海藻には、陸上の植物にはない珍しい成分が豊富に含まれています。そうした成分が、独特の風味や食感を生みだし、私たちの食の楽しみの幅を広げてくるうえ、腸に入ると便秘も改善してくれます。今回は、知っているようでよく知らない海藻そのもののことや、海藻を食べる便秘対策の注意点についてもみていきたいと思います。
海藻(かいそう)とは、一般に海中にある藻類とよばれる仲間のうち目にみえる大きさのものをいい、大部分は水深数十メートルまでの深さに生息しています。根・葉・茎の区別なく全身で光合成し、根に似た付着部で岩場に張り付いて生きています。種類によって、分岐して繁殖したり、胞子や卵によって繁殖します。種子植物である海草(かいそう・うみくさ)とは全く異なる植物です。日本には1400種類もの海藻が生息し、その一部は、縄文時代から食材として利用されてきました。飛鳥時代にはすでに何種類もの海藻が租税として納められていたほか、古くから日本人の食生活の中に根付いてきました。
海藻は、色の違いによって、紅藻植物・緑藻植物・褐色植物の3分類に分けられています。海藻の見た目の色が違うのは、光合成色素が違うからです。光合成に関わる色素が違うというのは、同じ見た目の色の違いでも、動物の肌の色の違いや毛色の違いなどと比べると遥かに本質的な違いです。そのため、海藻に含まれている成分も、3つの分類で大きく異なっています注1。
海藻に含まれている栄養素の中で、便秘に関係が深いのは、食物繊維です。食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解されず、大腸まで届く食品成分のことです。消化吸収されないにも関わらず、ヒトの健康な生活のためには不可欠な成分です。食物繊維は、腸内細菌によって分解されることで、腸の動きを助ける成分を作ります。また、一部は腸内細菌によっても分解されず、最終的には便の材料となり、水分を含むことで、便のカサを増す役割を果たします。そのため、食物繊維が不足すると、腸の動きがわるくなったり、便のカサが少なくなったりし、便秘になってしまいます。
長年、食物繊維は栄養学的には食べ物のカスだと考えられてきました。1930年代以降、欧米で食物繊維が持つ様々な健康維持機能についての研究が進むようになり、それまで言われていた5大栄養素(タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル)に次ぐ6番目の栄養素だと考えられるようになってきました。現代の日本人は、食生活の欧米化もあって、食物繊維の摂取量が不足しています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18 g以上、男性21 g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めていますが、実際の摂取量は、だいたい15g程度で、2割前後不足しています。
食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられます。水溶性食物繊維は、便をやわらかくしてくれる上に、種類によるものの、多くは大腸内の善玉菌のエサになります。エサがあることで善玉菌は増殖し、腸内環境が改善されます。一方で、不溶性食物繊維は、便のカサをふやしてくれて、快便のときの「ドッサリ」感のもととなります。健康維持のためには水溶性・不溶性の両方をバランスよく摂ることが推奨されており、便通のために最適な水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、1:2であると言われています注2。しかし、現代の普通の食生活では水溶性食物繊維があまり摂れず、不足しがちです。
関連リンク:「野菜と便秘の話」
海藻には、現代日本人の食生活で不足しがちな食物繊維、なかでも特に足りていない、水溶性食物繊維がたっぷりと含まれています。下の表の「わかめ(生)」の場合、100gのうち94gが水分で、それ以外の5.8gのうち、3.4gを食物繊維が占めています。
食品名 | 食物繊維総量(100g中) |
わかめ(生) | 3.4g(但し水が94.2g) |
わかめ(乾燥) | 31.7g |
こんぶ(乾燥) | 32.1g |
焼きのり | 36.0g |
ひじき(乾燥) | 51.8g |
文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
公的な食品成分表である「日本食品成分標準表」では、海藻類の食物繊維について、不溶性と水溶性の分類を公表していませんが(粘り気が強くて他の食品と同じ測り方ができないとか)、種類や個体によって大きな差があるものの、海藻には、私たちの生活で特に不足しがちな、水溶性食物繊維が豊富に含まれています。
分類 | 主な食用海藻 | 主な食物繊維 |
紅藻植物 | アマノリ(のり) テングサ(寒天) とさか | セルロース 寒天 ポルフィラン |
緑藻植物 | アオノリ(青のり) あおさ | セルロース 緑藻硫酸多糖 |
褐色植物 〔食用にされやすい〕 | 昆布 わかめ もずく ひじき | セルロース アルギン酸*注3 フコダイン マンニトール |
文献1を参考に作成。太字は、水溶性食物繊維成分。
上の表をご覧ください。海藻に含まれる食物繊維を、分類別にまとめてみました。すでに述べた通り、海藻は、光合成色素の違いにより3つに大別され、含まれている食物繊維の成分も、分類ごとに大きく異なります。セルロースという成分は、全ての分類に含まれていますが、これは地球上でもっともありふれた食物繊維(不溶性)で、あらゆる植物の細胞壁を構成している主材料ですから、共通していても不思議ではありません。それ以外の食物繊維は、ほぼ水溶性のもので、光合成色素の分類ごとに まるで異なる成分で構成されています。
こうした水溶性食物繊維群は、海藻に特有の物質で、陸上の植物には含まれておらず、独特の食感を作り出しています。そして、海藻の水溶性食物繊維は、粘りがあることも特徴です。昆布やわかめなどは特に粘りが強いですが、これは水溶性食物繊維 アルギン酸やフコダインによるものです。
なお、海藻の香りに関しては、種類ごとにちがう様々な揮発性物質の組み合わせで決まっていますが、この記事では扱いません。
海藻由来の水溶性食物繊維は、小腸では消化されずに大腸に届き、水分を含んだゲル状となって便をやわらかくしてくれます。また、腸内の善玉菌や一般細菌のエサになることで、腸内環境を改善し、腸の蠕動運動を活発にしてくれる注4ことが期待できます。実際に、アルギン酸やフコダインを摂取したところ便秘を改善したという報告があります注5。
更に、海藻の水溶性食物繊維には、血糖値の上昇をおさえる効果や、コレステロールや脂質の吸収をおさえる効果があると考えられています。また、カルシウムなどのミネラルも豊富です。海藻は、ヘルシーで、便秘対策にもなる、すぐれた食材なのです。
日本人の腸内細菌は、海苔を分解できる?
2010年、有名な科学誌Natureで、日本人の腸内には、海苔に含まれる食物繊維・ポルフィランを分解する酵素を出す遺伝子をもった腸内細菌がいる(複雑ですね!)ことが報告され注5 注目を集めました。この研究の被験者は、日本人13人と米国人18人で、そのうち日本人5人の腸内からのみ、その遺伝子が見つかったということです。論文自体は、非常に興味深い論点を多く含む高尚なものなのですが、1生活者としては、日本人13人のうち5人からしかその遺伝子が見つからないことが気になりました。海苔が消化できなくて困っている日本人というのは聞いたことがないので、恐らくこの細菌がいなくても海苔でお腹をこわすわけではないでしょう。とはいえ、食生活が腸内フローラの構成に影響を及ぼすことの、とても分かりやすい一例だと思います。
独特の風味や食感を楽しみながら、海藻で便秘を改善・解消する―ーとても素晴らしいことなのですが、1つだけ注意していただきたいことがあります。それは、ヨウ素の摂りすぎです。
海藻は、甲状腺ホルモンの構成成分であるヨウ素を多く含んでいます。ヨウ素は人体になくてはならないミネラルで、外国では摂取が不足している成分です。日本人は、普段から昆布・わかめ・海苔などから大量のヨウ素を摂取しているので、極端に海藻を沢山食べると、過剰摂取になってしまう恐れがあります。ヨウ素の過剰摂取は、甲状腺機能を低下させたり、逆に甲状腺機能を亢進させてしまったりします。周りの人よりはるかに多い分量の海藻を食べたり、通常の食生活以外で昆布エキスやヨウ素入りうがい薬(ポピドンヨード製剤)を多用したりしないようにしましょう。
便秘対策は、1つのものだけを集中的におこなうものではありません。いくつもの対策を組み合わせるのが肝心です。食物繊維による便秘改善も、海藻だけでなく、野菜や穀物由来のものも増やすように心がけましょう。
関連リンク:「野菜と便秘の話」/「便秘を改善する食材:バナナ」/「便秘を改善する食材:オートミール」
また、便秘を改善する食べ物は、食物繊維だけではありません。ヨーグルト、発酵食品、良質なオイルなど、様々な便秘改善メニューがあります。
関連リンク:「便秘によい食べ物」/「腸内環境と便秘 ① 腸内フローラ/ヨーグルト」/「腸内環境と便秘 ② 発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用」
そして、食べるだけでなく、水分の取り方や、ストレス管理、運動、更には便意を逃さない工夫など、便秘対策は多様です。できるものから、なるべく多くの種類を取り入れてみましょう。
関連リンク:「便秘によい飲み物」/「便秘とストレスの関係」/「便秘と運動」/「便秘と便意」
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注1:久田孝, 海藻中の水溶性多糖類と腸内菌 – 海藻利用菌は日本人の腸にだけ? –, Functional Food Research, 2001 ; 17 : p13-18. 注2:たとえば、松生クリニック院長の松生恒夫医師の日経グッディでの記事など。注3:アルギン酸には、不溶性のアルギン酸、アルギン酸カルシウム、水溶性のアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどがある。注4:水溶性食物繊維などが分解されて発生する短鎖脂肪酸は、大腸のエネルギー源になる。P.S. Kamath, et al., Short-Chain Fatty Acids Stimulate Ileal Motility in Humans, Gastroenterology, 1988; 95(6), p1496-1502. 注5:金澤康子ほか, 低分子化アルギン酸ナトリウムの便通に及ぼす影響, 新薬と臨牀, 1999; 48(7): p873-881. 阿部直ほか, モズク由来フコイダンが便性状・便通に及ぼす作用の検討, 米子医学雑誌 , 2010; 61(4・5): 122-128. 注5:Hehemann JH, et al., Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota. Nature. 2010 Apr 8;464(7290):908-12
ひとこと
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