便秘と高血圧症が、よくない組み合わせであるということは、ご存知ですか? 両方の疾患をもつことで、長期的には寿命を縮めたり、健康でいられる期間を短くしてしまったりする可能性があります。今回は、この便秘と高血圧症の関係について解説し、対策についてもご説明したいと思います。高血圧によるダメージがすでに蓄積されているご高齢の方にはもちろんですが、若い人も、ご自身の健康寿命を延ばすために、ぜひ知っておいてほしいと思います。
目次
便秘とは、本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態をいいます。一方、高血圧とは血圧が高い状態のことで、これがずっと続く病気を高血圧症といいます。
便秘に悩む人の割合は、調べ方によって幅が大きいのですが、日本では、成人のおよそ2~3割が自分を便秘であると考えているという調査があります注1。高血圧の有病者は、2017年時点で成人人口の約4割である4300万人もいると推測されています注2。このスケール感から考えると、両方に悩んでいる人は相当いらっしゃるはずです。どちらも年をとるほどなる人が増えますから、ご高齢者になると、大半の方が両方抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
その便秘と高血圧症は、なぜ危険な組み合わせなのでしょうか?
便秘の人は、排便時に、強いいきみを何度もします。いきむ時には、息を止めながら腹圧を高めることにより、血圧は激しく乱高下して、その後しばらく高まるのです(この時の一連の体の変化をバルサルバ効果といいます)。この時、血管に強い負荷がかかり、長年の高血圧で血管がもろくなっている人は、脳卒中や心筋梗塞といった心血管疾患が発生してしまう危険があるのです。
いきみの時には、血圧は30~40(mmHg)程度は上がると言われています。もし血圧計をお持ちだったら、ぜひご自分でも計ってみてください。
心血管疾患のうち、どれだけが便秘を引き金にして起こっているのかはまだ不明ですが、便秘の人が心血管疾患で死亡する可能性が高いという報告注3などがあることから、便秘は心血管イベントを誘発していると考えられています注4。そのため、高血圧症の治療においても、便秘を予防するよう指導されたり、便秘薬が処方されたりすることがあります注5。
心血管疾患は、死亡したり、要介護状態になるのを早めたりするなど、重大な結果を招く可能性があります。
高血圧状態が長く続くと、血管は次第に厚く、しかも硬くなり(動脈硬化)、弾力性が失われてもろくなります。そのうえで、何かのきっかけで血管が破れたり、血栓が詰まったりすると、脳出血や脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患が起こります。これらの疾患は死に直結することも多く、国内の18万人を対象にした研究では、高血圧による心血管疾患で、年間約10万人が死亡しているとされています注6。
また、心血管疾患は、命は落とさなくても、健康寿命の終わりをもたらす可能性があります。心血管疾患が原因で、これまで通りの日常生活が送れなくなり、介護が必要になる人が多くいます(高齢者でなくても、40代以降は脳血管疾患(脳卒中)で国の介護保険制度の介護認定が受けられます)。2019年の国民生活基礎調査によると、介護が必要になった原因の第二位(16.1%。一位は認知症で17.6%)が脳血管疾患でした。
では、そんな重大な事態を予防するためにはどうすればよいのでしょうか。便秘と高血圧、それぞれの対処法と、日常生活の中での対策を簡単に見てみましょう。
便秘は、高血圧症のように危険な生活習慣病とは位置づけられていないこともあって、お医者にかからずに、下に挙げるような生活上の対策をとったり、市販薬の服用(便秘薬・整腸薬)で対処することがほとんどです。便秘対策になる生活改善は以下のとおりです。
★食べ物による便秘改善
食物繊維は、便のカサを増やしたり、腸内環境を整えたりしてくれます。また、ヨーグルト、発酵食品、レジスタントスターチ、オリゴ糖、質のよいオイルなど、腸内環境を整えてくれる食べ物が多くありますので、積極的に摂るようにしましょう。
★運動による便秘改善
運動の中でも、有酸素運動は、腸への刺激・運動後のリラックス効果・お腹周りの筋肉の維持増強などを通じて便秘を改善します。特に、ウォーキング、ランニング、ジョギング、ヨガなどの体のひねりがある有酸素運動がおすすめです。ご高齢の方は歩くだけでもよいので体を動かしてみましょう。
★その他の生活改善
・朝起きてコップ一杯の水をのむ・便意を逃さない・十分な量の水をのむ・ストレスを減らしてリラックス・お腹のマッサージなど、様々な便秘対策があります。
詳しくは:本ブログのカテゴリー「便秘解消」
高血圧は、自覚症状がほとんどないので、まずは毎年の健康診断をちゃんと受け、判定が悪かったら素直に受診することが大切です。結果的に毎日お薬を服薬することになっても、寿命を延ばすことになると考えて、医師の指導を素直に受け入れたいものです。筆者も、近年は毎日降圧剤を服薬しています。
そのうえで、次のような生活習慣を改善しましょう。こうした生活習慣の改善は、服薬している人にも、していない人にも有効で、まだ正常血圧の人には高血圧の予防にもなります。複数の生活改善を組み合わせるとより効果的です。
★生活改善: 減塩・肥満の予防や改善・節酒・運動をする・野菜や果物を食べる・禁煙・防寒・ストレスを減らす など注7
この中で、運動をすることと、野菜や果物を食べることとによる高血圧対策については、次項で少し詳しく取り上げたいと思います。高血圧全般や、減塩、その他の対策についてもっと詳しく知りたい方は、下記のページも合わせてご覧ください。
厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
ご覧になられた通り、便秘に良い生活改善の中には、高血圧に効果的なものが2つあります。「運動をする」ことと、「野菜や果物を食べる」ことです。便秘と高血圧の両方に悩んでいる方は、これらに取り組むのはいかがでしょうか。
★運動
高血圧には、早歩き、ジョギング、ランニングなどの有酸素持久性の運動を、ややつらい程度にするのが良いとされています。毎日30分または週180分(3時間)行うと良いそうです注7。便秘には、それより少ない運動量でも改善効果が現れますが、頑張って運動時間を確保してみましょう。
関連リンク:「便秘と運動」
*重度の高血圧で運動制限がある場合などは、医師の指導に従ってください。
★野菜や果物の摂取
野菜や果物が便秘に良いのは、これらの食材が食物繊維を豊富に含むからです。食物繊維は、便のカサを増やしたり、腸内の善玉菌のエサになることで、腸内環境を改善したり、大腸の動きを良くしたりしてくれます。
一方、高血圧に野菜と果物を摂ることが推奨されている理由は、野菜や果物に多く含まれるカリウムが血圧を下げてくれるからです。カリウムは、血圧を上昇させる働きをもつナトリウムを排出してくれます。
野菜では、ブロッコリーやほうれんそうは、カリウムも食物繊維も豊富です。果物では、アボガドやバナナが、カリウム・食物繊維ともに豊富に含んでいます。こうした食材を積極的に摂るようにしましょう。
関連リンク:「野菜と便秘の話」/「便秘によい食材:バナナ」
*腎臓病でカリウム制限がある場合などは、医師の指導に従ってください。
最後に、便秘や高血圧と共存していく際の安全な排便のための工夫について解説します。
ここまで挙げてきた対策や通院・服薬をもってしても、便秘の解消や、適正血圧の維持につながらない場合もあります。その場合には、次のような方法で、いきむことを減らし、危険を避けることをお勧めします。
便意が来たらそれを逃がさないようにし、またトイレでは、極力いきまないようにしましょう。規則正しい生活を送り、毎朝コップ一杯の水を飲み、しっかり朝食をとるようにすると、朝のうちに便意を催す可能性が高まります。この便意を逃さずに、排便をすますことが大切です。トイレでは、前かがみの姿勢をとっていることが大切です。理想的な姿勢は、ロダンの「考える人」(写真)のような恰好です。この姿勢だと、直腸から肛門にかけての角度が一直線に近くなり、スムーズな排便が行われます。排便姿勢を改善させることで、便の量が有意に増加したという報告もありますので注8、次に便意がやってきたら、いきむ時に意識的に「考える人」を真似てみてください。
関連リンク:「便意と便秘」
便秘薬の使用が、心血管疾患での死亡を減らしたというエビデンスはまだありませんが、便秘薬には便を柔らかくする効果があるので、服用によっていきむ回数を減らしたり、いきむ力を弱くすませたりすることが可能です。便秘薬でちょうどよいお通じが得られれば、いきみを減らすことにつながります。ちょうどよい便というのは、下の図の「正常な便の範囲」に入るような形状のもので、特に中央の理想的なバナナ状の便を目指すようにしてみましょう。
関連リンク:「うんちと便秘」
市販の便秘薬を活用する場合、調節しやすいお薬を選ぶことが大切です。効き目が弱すぎてカチカチのままであったり、効きすぎて下痢になったりしては体に負担がかかってしまいます。
関連リンク:「便秘薬をのむ時に大切なこと」
ブリストルスケール
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複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指すのに最適です。生活習慣の改善をしてもお通じがでないときには、ぜひ活用してみてください。
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便秘薬を飲むほどでもないという場合は、整腸薬で腸内環境を整えてあげるのもおすすめです。毒掃丸整腸薬は、乳酸菌と消化酵素と4種類の生薬を配合した、シナモンのような爽やかな香りがする、のみやすい整腸薬です。ぜひ一度お試しください。
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注1:Tamura A, Tomita T, Oshima T, Toyoshima F, Yamasaki T, Okugawa T, et al. ,Prevalence and Self-recognition of Chronic Constipation: Results of an Internet Survey (nih.gov), J Neurogastroenterol Motil. 2016 ; 22 (4) : p.677-84. 注2:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編「高血圧治療ガイドライン2019」、日本高血圧学会 2019; p.4. 注3:Honkura K, et al., Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016 Mar ; 246 : p.251-6. 注4:Ishiyama, Y, et al., Constipation-induced pressor effects as triggers for cardiovascular events. J Clin Hypertens. 2019 ; 21 : p.421– 425. 注5:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編 前掲書p.70. 注6 : Ikeda, N, et al., Adult Mortality Attributable to Preventable Risk Factors for Non-Communicable Diseases and Injuries in Japan: A Comparative Risk Assessment, PLoS Med., 2012 ; 9. 注7:日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会 編 前掲書p.64-73. 注8, 槌野 正裕 ほか, 排便姿勢と直腸肛門角,排出量の関係 排便造影検査(Defecography)による研究, 理学療法学 2011 ; Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会抄録集)
さいごに
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