腸内の環境を整えてあげることは、健康増進大切です。2回シリーズで、腸内環境を良くして便秘を改善するための方法についてまとめてみました。今回は、まず腸内環境の話題に良く出てくる「腸内フローラ」とは何かを概観し、その後で、ヨーグルトの摂取が腸内フローラを改善し便秘を改善することをご説明します。その中で、自分に合ったヨーグルト選びについても触れたいと思います。ぜひご一読のうえ、みなさまの腸活にヨーグルトをぜひご摂り入れて頂きたいと思います。そして、次回は発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用について記していきます。ぜひ合わせてご覧ください。
私たちの腸の中には、約100兆個もの細菌(腸内細菌)がいて、その状態(腸内環境)は、健康と密接に関係しています。これらの腸に棲みついている細菌群全体は、腸内フローラと呼ばれています。フローラとは植物相を指す言葉ですが、ローマ神話の花と豊穣と春の女神と同じ名前なので、華やいだ好印象を抱かせます。
ちなみに、初期ルネサンス期のイタリア人画家 ボッティチェリの代表作の1つ『プリマヴェーラ』(図1)に描かれた、右から3人目の花柄の服を着た女性がフローラです。
図1.『プリマヴェーラ』のフローラ(右から3人目)
腸内フローラの中で暮らす腸内細菌は、体に良い働きをする善玉菌、悪い影響をもたらす悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌に分類できます(図2)。腸の中で善玉菌が優勢ならば、良い腸内環境と言え、悪玉菌が優勢になると、腸内環境は悪化し、便秘を引き起こしたり、有害物質が多く発生してしまったりします。(悪玉菌の体への影響は、便秘とデトックスについての記事でも説明しています) つまり、「腸内フローラを改善する」とか「腸内環境を整える」とは、善玉菌が優勢な腸内環境を作ってあげることなのです。善玉菌は、大腸のエネルギーになる物質を作ったり、悪玉菌の増殖を抑えたりして、私たちの健康の維持に貢献してくれます。また、良好な腸内フローラを維持できている人は、便やおならが臭くなりにくいというメリットもあります。
図2. 腸内細菌の一般的な分類 当社作成
肥満と腸内細菌の関係
腸内環境を整えるメリットは数多くあると考えられています。例えば、近年では、腸内フローラと肥満の関係についての研究が注目を集めています。肥満の人とそうでない人を比較すると、腸内細菌の構成が異なることがわかってきたのです注1。肥満の人の腸には特定の細菌の割合が少なく、こうした違いが食事からら取り込むエネルギー量に個人差をもたらし、肥満の原因の1つになっていると考えられるようになっています。まだ研究者の間での議論が続いており、具体的な肥満症の治療法やダイエット法は見出されていませんが、今後の研究の進捗が待たれるところです注2。
腸内環境は、主に年齢や食生活によって変化します。
乳児の腸内細菌は、母乳に含まれる乳糖やオリゴ糖をエサにする善玉菌が大半を占めています(赤ちゃんのうんちが臭くないのは、悪玉菌がいないからでもあります)。そして、固形食を食べるようになって以降、食べ物が多様になったのに比例するかのように、図2に示したような複雑な腸内フローラが形成されていきます。そして善玉菌は、残念ながら加齢により減少してしまいます。ビフィズス菌などを含むアクチノバクテリア門の細菌は、60歳くらいから大きく減少し、100歳を超える被験者たちからはほとんど検出されないという研究結果が出ています注3。年を重ねるにつれ、腸内環境の改善を、より意識したほうが良さそうです。
腸内フローラの状態が良くなるか悪くなるかには、食生活が大きく関わってきます。腸内細菌は、種類によって食べる(=代謝する)ものが異なるので、肉をたくさん食べれば、タンパク質を好む悪玉菌の数が増え、善玉菌が好む食物繊維などの食べ物をたくさん食べれば、善玉菌が増えます。また、後述するように、善玉菌自体を食べることによって、腸内環境を良くすることが可能です。そのため、食文化が異なる国を比較してみると、腸内フローラの組成が異なっているそうです注4。食べるものを工夫することは、手軽に腸内環境を改善する方法であり、腸活の王道です。
なお、腸内環境を維持していくにあたっては、抗生物質の濫用は避けたほうがよいでしょう。抗生物質は、病原菌を退治してくれるありがたい薬ですが、腸内の有用な細菌まで殺してしまい、腸内フローラのバランスを崩してしまいます。ウイルス性の風邪などでは抗生物質の服用は不要ですから、医師とよく相談して指示されたとおりの服用にとどめ、腸内環境を守りましょう。
ところで、抗生物質により腸内細菌が減ってしまうと、薬を服用した際の効き目にも影響を及ぼすことがあります。例えば、当社の便秘薬・毒掃丸は、有効成分の中に、腸内細菌によって分解されたあとに薬効を発揮するもの(ダイオウ)を含んでいますから、腸内細菌が少なくなっていると、効果が弱まってしまうかもしれません。
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では、おススメの腸内環境改善方法4つを、今回(その1)と次回(その2~4)に分けてご紹介します。
腸内環境を良くするために、自分に合ったヨーグルトを見つけて毎日食べてみましょう。ヨーグルトとは、牛などの乳に乳酸菌や酵母で発酵させた食品で、古くから健康によいことが知られています。ヨーグルトには、タンパク質や脂質の他に、乳酸菌・ビフィズス菌といった善玉菌を多く含んでおり、摂取することが便秘改善に有効であることを示す様々な研究成果があります。しかしながら、どの菌をどのくらい摂取すれば便通が改善するのかについては、まだエビデンスが十分にありません注5。
お店で売られているヨーグルトには、実に様々な種類があります。それぞれのヨーグルトに含まれている乳酸菌・ビフィズス菌は、メーカーやブランドごとに色々な菌種のものがあり、異なる菌種では、代謝過程や、産出する乳酸のタイプ(異性体)や、産出する乳酸以外の生成物が異なります。ヒトの腸内にいる細菌の種類と割合は、人によって大きく異なるので、ヨーグルトの菌種によって相性の良し悪しがあり、人によって合う製品とあわない製品があるようです。
◆自分に合ったヨーグルトの見つけ方
そこで当社では、自分にあったヨーグルトを見つけるために、同じ銘柄のヨーグルトを1~2週間食べ続けてみることをおススメしています。摂取量は、できれば1日100~200g程度。そして、おなかがグルグルと動くような状態になるものが、自分に合うヨーグルトと考えられます。お腹の調子が良くない場合や、効き目を感じない場合は、今とは違うタイプの菌が使われているヨーグルトに代えてみましょう。
トクホと機能性表示食品
特定保健用食品(トクホ)とは、健康増進に良い影響があり安全であることを、消費者庁が個別に審査して認めた食品です。令和3年11月末時点で、「はっ酵乳」(ヨーグルト)では47品目が認められていて、ほとんどが腸内環境の改善をうたっています。機能性表示食品とは、同様の根拠を消費者庁に届け出た食品です。成分名に「菌」を含む加工食品(多くがヨーグルト)では199件届け出されていて(2022年1月27日時点)、腸内環境改善の他にも幅広い機能をうたっています。一般的に、食品→機能性表示食品→トクホの順に発売の難易度は上がり、保健機能への信頼度は高くなります。但し、とちらも医薬品のような病気の治療や予防の機能はないこと、無冠のヨーグルトに体への良い影響がないとはいえないことを理解の上、お財布とも相談して商品を選びましょう(続けることにも、意義があります)!
自分に合ったヨーグルトに出会えたら、毎日食べ続けてみてください。食べる時間は、腸の活動が高まる夜がよいと言われていますが、時間ごとに効果を比較した研究は見当たりませんでした。無理せずきちんと続けられる時間に食べましょう(筆者は、毎朝+時々寝る前に摂っています)。朝に食べる場合には、栄養豊富で便秘改善にも良いバナナをカットしてヨーグルトの中に入れ、バナナヨーグルトにして食べることもおすすめです。朝食を用意する時間がないような忙しい朝でも、バナナヨーグルトならさっと作れるうえに、ヨーグルトだけを食べるよりもボリュームがあり、胃結腸反射(いけっちょうはんしゃ)という朝のお通じを促す体の機構を起動させることができます。
関連記事:ブログ記事「便秘を改善する食材:バナナ」/「便意と便意」
なお、ヨーグルトを食べ続けた場合に体重が減りやすいという嬉しい研究結果が多くあります注6。毎日のヨーグルト摂取で、ダイエットと腸内環境の改善の両方を目指してみましょう。(ダイエットをされる場合、ダイエットと便秘についての記事もご参照ください)
ヨーグルトの市場は、便秘に関連する産業の中でも最大規模で、かつ最も急速に伸びています。ヨーグルト+乳酸菌飲料の市場は、2010年から2020年までの間に1.5倍に拡大したそうです(TPC調べ:日本経済新聞電子版2020年10月12日参照)。しかもその規模は、直近で7000億円近いとのこと。当社を含む便秘薬の市場はわずか約200億円弱で、長年横這いか微増ですから、違いに驚きます。
便秘の原因は様々であり、腸内環境を改善するだけで便秘しらずのお腹になれるとは限りません。ヨーグルトを食べるだけで万人の便秘の悩みをなくすことは難しいでしょう(実際、ヨーグルトの市場拡大にも関わらず、厚生労働省の調査では便秘有訴者数自体は長年ほぼ横ばいです)。とはいえ、前述の通り、善玉菌の摂取で便通が改善する人がいることははっきりしていますし、便秘以外にも、免疫力UPなど多くの効果が期待されています。ぜひ積極的に食べてみてはいかがでしょうか。
ヨーグルトを毎日食べても効果がなく、便秘が改善しない場合は、ヨーグルトをやめてしまうのではなく、違う製品を試してみたり、他の便秘解消法と組み合わせるようにしてください。(その際は、便秘のセルフケアについての記事や、腸活の記事群、便秘薬をのむ時に気を付けてほしいことの記事もご一読頂けると幸いです)。また、生活改善だけではスッキリしない方は、市販の便秘薬の力を借りることも考えてみましょう。その場合も、漫然と強すぎる薬を使い続けるのではなく、服用量を上手に調節して自然なお通じがでるようにすると、腸に負担が少なくなります。
関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイト/おすすめの服用方法/複方毒掃丸の無料サンプルお申込みフォーム 複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。ブログ記事:「生薬の便秘薬と、漢方の便秘薬」
続編目次(クリックで記事に飛びます)
「腸内環境と便秘 ② 発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用」
■便秘対策には運動などの腸活も行い、それでも困ったときには便秘薬
(最終更新日:2022年5月22日)
注1:Turnbaugh, P.J et al, Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity, Nature. 2006; 444 : 1027-1031 注2:参考文献:入江 潤一郎ほか, 腸内細菌叢と肥満症, 日内会誌 2015; 104 : 703-709 注3: K. Kato et al. Age-related changes in the composition of gut Bifidobacterium species, Current Microbiology 2017; 74(8): 987-995 注4:例えば、Suguru Nishijima et al., The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness, DNA Research, 2016; 23,(2): 125–133 注5:日本消化器病学会関連研究会,慢性便秘の診断・治療研究会:慢性便秘症診療ガイドライン 2017.南江堂,2017 p.62-63 注6: 例えば、Jessica D Smith et al. , Changes in intake of protein foods, carbohydrate amount and quality, and long-term weight change: results from 3 prospective cohorts, Am J Clin Nutr 2015;101:1216-1224 . アメリカでの、12万人を対象にした大規模調査。
写真説明:腸内フローラは、お花畑にたとえられることも多いです。今年の春の、花満開の写真にタイトル文字をのせてみました。
ひとこと
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