品。コロコロした乾燥便が多い人や、高齢者に特に適した漢方便秘薬注4。体力が弱い人にもよい。麻子仁丸の名で販売されている場合もあるし、オイル入りであることを強調する販売名がついていることも。
【効能・効果】 体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状なものの次の諸症:便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和
成分:精油成分が多いマシニンを含んでいて、便の滑りをよくする点がポイントです。毒掃丸とは、コウボクとダイオウが共通しています。
第2類医薬品。いらいらを伴う症状がある人に注4。がっちりタイプの人に合ったお薬です。肥満に対する効果が報告されているため、肥満症の改善をうたって販売されている製品が多いです。
【効能・効果】体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症
成分:とても沢山の生薬を配合しています。毒掃丸とは、センキュウとダイオウとカンゾウが共通しています。
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なお、今回ご紹介した毒掃丸や漢方便秘薬は、生薬や漢方だからといって副作用がないわけではありません。毒掃丸と、今回ご紹介した3つの漢方処方は、いずれも他の便秘薬(瀉下薬・下剤)との併用はしてはいけないことになっています。また、いずれも授乳中は服用しないか、服用する場合は授乳を避ける必要があります。服用時は使用上の注意をよく読み、不明点はお店の薬剤師さんや、メーカーに問い合わせるようにしてください。
関連リンク:弊社のお問い合わせフォームと、お客様相談窓口
注1:日本薬局方に規定された生薬以外にも、日本薬局方外生薬規格があり、「日本薬局方外生薬規格2018」には83品目が収載されている。 注2:漢方薬の歴史は、株式会社ツムラのwebサイトが分かり易い。戦後の漢方の歴史については、復興 : 5.漢方の歴史 | 漢方について | ツムラ (tsumura.co.jp) を参考にした(2022年2月6日アクセス)。 注3:漢方便秘薬や、生薬以外の便秘薬と比べる観点から。毒掃丸のブランドサイトでは、ほかにも、はじめて便秘薬を試してみようと思っている方、強い便秘薬ではお腹が痛くなってしまう方、排便があるけど、残便感がありスッキリしない方、便秘気味で、便通が滞りやすい方、ガスは出るものの出そうで出ない方、にもおすすめしている。 注4:参考文献:日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年 p.78
(最終更新日:2022年10月9日)
写真説明:生薬の便秘薬や、漢方の便秘薬に多く使われている「ダイオウ(大黄)」です。
ひとこと
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