私たち現代人の多くは、毎日野菜を食べており、その鮮やかで瑞々しい緑黄色は、日々の食卓に彩りを添えてくれます。野菜は健康維持に欠かせない食材で、様々な面で私たちの体を整える働きがあります。例えば、野菜を適量食べると、大腸の働きが改善し、お通じの量や形が整えられ、結果として便通が整っていきます。今回は、そうした野菜の働きに注目し、健康全般への好影響と、野菜の効果的な食べ方、便秘対策としての野菜摂取の意義について考えてみたいと思います。この中で、野菜で改善しにくい便秘についても触れたいと思います。
目次
最初に、野菜とは何で、どんな栄養素が含まれているのかを概観してみましょう。そのあとに、野菜の主要な栄養素である食物繊維、ビタミン、ミネラルそれぞれについてまとめました。私たちは、もっと野菜を食べなければならないようです。
野菜とは、食用にできる草本(そうほん)性の植物で、加工の程度が低いまま副食物として利用されるものです(農林水産省の考え方)。本草性の植物というのは、地上部の生存期間が短く、1年で花が咲き実が取れるような、茎が「木」のようにならない(木化しない)植物です。ヒトが食べない草本植物は、食べ物にあたらないので野菜ではありません。
ーー細かいことを言うならば、いちごやスイカは野菜の定義にあてはまるが果物ではないのか・イモ類の一部は副食でなく主食である・きのこは野菜に入れないのか・等、うまく分けられない部分は多くあるようです。ただ、植物はそもそも、同じ品種の同じ部位でも生育時期や調理によって含まれる栄養素や料理への使われ方が変わってくるなど、複雑な存在です。本稿ではややゆるく捉えて話を進めていきたいと思います。
野菜がヘルシーだとわかっていても、日本人の実際の摂取量は十分ではないようです。厚生労働省の国民健康・栄養調査(令和元年版)によると、日本人の野菜摂取量は平均で 280g(男性 288g、女性 274g) で、この 10 年間あまり増減がありません。国が健康増進のために定めた目標値は350gであり、2割ほど足りていません。
この目標値は、生活習慣病などの疾病予防を目的に、食物繊維・ビタミン・ミネラルを食事から充分にとるために必要とされる野菜の量を算出して出した数字ですが注1、ただ、350gというのはかなり多いと感じます。実際に、この数値はちょっと多すぎるのではないかという意見もあるようです注2。
野菜には、食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解されず、大腸まで届く食品成分のことです。食品は、私たちのやわらかい喉で飲み込むことができて、かつ消化吸収か排泄を完了させられなければなりません。野菜は、人が食べられるくらいに柔らかく、でも、難消化性の部分をかなり含んでおり、消化吸収されなかった部分は便になって排泄される―そんな有機体なのです。例えばリーフレタスの場合、可食部100g中、水分94.0gを除く6.0gのうち、食物繊維は1.9gを占めています(日本食品成分表八訂)。
食物繊維は、栄養として消化吸収されないにも関わらず、ヒトの健康な生活のためには不可欠な成分です。食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられます。水溶性食物繊維は、便をやわらかくしてくれる上に、体によい善玉菌とよばれる腸内細菌のエサになり、善玉菌を増やすことで腸内環境を改善してくれます。不溶性食物繊維は、便のカサをふやしてくれて、快便のときの「ドッサリ」感のもととなります。腸内環境を改善してくれるのは水溶性食物繊維の方ですが、健康維持のためには水溶性・不溶性の両方をバランスよく摂るようにしてください。
ヒトが食事から摂る食物繊維は、ほとんどが植物のものであり、動物性食物繊維はエビやカニの殻くらいです。植物由来の食物繊維は、穀物、野菜(いも類や豆類含む)、海藻、果物、きのこに多く含まれますが、この中でも野菜は、副菜としてカロリーをあまり気にせずに食物繊維の摂取量を増やしやすい食材です。
長年、食物繊維は栄養学的には食べ物のカスだと考えられてきました。1930年代以降、欧米で食物繊維が持つ様々な健康維持機能についての研究が進むようになり、それまで言われていた5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)に次ぐ6番目の栄養素だと考えられるようになってきました。現代の日本人は、食生活の欧米化もあって、食物繊維の摂取量が不足しています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18 g以上、男性21 g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めていますが、実際の摂取量は、だいたい15g程度で、2割前後不足しています。
人間が生きていくためには、タンパク質や脂質だけでなく、適量のビタミンやミネラルが必要です。ビタミンは人体で十分にあるいは全く合成できない必須の有機物であり、合計13種類あります。ミネラルとは人体に必須の無機物で、こちらは16種類です注3。これらが欠乏すると、ヒトは病気になり、最後は生命活動が続けられず、死んでしまいます。これらは食事全般を通して摂取できますが、野菜にも、各種ビタミンや、不足しがちなカルシウム、鉄注4などが多く含まれています。
ビタミンは普通の生活で極端に不足することはありませんが、ダイエット時や、食生活が急に変化したときには注意が必要です。野菜に特に豊富なビタミンには、体の中でビタミンAになるβカロテンや、ビタミンCがあります。ビタミンAには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、体の抵抗力を強めたりする働きがあります。βカロテンは、ニンジンやほうれんそうに特に多く含まれていますので、積極的にメニューに加えてはいかがでしょうか。抗酸化作用があって美容にもよいビタミンCは、ヒトの体内で全く合成できないビタミンなので、こちらも積極的に摂る必要があります(ちなみにイヌやネコはビタミンCを体内で合成できます)。ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツなどに多く含まれています。
ミネラルの中では、カルシウムが特に不足しています。カルシウムは、骨を強くするミネラルで、不足すると骨折や骨粗しょう症の原因になります。カルシウムは、小松菜、チンゲン菜、春菊、オクラなどに多く含まれます。また、鉄は赤血球の材料になり、不足すると貧血の原因になります。生理がある期間の女性で特に不足しており、小松菜、枝豆、ほうれんそうなどに含まれています。野菜に含まれる鉄(非ヘム鉄といいます)は、タンパク質やビタミンCが含まれる食べ物と一緒に摂取することで吸収が高まります。
ビタミンとミネラルが多く含まれている野菜を、栄養素ごとに例示してきましたが、かなり種類がばらけることにお気付きでしょうか。健康のためには、野菜は色々な種類を摂るように心掛けたほうがよさそうです。
では、実際に野菜を食べることは健康にどのような好影響を及ぼすのでしょうか。たとえば、欧米の多数の疫学調査をとりまとめた論文によると、野菜摂取量が多いほど、がん、虚血性心疾患、心臓発作による死亡率が減少することがわかっています。また個別のがんにおいては、口腔・咽頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がんに於いて、野菜摂取が多い場合のリスク低下が確定的だといわれています注5。野菜は、食べないよりも食べたほうが健康に良いことがはっきりしています。更に、野菜の成分の中でも食物繊維に絞った場合、食物繊維の摂取が長期の総死亡率を2割近く下げるという日本とアメリカでの長期にわたる大規模追跡調査の報告があります注6(様々な研究を見ると、野菜の健康への寄与の少なくともある程度が、食物繊維によるものに思えます)。
では、そんな野菜は、どう食べるのがよいのでしょうか。まず、食物繊維の観点から見ると、食物繊維含有量が高い野菜を下の表などを活用し、水溶性食物繊維もある程度含まれるように複数チョイスするのが良いと思います。ビタミン・ミネラルの観点からは、まず色々な種類の野菜を取り混ぜることです。特に目当てのビタミン・ミネラルがあるようでしたら、(3)で例示した中から選んで頂くか、独立行政法人農畜産業振興機構の一覧表が詳しいうえに見やすいので参考にされてはいかがでしょうか。
調理の際には、食物繊維を食べやすくする、あるいは野菜の量を摂るためには、煮たり茹でたりして柔らかくするのも良いです。一方、加熱の際、水溶性のビタミンが煮汁に漏れ出したり、成分が分解され減少したりします。スープを料理に活用したり、生食と組み合わせたりする工夫も必要でしょう。そして、食事が野菜ばかりにならないよう、主食・主菜・副菜のバランスがとれた献立を心掛けましょう。
(g) | 食物繊維総量 | 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 |
ごぼう | 5.7 | 2.3 | 3.4 |
ブロッコリー | 5.1 | 0.9 | 4.3 |
えだまめ | 5.0 | 0.4 | 4.6 |
たけのこ | 3.3 | 0.4 | 2.9 |
さつまいも | 2.8 | 0.9 | 1.8 |
かぼちゃ | 2.8 | 0.7 | 2.1 |
にんじん | 2.8 | 0.7 | 2.1 |
ほうれんそう | 2.8 | 0.7 | 2.1 |
ねぎ | 2.5 | 0.3 | 2.2 |
ピーマン | 2.3 | 0.6 | 1.7 |
食物繊維含有量が多い主な野菜(日本食品成分表 八訂から当社作成)
食物繊維の不足と大腸憩室
大腸憩室とは、大腸の内側に袋状にできるくぼみのことで、高齢になると多くの人にできます。このくぼみの中で細菌が繁殖して炎症を起こすと、大腸憩室炎という疾病が起き、悪化すると手術が必要になる場合もあります。食物繊維不足で便のカサが減ると、腸内の圧力が高まりやすくなり、憩室ができるリスクが上がるといわれています注7。こうした疾患を防ぐためにも、野菜などで食物繊維を摂ることが大切です。
野菜を食べることは、便秘対策としても有効です。水溶性食物繊維は、便をやわらかくしてくれる上に、体によい善玉菌とよばれる腸内細菌のエサになり、善玉菌を増やすことで腸内環境を改善してくれます。不溶性食物繊維は、便のカサをふやしてくれて、快便のときの「ドッサリ」感のもととなります。そのため、食物繊維が不足すると、腸内環境が悪化し、便のカサも減り、便秘になってしまう場合があります。
ならば、野菜などで食物繊維を摂りさえすれば、便秘は改善するのでしょうか。短期的には、一部の人の便秘は改善するでしょう。アメリカでの研究によると、便秘症の人147人に植物性の食物繊維(インドオオバコの種子15〜30g/日)を投与したところ、約4割の65人が治癒または改善したというのです注8。そして、この4割の人は、大腸の動きと便の排出機能に問題がない、大腸通過正常型と呼ばれるタイプの便秘と考えられる人たちでした。野菜の摂取ですぐに便秘が改善する可能性が高いのは、大腸の働きや便の排出機能が原因ではない場合なのです。
関連リンク:ブログ記事「便秘の種類と原因」
大腸通過正常型の便秘は、食べる量が少ない(=食物繊維が不足している)ときになる便秘です。ダイエットをしている方にもみられる便秘です。こうした方は、野菜を積極的にとるようにしましょう。実際に、食物繊維の摂取で便のカサが増えることが報告されています注9。
関連リンク:ブログ記事「ダイエットと便秘」
野菜を食べてもあまり便秘が改善しない場合は、あなたは大腸通過正常型以外の便秘で、具体的には腸の動きが悪いか、便意を感じにくくなっているのかもしれません。ご自身の便秘の原因については、医療機器を用いた本格的な診察をしないと確定できませんが、まずは実際に野菜で便秘が改善するか試してみましょう。もし便秘が改善しない場合は、野菜を選ぶ時に、不溶性食物繊維だけでなく、水溶性の食物繊維を増やすことを心がけましょう。水溶性食物繊維で腸内の善玉菌を増やせば、中長期的に便秘が改善するかもしれません。こうして腸内環境の改善を目指しながら、野菜摂取以外の便秘対策を併せて行っていきましょう。
ここで1つ気を付けて頂きたいことがあります。便秘が改善しないからといって、または便のカサが増すと便秘がつらくなると考えて、野菜を食べなくならないでほしいのです。前項でご紹介したように、野菜には病気を防ぐチカラがありますし注5、食物繊維を多く食べている人は長生きする可能性が高まります注6。まず便秘を改善し、しっかり野菜を食べるようにしましょう。
…気になるデータがあります。アメリカからの報告によると、慢性便秘の患者を長期追跡したところ、10年後の生存率が便秘でない人より12%低いというのです注10。この調査では、統計的に比較可能になるように様々な因子(年齢、性別、教育レベル、癌など重大な疾患の有無、飲酒や喫煙)を調整して生存率を算出していますが、食生活の違いについては調整がされていませんでした。ですので、生存率の差が便秘の人の食生活に関係している可能性は否定できません。また、別の研究で、排便頻度が低い人は循環器疾患で亡くなるリスクが高い(こちらは食生活を含む生活習慣も調整済みです)と指摘しています注11。なぜそうなるのか原因は分かっていませんが、生活改善などで便秘を改善し、健康全般によい野菜を含むバランスの取れた食生活を送ることが、長生きに貢献する可能性がある…とは言えるのではないでしょうか。
関連リンク:ブログ記事「便秘と寿命」
◎食物繊維摂取以外の便秘対策
(色付きの部分から関連記事へリンクします)
5.規則正しい生活をし、リラックスを心掛ける
関連リンク:「便秘によい食べ物」/「便秘解消を目指して ~便秘のセルフケア~」
野菜の摂取や生活改善で便秘が解消できない時は、便秘薬・毒掃丸の使用も検討してみてください。複方毒掃丸は、6種類の生薬からなる便秘薬です。植物性の生薬が、大腸の蠕動運動を促し、自然に近いお通じを促します。細かい粒のお薬で、服用量を細かく調節できるのも特徴です。
関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイト/おすすめの服用方法/複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム
注1:厚生労働省webサイト 、栄養・食生活(https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html#A16)、2022年4月20日アクセス 注2:例えば、大脇幸志郎氏の朝日新聞アピタルの記事「野菜は1日350グラム?高すぎる目標に挫折する前に」(https://www.asahi.com/articles/ASP3Z3JQWP3ZULBJ001.html)、2022年4月20日アクセス 注3:厚生労働省、日本人の食事摂取基準(2020年版)の対象になっているビタミンとミネラルの種類はどちらも13種類。ビタミンは、ビタミン A、ビタミン D、ビタミン E、ビタミン K、ビタミン B1、ビタミン B2、ナイアシン、ビタミン B6、ビタミン B12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミン C。ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン。この他にミネラルは硫黄・塩素・コバルトを加えて16種類。 注4:ビタミンやミネラルの摂取量や不足しているかどうかは、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)や、 国民健康・栄養調査結果(令和元年)を参考にした。注5:池上 幸江ほか, 野菜と野菜成分の疾病予防及び生理機能への関与, 栄養学雑誌. 2003 ; 61 (5 ) : p275-288 注6:Park Y, et al., Dietary fiber intake and mortality in the NIH-AARP diet and health study. Arch Intern Med. 2011 Jun 27 ; 171(12) : p1061-8. アメリカでの9年間の追跡調査で、食物繊維の摂取は、男女両方における総死亡率低下と有意な関連を示した(男性 0.78(95% CI:0.73~0.82;p<0.001)、女性 0.78(95%CI:0.73~0.85;p<0.001))。 et al., Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study, Am. J. Clin. Nutr. 2020.May ; 111(5) : p1027–1035 日本での18~21年の追跡調査で、食物繊維の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループに比べ、総死亡リスクが男性で23%、女性で18%、それぞれ低下した。注7:櫻井幸弘, 大腸憩室症の病態, 日本消化器内視鏡学会雑誌. 2005 ; Vol.47(6) : p1204-1210. 注8:Voderholzer WA et al., Clinical response to dietary fiber treatment of chronic constipation. Am J Gastroenterol. 1997 Jan ; 92(1) : p95-8. 注9:石井智香子ほか, 食物繊維が排便におよぼす影響, 日本看護科学会誌. 1992; 12: p16-22. 注10:Joseph Y Chang, et al. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol. 2010 Apr; 105(4) : p822-32. 注11:Kenji Honkura, et al. Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016 Mar ; 246 : p251-6.
最終更新日(2022年5月2日)
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