タグ別アーカイブ: 乳酸菌
便秘によい食べ物
2022.06.19便秘の解消・改善や予防には、普段の生活の中で、工夫や努力を重ねていくことが大切です。今回は、中でも特に効果が期待できる、便秘によい食べ物についてのお話です。食と便秘には深い関係があり、食べると便秘が改善する食べ物は、多くあります。本稿では、便秘を解消・改善するためには何を食べるのが良いのか、具体的にみていきます。栄養素ごとに、なぜそれが便秘に良いのかをご説明しながら、食材をご紹介していきます。また、食べるときの注意点等も合わせて触れていきたいと思います。■食べ物が便秘によいとはどういうことか?
便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことを言い注1、その原因や症状の強さはさまざまです。生活習慣に問題がある場合もあれば、大腸など体の機能に問題がある場合もあります。軽い便秘の人もいれば、重い便秘の人もいます。大腸の機能に原因がある便秘や、重い便秘は、食べ物を変えるだけではすぐに解消しないかもしれません。それでも、便秘によい食べ物には、排便にプラスになる働きがありますから、これらを摂ることや、食べ方を工夫することで、軽い便秘を解消・改善したり、体が便を出す働きを助けたり、数週間単位で便通を良くしたりすることが期待できます。また、私たちの体や、腸内細菌の組成は、生活が変わると、それに合わせて緩やかに変化します。長期間便秘によい食生活をすることで、「便秘体質」も改善できるかもしれません。 関連リンク:「便秘の種類と原因」■便秘によい食べ物と、そのはたらき
では、便秘によい食べ物を、一定の根拠があるものだけに絞って、カテゴリー(栄養素または食材・食品群)毎に整理してみましょう。便秘によい食べ物には、それぞれ便秘の改善が期待できる理由があり、その機序はさまざまです。(1)食物繊維
食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解されず、大腸まで届く食品成分のことです。食物繊維は、栄養として消化吸収されないにも関わらず、ヒトの健康な生活のためには不可欠な成分であり、便秘によい食べ物の筆頭格です。野菜やキノコ、海藻、いも類、穀物など様々な食材に含まれています。食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられ、それぞれ違うはたらきで便通を良くします。・水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、便をやわらかくしてくれる上に、体によい善玉菌とよばれる腸内細菌のエサになり、これを増やすことで腸内環境を改善してくれます。更に、水溶性食物繊維を善玉菌が分解するときに発生する短鎖脂肪酸(酪酸や酢酸など)という物質は、大腸が動く時のエネルギー源になるので、大腸の動きが促進され注2、便秘の改善が期待できます。 関連リンク:「腸内細菌と、健康・便秘」/「便秘を改善する食材:海藻」・不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、便のカサをふやしてくれて、快便のときの「ドッサリ」感のもととなります。アメリカでの研究によると、便秘症の人147人に植物性の食物繊維(インドオオバコの種子15〜30g/日:不溶性食物繊維を多く含む)を投与したところ、約4割の65人が治癒または改善しました注3。この4割の人は、大腸の動きと便の排出機能に問題がない、便の量が足りないことで引き起こされる便秘のタイプの人たちだったそうです。ダイエットなどで食事を少なくすると便秘になる場合がありますが、そういう時にも食物繊維(不溶性食物繊維はたいていカロリー0です)を積極的に食べるようにしましょう。 関連リンク:「ダイエットと便秘」/「うんちと便秘」 なお、健康維持のためには水溶性・不溶性の両方をバランスよく摂るようにしてください。便通のために最適な水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、経験と臨床研究から1:2であると言われています注4。下の表を参考に、バランスよく摂ることを心がけてください。 現代の日本人は、食生活の欧米化もあって、食物繊維の摂取量が不足しています。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、女性18 g以上、男性21 g以上(ともに18~64歳の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めていますが、実際の摂取量は、だいたい15g程度で、2割前後不足しています。せめて毎日あと1品、食物繊維が豊富な食材を摂るようにしたいものです。 関連記事:「野菜と便秘の話」/「腸内環境と便秘 ② 発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用」 ★ 食物繊維を多く含む食材 水溶性食物繊維:海藻、果物、さといも、きのこ(なめこに多い)、もち麦、オートミール 不溶性食物繊維:ゴボウ、穀類、野菜、きのこ(えのき・しめじに多い) ★主な野菜の、食物繊維含有量
日本食品成分表 八訂から当社作成(可食部100g中) ★主な穀物の、食物繊維含有量(g) 食物繊維総量 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 ごぼう 5.7 2.3 3.4 ブロッコリー 5.1 0.9 4.3 えだまめ 5.0 0.4 4.6 たけのこ 3.3 0.4 2.9 さつまいも 2.8 0.9 1.8 かぼちゃ 2.8 0.7 2.1 にんじん 2.8 0.7 2.1 ほうれんそう 2.8 0.7 2.1 ねぎ 2.5 0.3 2.2 さといも 2.3 0.8 1.5
日本食品成分表 八訂から当社作成(可食部100g中) ★主なきのこの、食物繊維含有量(g) 食物繊維総量 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 もち麦 12.9 9.0 3.9 オートミール 9.6 3.2 6.4 そば 3.7 1.6 2.1 玄米 3.0 0.7 2.3 小麦粉(薄力粉) 2.5 1.2 1.3 白米 微量 0.6 0.6
日本食品成分表 八訂から当社作成(可食部100g中) ★主な果物の、食物繊維含有量(g) 食物繊維総量 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 しいたけ 4.5 0.4 4.1 えのき 3.9 0.4 3.5 ぶなしめじ 3.5 0.3 3.2 なめこ 3.4 1.0 2.4
日本食品成分表 八訂から当社作成(可食部100g中)(g) 食物繊維総量 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 ブルーベリー 3.3 0.5 2.8 キウイ 2.5 0.7 1.8 プルーン 1.9 0.9 1.0 りんご 1.5 0.3 1.2 バナナ 1.1 0.1 1.0 (2)レジスタントスターチ
レジスタントスターチとは近年注目されている成分で、食物繊維と同じような性質をもつ糖質です。レジスタントの意味は「抵抗する」、スターチは「でん粉」、合わせて、消化されないでん粉を指します。通常のでん粉がヒトの小腸で消化吸収されるのに対して、難消化性のでん粉は、小腸では消化されずに大腸にまで届きます。不溶性食物繊維のように便の「ドッサリ」感を増すタイプのものや、水溶性食物繊維のように腸内の善玉菌のエサになり、これを増やして腸内環境を改善したり、大腸が動く時のエネルギー源・短鎖脂肪酸を生み出すタイプのものがあります注5。 ★ レジスタントスターチを多く含む食材 不溶性食物繊維タイプ:全粒穀物(玄米など) 水溶性食物繊維タイプ:バナナ 関連リンク:「便秘を改善する食材:バナナ」(3)難消化性オリゴ糖
オリゴ糖は、別の言い方では小糖類と言いますが、構造がやや複雑な糖類を示す言葉です。沢山の種類があり、消化酵素で分解できるものとできないものがあります。分解できるオリゴ糖は、小腸で栄養として吸収され、ふつう大腸には届きません。難消化性のオリゴ糖は、小腸で消化吸収されることなく大腸に届きます。そして腸内の善玉菌のエサになり、これを増やして腸内環境を改善したり、大腸が動く時のエネルギー源である短鎖脂肪酸を生み出します。 ★ 難消化性オリゴ糖を多く含む食材 玉ねぎ、大麦、小麦、バナナ、にんにく、アーティーチョーク 関連リンク:「便秘を改善する食材:バナナ」(4)良質なオイル
オリーブオイルのような良質なオイルは、便秘に良いと考えられています。オリーブオイルには、オレイン酸という脂肪酸が多くふくまれています。脂肪酸というのは、脂質の構成要素で、非常にたくさんの種類があり、体に良いものから、摂りすぎると体に悪いものまで様々です。このオレイン酸は、脂肪酸の中でも特に体によい部類で、多く摂取している人は長生きしているという調査報告もあります注6(105歳まで医療の現場に立たれた聖路加国際病院の故・日野原重明医師も、毎朝オリーブオイルを飲んでいたそうです)。 関連リンク:「便秘を改善する食材:オリーブオイル」 オレイン酸は、長鎖脂肪酸といって、構造が複雑なため、小腸で吸収されずに大腸に届き、大腸の壁を刺激します。オレイン酸に刺激されると大腸の動きが活発になり注7、便秘を改善します。また、オレイン酸のような大腸まで届く油分は、便が大腸の中でなめらかに動く滑腸作用があると考えられており、昔からある一部の漢方便秘薬(麻子仁丸、潤腸湯)にも、オレイン酸を含む植物性の脂分が入っています。 関連リンク:「生薬の便秘薬と、漢方の便秘薬」 国内で流通している家庭用のオリーブオイルの多くは、風味もよく、健康によい栄養素も豊富な「エクストラバージンオイル」という最上級のグレードのものですが、やや安価な「ピュアオイル」と呼ばれるものでも、便秘改善効果はあります。 ところで余談ですが、(1)から(3)までで何度も登場した短鎖脂肪酸でについても、そんなに腸に良いなら、長鎖脂肪酸のように食べ物で摂ればよいと思いませんか?実は、短鎖脂肪酸はお酢やバターに多く含まれてはいるのですが、こちらは構造が単純なので、小腸で消化吸収されてしまい、口から食べても大腸には届かないのです。そのため、(1)~(3)の難消化性の成分を食べて、腸内細菌に分解してもらわないといけないのです。善玉菌のチカラを借りることで初めて得られる物質があるというのも面白いですね。「MCTオイル」が便秘によいってホント? MCTオイルというのは、ココナッツやパームに含まれる中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglcerides)を抽出して作ったオイルで、まだまだ市場規模は小さいですが、近年広がりを見せています。消化吸収が早く、また体脂肪になりにくいことが魅力です。このMCTが便秘に良いといわれることがありますが、いまのところ、この記事で取り上げた他の栄養素と同じレベルのエビデンスや、使用経験の蓄積による裏付けは、ありません。
(5)発酵食品やヨーグルト
味噌や納豆などの発酵食品や、ヨーグルト(これも正確に言えば発酵食品に含まれますが)には、乳酸菌・ビフィズス菌・納豆菌などの多くの善玉菌や、善玉菌をサポートする菌が含まれており、これを食べることが、便秘を改善することにつながります。善玉菌等を食べて腸内環境を良くすることは、100年にわたって研究が続けられていて、信頼できるデータも蓄積されています。近年では「プロバイオティクス」とも呼ばれています。 善玉菌を食べると、大腸内で善玉菌が増え、悪玉菌が減り、悪玉菌が出す有害物質も減ることが分かっています。その際、食べた菌そのものが腸で定着することは稀で、生きた菌を食べても、死んだ菌を食べても、同様の整腸効果があることが分かっています注8。善玉菌が増えると、大腸のエネルギー源である短鎖脂肪酸がより作られるようになり、大腸の蠕動運動が活発になり、便通が改善されるのです注9。 ヨーグルトについては、沢山の菌種のものが発売されています。同じ種類を1~2週間続けて食べてみて、自分のカラダにあっていそうなものを選び、できれば毎日食べるようにしましょう。 ★ 腸内環境改善に特に良い発酵食品 ヨーグルト・ぬか漬け・納豆・キムチ・味噌・醸造酢・酒粕・甘酒・チーズ 関連リンク:「腸内環境と便秘 ① 腸内フローラ/ヨーグルト」/「腸内細菌と、健康・便秘」◇ ◇ ◇ ◇
<まとめ> 便秘によい食べ物と、そのはたらき
栄養素によって便秘改善の機序が異なりますし、便秘の原因や、お腹の中の腸内細菌の種類や構成割合にも、個人差があります。そのため、それぞれの食べ物の効果の程は人によって違い、万人に共通の「腸によい食べ物のランキング」は、残念ながら作ることができません。ここは、もどかしいところです。カテゴリー 主なはたらき 水溶性食物繊維 便をやわらかくする 善玉菌を増やす 腸のエネルギーを生み出す 不溶性食物繊維 便のカサを増す レジスタントスターチ 水溶性・不溶性食物繊維と同様 (タイプによる) オリゴ糖 善玉菌を増やす 腸のエネルギーを生み出す 良質なオイル 大腸の動きを促す 便をスムーズに動かす 発酵食品やヨーグルト 善玉菌を増やす 腸のエネルギーを生み出す ■ピックアップ食材
続いて、ここまで見てきた食品のはたらきを踏まえて、特におススメの、2つの食材をピックアップしてご紹介します。(1)バナナ
バナナには、レジスタントスターチ、食物繊維、オリゴ糖という3種類の腸によい成分が、豊富に含まれています。また、朝食時に食べやすいこと、忙しい時の朝食替わりになることも魅力です。あとで述べますが、便秘対策として、朝食べ物を胃に入れることはとても大切だからです。バナナについては、次の記事にしっかりとまとめてありますので、内容が一部重複しますが、ぜひご覧ください。焼きバナナのレシピ付きです。 関連リンク:「便秘を改善する食材:バナナ」(2)オートミール
オートミールとは、イネ科の燕麦(えんばく・オーツ麦)を脱穀して食べやすく加工した食品です。オートミールは、便秘改善や健康増進に役立つ食物繊維が豊富で、しかも、その食物繊維が、腸内環境を整えながら便のカサも増やすことが期待できる、理想的なバランスで構成されているのが魅力です。また、バナナ同様、朝食にしやすいこともあり、選びました。次の記事に詳しくまとめてありますので、ぜひご覧ください。簡単なレシピ2品分が載っています。 関連リンク:「便秘を改善する食材:オートミール」■便秘によい食生活の注意点
最後になりますが、便秘によい食べ物をメニューに取り入れるときには、いくつか気を付けていただきたいことがあります。次の注意点を念頭において、食べる腸活をエンジョイしていただければと思います。 ・一つの食材を一度に食べ過ぎない どの食材も、食べ過ぎるとお腹が緩くなったり、場合によっては便秘がひどくなったりします。特に不溶性食物繊維は、食べ過ぎるとお腹が張ってしまうことがあります。 ・栄養バランスに気をつける 申し上げるまでもないことですが、食事はたくさんの食材をバランスよく摂ることが大切です。便秘対策で健康を崩しては、本末転倒です。 ・朝食を抜かず、規則正しい食生活を送ろう 便秘対策のためには、朝食を抜かないことが大切です。朝食が胃に入ると、それが引き金になって大腸が大きく動き、内容物を肛門近くまで運んでくれる「胃結腸反射」という作用が起こることが分かっています。また、規則正しい食生活を送ることで、毎日の生活のリズムができあがり、排便リズムも整います。 関連リンク:「便秘と便意」 ・長く続ける 腸によい食べ物は、長く食べ続けるようにしましょう。今回取り上げた食べ物で便通が改善することは、多くの研究を通じてわかっています。しかし、多くの場合、1日で効果が出るわけではないですし、また何日か続けることで便通が良くなっても、食べるのをやめたら効果がなくなってしまいます。適量を長く食べ続け、習慣にすることで、食生活そのものを腸に良いものに変えてしまいましょう。◇ ◇ ◇ ◇
複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、配合されているダイオウが、腸の動きを促して、便秘を改善します。食生活だけで便秘が改善しない場合には、試してみてください。 関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイト/おすすめの服用方法/複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム 関連リンク:「便秘薬をのむ時に大切なこと」 便秘薬を飲むほどでもないという場合は、整腸薬で腸内環境を整えてあげるのもおすすめです。毒掃丸整腸薬は、乳酸菌と消化酵素と4種類の生薬を配合した、シナモンのような爽やかな香りがする、のみやすい整腸薬です。ぜひ一度お試しください。 関連リンク:毒掃丸整腸薬の製品案内/毒掃丸整腸薬の無料サンプルお申し込みフォーム◇ ◇ ◇ ◇
姉妹記事「便秘によい飲み物」の目次も、ご紹介します。合わせて読んでみてください。 「便秘によい飲み物」 ■便秘と水分の関係 ■便秘によい飲み物 (1)水の飲み方 ・水道水 vs ミネラルウォーター ・冷水 vs 白湯 (2)お茶類 (3)野菜を入れたスムージーや青汁 (4)バナナジュースや豆乳、コーヒー (5)乳酸菌などを含む飲料 ■便秘によい飲み物の限界 (最終更新日:2022年12月15日) 注1:日本消化器病学会関連研究会ほか編『慢性便秘診療ガイドライン 2017』南江堂 2017年、p.2。注2:坂 田 隆, プ レバイオ ティクスか ら大腸 で産生 され る短鎖脂肪酸 の生理効果, 腸内細菌学雑誌, 2002; 16: p35-42や、P.S. Kamath, et al., Short-Chain Fatty Acids Stimulate Ileal Motility in Humans, Gastroenterology, 1988; 95(6), p1496-1502. 注3:Voderholzer WA et al., Clinical response to dietary fiber treatment of chronic constipation. Am J Gastroenterol. 1997 Jan ; 92(1) : p95-8. 注4:たとえば、松生クリニック院長の松生恒夫医師の日経グッディでの記事など。 注5:海老原 清, レジスタントスターチの栄養・生理機能, 日本調理科学会誌, 2014 ; 47(1) : p.49~52. 注6:Marta Guasch-Ferré, et al., Consumption of Olive Oil and Risk of Total and Cause-Specific Mortality Among U.S. Adults, Journal of the American College of Cardiology,2022; 79(2): p101-112, 他にもオリーブオイルが様々な疾患のリスクを下げるという報告がある。注7:Spiller RC, et.al,. Decreased fluid tolerance, accelerated transit, and abnormal motility of the human colon induced by oleic acid. Gastroenterology. 1986 Jul;91(1):100-7. 注8:光岡知足:プロバイオティクスの歴史と進化.日本乳酸菌学会誌,22:26-37,2011. 注9:Sakata T, et al., Michibata T. Influences of probiotic bacteria on organic acid production by pig caecal bacteria in vitro. Proc Nutr Soc. 2003 Feb ; 62(1) : p.73-80. ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)腸内細菌と、健康・便秘
2022.05.22私たちの腸の中には、腸内細菌と呼ばれる大量の微生物が棲んでいます。この腸内細菌たちが作り出す腸内環境は、私たちの健康そのものや、便秘と深い関わりがあります。今回は、そんな腸内細菌について、その正体や、健康・便秘との関わりを探っていきます。その中で、腸内環境を整えるための対策、腸内細菌とおならやうんちとの関係などについてもふれてみたいと思います。■腸内細菌とは
腸内細菌とは、その名のとおり腸の中にいる細菌のことですが、人のおなかの中で共に生きている、無数の住民たちだと言えます。その数はおよそ100兆個、1000種類もいて注1、全部あわせると、その重さは1~1.5kgあるといわれています。 細菌というのは、生命誕生のころから地球にいる、私たちのいわば先輩であり、肉眼では見えませんが、地球上のいたるところに沢山います。私たちや動物・植物を含む真核生物は、まだ単細胞生物だったころに、細菌から枝分かれした存在です。細菌は、私たちと大きさが違うだけでなく、根本的なところで異なる生き物です。真核生物がみな持っている、DNAを包む核という入れ物がなく、細胞小機関(ミトコンドリアなど)もない、非常にシンプルな構造をしています。その影響もあるのでしょう、何十億年たってもみな単細胞で、大きさはたいてい1ミリの1000分の1ほどと小さいです。種類によって棒状、球状、枝分かれ状などのカタチをしており、鞭毛という、回転する毛のような運動機関がついているものもあります。 ただ、細菌たちの営みは基本的には私たちと同じで、環境中から必要な物質を取り込み(細菌のタイプによって、その物質は異なります)、そこからエネルギーを取り出し、エネルギーを取り出す際に発生した代謝物を吐き出しています。中には人の体に病変を引き起こす悪い物質(=毒素)を出す種がいて、それが病原菌と呼ばれています。細菌は、分裂して増殖し、そのスピードは非常に速いです。 環境中にある様々な細菌のうちで、人を殺さず、かつ腸内の環境に適したごく限られたものたちが、腸内細菌としてお腹の中で100兆個まで増殖し、私たち一人ひとりと共生しているのです。■ヒトの腸の環境と、腸内細菌の居場所
次に、細菌たちが暮らす人間の腸の中の環境と、細菌の居場所についても見てみましょう。腸は、大雑把に分けると、胃の出口から始まる6メートルくらいの長さの小腸と、小腸が終わった後、肛門までの間の1.5メートルほどの長さの大腸に分けられます。そして小腸は、細かくは上から順に十二指腸、回腸、空腸という3つの部位に分けられます。そんな腸の中でも、細菌たちのほとんどは、小腸の終わりの方と、大腸に棲んでいます(下図)。細菌たちは、胃袋にはほとんどおらず、小腸下部である回腸のあたりで細菌の密度が口腔内の唾液と同じ程度になり、大腸では、回腸より遥かに高い密度になります注2。 こうした部位ごとの分布は、細菌たちが棲み易い場所で増殖し、そうでない場所では増えにくいことで成立しています。まず、胃酸には殺菌効果があるため、胃に近い環境は、細菌にとっては厳しい環境です。また、消化管は大腸に近づくほど酸素濃度が減っていきます。これは、腸に入った酸素が少しずつ腸壁から血中に移行するのと、腸管上部には酸素を消費する細菌がいるためです。腸内細菌の多くは酸素が嫌いなので、酸素がほとんどなくる大腸は居心地がよく、爆発的に数が増えるのです。 腸の内側は、温度は36~37度で安定しています。そして、腸壁の構造は小腸と大腸で異なるものの、どちらも粘液で全面が覆われており、腸の内容物が腸壁と直接接しないようにできています。この粘液層に覆われた腸管の中を、食べ物と消化液がドロドロに混じり、徐々に吸収されながら進んで行きます。腸壁を覆う腸管粘液は、ムチンという粘性物質でできています。ムチンは人間や動物の体ではよく見られる粘液の素で、例えば、ウナギの体表がヌルヌルは、ムチンの一種でできています。この粘液層は特に大腸で厚く、1㎜近くもあります。腸内細菌たちは、腸の内容物の中や、腸管のヌルヌルの粘液層の表面、あるいはこの粘液層の中に棲んでいます。 関連リンク:「日本人の腸について 日本人の大腸は長いの?形が変なの?」/「宿便の話」■腸内細菌と人体
(1)善玉菌と悪玉菌
腸内細菌を良く知ろうとすると、1000種類の菌をどう分類するかという問題に突き当たります。生物学上の系統だった分類法や、観察の時の染色に染まるか染まらないか、酸素があっても生きられるか、等々、多くの正式な分類方法があります。ただ、いずれも難解なので、有名な「善玉菌」「悪玉菌」に分ける説明の仕方が、腸内細菌のはたらきを理解するためには、いちばん分かり易いと感じます。 腸の中には、体に良い働きをする善玉菌、悪い影響をもたらす悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌の3つのタイプがいます(下図)。善玉菌は、主に食物繊維や炭水化物を分解して大腸のエネルギーになる短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸など)を作ることで、大腸の働きを助け、我々の健康全体を維持する働きをします。悪玉菌は、主に肉などのタンパク質を分解し、有害物質を産出します。この2タイプと、日和見菌と呼ばれるそれ以外の菌が、腸内で勢力をせめぎ合っているのです。そして、腸の中で善玉菌が優勢ならば、良い腸内環境と言え、悪玉菌が優勢になると、腸内環境は悪化し、便秘を引き起こしたり、有害物質が多く発生してしまったりします。 ★系統分類別の、主な腸内細菌のグループ Firmicutes:ファーミキューテス門(乳酸菌、酪酸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌など) Bacteroidetes:バクテロイデス門(バクテロイデスなど) Proteobacteria:プロテオバクテリア門(大腸菌など) Actinobacteria:アクチノバクテリア門(ビフィズス菌など)(2)年齢と腸内細菌
腸内細菌の組成は、人によって違いますが、同じ人でも年齢によって変化していきます。人間は、胎児の時の体内は無菌で、腸内細菌を持っていません。それが、分娩時の産道を通る段階で母親のビフィズス菌を受け継ぐことがわかっています注3。そして母親の様々な部位や、環境中から取り込まれた細菌が、生後数日で赤ちゃんのお腹で増殖するようになります。母乳には、消化液では分解できないオリゴ糖という物質が多く含まれており、これがビフィズス菌など特定の菌のエサになります注4。腸内でどの菌が優勢になるかは、どの菌が好む栄養素を食べているかに依存しているので、離乳期までは、母乳に含まれるオリゴ糖を食すビフィズス菌が腸内の最大勢力です。 なお、授乳期の腸内環境は免疫機能の確立のためにも大切で、生後1年までに抗生物質などで腸内環境を乱してしまうと、炎症性の腸疾患になる確率が上がる可能性が指摘されています注5。 離乳期に入ると、タンパク質や糖質など様々な栄養素を食べるようになることから、2~3歳以降は成人同様の組成となり、腸内の細菌の構成も多様になります。その後、成人期を通じて腸内細菌の組成は比較的安定しているのですが、70歳くらいから、腸内環境は再び変化します。ビフィズス菌などの善玉菌が減少し、大腸菌などの悪玉菌が増加してしまうのです。その原因としては、健康状態の変化(例:咀嚼・嚥下・消化機能の低下)、低栄養、お薬の影響、生活環境の変化などが考えらえています。こうした腸内環境の変化が、健康状態に直接悪い影響を与えているかどうかまではわかっていません注6。 関連リンク:「高齢者の便秘」(3)おならやうんちとの関係
腸内細菌は、私たちの「おなら」や「うんち」とも深い関係があります。 まず、おならのガスのかなりの部分は、腸内細菌が作り出したものです。おならの大半は口から飲み込んだ空気である、と書いてあるサイトが今も多く見受けられまが、海外の研究で、食事をしてしばらくすると大腸の後半あたりで特にガスの量が急増することもわってきており注7、最近では、おならの大半は大腸で食物の残滓が腸内細菌に分解されることで発生していると考えられるようになっています注8。食物繊維や、消化されにくい炭水化物(レジスタントスターチ)、オリゴ糖といった成分は、善玉菌によって分解され、無臭のガス(メタンや水素)を発生させ、これがおならの素になります。一方で、タンパク質や硫黄分が悪玉菌によって分解されると、インドールやスカトールといったうんちのにおいの素や、卵の腐ったにおいがする硫化水素などの悪臭物質も生み出します。これがおならのくさい臭いの素になるのです。 関連リンク:「おならの原因と対策」 つづいて、うんち(便)ですが、便には腸内細菌の死骸がたくさん含まれています。便は、水分60~70%、腸壁細胞の脱落物15~20%、腸内細菌とその死骸10~15%、食物残渣5%で構成されています注9。腸内細菌は日々どんどん増殖しては死んでおり、その死骸は便の主要な構成要素になっているのです。また、多くの腸内細菌は、腸管の粘液層の中にいたり、線毛で粘液にくっついていたりしますが、便と一緒に排出されてしまう生きた菌もいます。便に菌がいっぱいいる(実はそのほとんどは無害)のはそのためです。 関連リンク:「うんちと便秘」(便の色や臭いにも腸内細菌が関係しますが、そのあたりはリンク先をお読みください)■腸内細菌と健康
腸内細菌が作り出す腸内環境は、人の健康と深い関係があります。肥満、糖尿病、大腸癌、炎症性腸疾患など様々な疾患と腸内環境は関係があり、これらの病気になっている人は、腸内細菌が健常者と比べて変化しているという報告があります。例えば、肥満の人の腸にはバクテロイデテス門に属する菌が少なく,ファーミキューティス門に属する菌が多いという指摘があります注10。また、心の病気と腸内環境も関係があります。例えば、うつ病患者には、健常者と比べてビフィズス菌と乳酸菌の一種の数が少ないことが報告されています注11。 更には、寿命と腸内細菌も関係があるようです。長寿者の腸内細菌についての研究も広く行われており、健康な人が多い地域では、年をとっても腸内細菌のバランスが若い人に近いという報告がいくつかあります。最近では、100歳を超える長寿者に、ある腸内細菌が多くみられ、その菌は、腸の中で、肝臓の分泌物である胆汁酸から病原菌に強い抗菌作用がある物質を作り出していることが明らかになるなど注12、知見が広がっています。 しかしながら、腸内細菌のカプセル一つで特定の病気から逃れたり、寿命を延ばしたりする治療法は、まだありません。結局は、腸内細菌の多様性を保つことと、善玉菌を増やすことが健康の秘訣です。バランスの取れた食生活をしたうえで、次の次の項で挙げるような、善玉菌のエサになるような食品をより多く食べるように心がけましょう。■腸内細菌と便秘
便秘と腸内環境にも、深い関係があります。まず、腸内の善玉菌が少ないと、腸のエネルギーのもとである短鎖脂肪酸が減ってしまいます。短鎖脂肪酸は、腸の蠕動運動のエネルギー源なので、腸の動きが悪くなって便秘になることが考えられます。 ただ、便秘の人の腸内環境が健常者と比べて実際にどう違っているかは、研究によって結果が様々で注9、実はよくわかっていません。なので、善玉菌の減少が実際に便秘を実際に引き起こしているという分かり易い証拠を示すことは残念ながらできません。 それでも、各種のヨーグルト、オリゴ糖や食物繊維などの善玉菌のエサになるような食べ物を多く食べると便通が良くなることは、多くの研究から明らかです。便秘の解消・改善や、予防のためには、次の項で挙げるような方法で、善玉菌を増やすようにしましょう。■良い腸内環境を手に入れよう
善玉菌優位の腸内環境を整えるには、善玉菌が増えやすくなる食生活をすることが大切です。腸内環境を整える4つの方法について、ご説明しますので、実践してみてください。(1)自分に合ったヨーグルトを食べる
ヨーグルトとは、牛などの乳に乳酸菌や酵母で発酵させた食品で、古くから健康によいことが知られています。ヨーグルトには、タンパク質や脂質の他に、乳酸菌・ビフィズス菌といった善玉菌を多く含んでおり、摂取することが便秘改善に有効であることを示す様々な研究成果があります。ヨーグルトの菌種によって相性の良し悪しがあり、人によって合う製品とあわない製品があるようです。自分に合ったヨーグルトを探して、できれば1日100~200g程度食べるようにしましょう。 関連リンク:「腸内環境と便秘 ① 腸内フローラ/ヨーグルト」(2)発酵食品を食べる
発酵食品には、発酵を引き起こす菌類が多く含まれています。そうした菌の中には、腸内の善玉菌そのものや、腸内の善玉菌の数を増やしてくれる働きをするものが多くあります(例:乳酸菌・納豆菌・酪酸菌等)。また、多くの発酵食品には、オリゴ糖や食物繊維(いずれも後述)といった腸内の善玉菌のエサになったり、腸内の環境を整えてくれる栄養素が多く含まれています。 ★ 腸内環境改善に特に良い発酵食品 ヨーグルト・ぬか漬け・納豆・キムチ・味噌・醸造酢・酒粕・甘酒・チーズ(3)オリゴ糖が多い食品を食べる
オリゴ糖は、別の言い方では小糖類と言いますが、構造が少しだけ複雑な糖類を示す言葉であり、沢山の種類があります。中でも、ヒトの消化酵素では分解されず大腸まで届き、腸内細菌によって分解される難消化性オリゴ糖は、腸内の善玉菌のエサになります。積極的に摂って、腸内の善玉菌が増える手助けをしてあげましょう。 ★ 難消化性オリゴ糖を多く含む食材 タマネギ・ニンニク・チコリ・アスパラガス・キャベツ・ネギ・ゴボウ・豆乳・バナナ 関連リンク:「便秘を改善する食材:バナナ」(4)食物繊維を食べる
食物繊維とは、ヒトの消化酵素で分解されず、大腸まで届く食品成分のことです。栄養として消化吸収されないにも関わらず、ヒトの健康な生活のためには不可欠な成分です。 食物繊維は、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けられます。水溶性食物繊維は、便をやわらかくしてくれる上に、善玉菌のエサになり、結果として善玉菌を増やしてくれます。不溶性食物繊維は、便のカサをふやしてくれて、快便のときの「ドッサリ」感のもととなります。腸内フローラを改善してくれるのは水溶性食物繊維の方ですが、健康維持のためには水溶性・不溶性の両方をバランスよく摂るようにしてください。 そんな食物繊維を多く含む食材は、次の通りです。 ★ 食物繊維を多く含む食材 水溶性食物繊維:海藻、果物、さといも、きのこ(なめこ・しいたけに多い)、オートミール 不溶性食物繊維:大豆、ゴボウ、穀類、野菜、きのこ(えのき・しめじに多い) ★主な野菜の、食物繊維含有量
食物繊維含有量が多い主な野菜(日本食品成分表 八訂から当社作成) 関連リンク:「野菜と便秘の話」/「便秘を改善する食材:オートミール」/「便秘を改善する食材:海藻」(g) 食物繊維総量 水溶性食物繊維 不溶性食物繊維 ごぼう 5.7 2.3 3.4 ブロッコリー 5.1 0.9 4.3 えだまめ 5.0 0.4 4.6 たけのこ 3.3 0.4 2.9 さつまいも 2.8 0.9 1.8 かぼちゃ 2.8 0.7 2.1 にんじん 2.8 0.7 2.1 ほうれんそう 2.8 0.7 2.1 ねぎ 2.5 0.3 2.2 ピーマン 2.3 0.6 1.7 番外編:腸内環境のセルフチェック
腸内環境が善玉菌優位であるかどうかは、便の状態でチェックできます。便の色が黄色から黄色がかった褐色で、においがあっても臭くない状態なら合格です!◇ ◇ ◇ ◇ ◇
腸内環境は、整腸薬を服用することでも改善できます。 毒掃丸整腸薬は、乳酸菌と消化酵素と4種類の生薬を配合した、シナモンのような爽やかな香りがする、のみやすい整腸薬です。ぜひ一度お試しください。関連リンク:毒掃丸整腸薬の製品案内/毒掃丸整腸薬の無料サンプルお申し込みフォーム 腸内環境の改善で便秘が改善しない場合は、市販の便秘薬も活用してみてください。複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイト/おすすめの服用方法/複方毒掃丸サンプルお申込受付フォーム (最終更新日:2022年12月15日) 注1:Ruth E Ley, et al. Ecological and Evolutionary Forces Shaping Microbial Diversity in the Human Intestine, Cell. 2006 Feb 24;124(4):837-48. 注2:安藤 朗, 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能, 日内会誌 2015; 104:p29~34. 注3:Makino H. et al, Mother-to-Infant Transmission of Intestinal Bifidobacterial Strains Has an Impact on the Early Development of Vaginally Delivered Infant’s Microbiota. PLoS ONE. 2013 ; 8(11). 注4:Bode L. Human milk oligosaccharides: every baby needs a sugar mama. Glycobiology. 2012 Sep ; 22(9) : p1147-62. 注5:安藤 朗, 腸内細菌の種類と定着:その隠された臓器としての機能, 日内会誌 2015; 104:p29~34. 注6: 新井 万里ほか, 腸内フローラと老化, 日本老年医学会雑誌 2016; 53 (4 ) : p318~325. 注7:F. Perez et al, Gas Distribution Within the Human Gut: Effect of Meals, Am J Gastroenterol. 2007; vol102-4 : p842-9. 注8:例えば、Jonathan Gotfried、ガスが関連する愁訴、MSDマニュアルプロフェッショナル版、最終査読/改訂年月 2020年 3月. 注9:本間研一 監修, 標準生理学 第9版, 医学書院, 2019; p.880, 注9:尾﨑 隼人ほか, Ⅲ.慢性便秘症の治療 各論(便秘症と腸内フローラ), 日本大腸肛門病会誌 2019;72:p609-614. 注10:参考文献:入江 潤一郎ほか, 腸内細菌叢と肥満症, 日内会誌 2015; 104 : 703-709. 注11:Aizawa E, et al. Possible association of Bifidobacterium and Lactobacillus in the gut microbiota of patients with major depressive disorder. J Affect Disord. 2016 ; 202 : 254-7. 注12:Sato Y, et al. Novel bile acid biosynthetic pathways are enriched in the microbiome of centenarians. Nature. 2021 Nov ; 599(7885) : 458-464. ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)腸内環境と便秘 ① 腸内フローラ/ヨーグルト
2021.08.25腸内の環境を整えてあげることは、健康増進大切です。2回シリーズで、腸内環境を良くして便秘を改善するための方法についてまとめてみました。今回は、まず腸内環境の話題に良く出てくる「腸内フローラ」とは何かを概観し、その後で、ヨーグルトの摂取が腸内フローラを改善し便秘を改善することをご説明します。その中で、自分に合ったヨーグルト選びについても触れたいと思います。ぜひご一読のうえ、みなさまの腸活にヨーグルトをぜひご摂り入れて頂きたいと思います。そして、次回は発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用について記していきます。ぜひ合わせてご覧ください。■腸内フローラとは
私たちの腸の中には、約100兆個もの細菌(腸内細菌)がいて、その状態(腸内環境)は、健康と密接に関係しています。これらの腸に棲みついている細菌群全体は、腸内フローラと呼ばれています。フローラとは植物相を指す言葉ですが、ローマ神話の花と豊穣と春の女神と同じ名前なので、華やいだ好印象を抱かせます。 ちなみに、初期ルネサンス期のイタリア人画家 ボッティチェリの代表作の1つ『プリマヴェーラ』(図1)に描かれた、右から3人目の花柄の服を着た女性がフローラです。 図1.『プリマヴェーラ』のフローラ(右から3人目) 腸内フローラの中で暮らす腸内細菌は、体に良い働きをする善玉菌、悪い影響をもたらす悪玉菌、どちらにも属さない日和見菌に分類できます(図2)。腸の中で善玉菌が優勢ならば、良い腸内環境と言え、悪玉菌が優勢になると、腸内環境は悪化し、便秘を引き起こしたり、有害物質が多く発生してしまったりします。(悪玉菌の体への影響は、便秘とデトックスについての記事でも説明しています) つまり、「腸内フローラを改善する」とか「腸内環境を整える」とは、善玉菌が優勢な腸内環境を作ってあげることなのです。善玉菌は、大腸のエネルギーになる物質を作ったり、悪玉菌の増殖を抑えたりして、私たちの健康の維持に貢献してくれます。また、良好な腸内フローラを維持できている人は、便やおならが臭くなりにくいというメリットもあります。 関連記事:「うんちと便秘」/「おならの原因と対策」 図2. 腸内細菌の一般的な分類 当社作成肥満と腸内細菌の関係 腸内環境を整えるメリットは数多くあると考えられています。例えば、近年では、腸内フローラと肥満の関係についての研究が注目を集めています。肥満の人とそうでない人を比較すると、腸内細菌の構成が異なることがわかってきたのです注1。肥満の人の腸には特定の細菌の割合が少なく、こうした違いが食事からら取り込むエネルギー量に個人差をもたらし、肥満の原因の1つになっていると考えられるようになっています。まだ研究者の間での議論が続いており、具体的な肥満症の治療法やダイエット法は見出されていませんが、今後の研究の進捗が待たれるところです注2。
腸内環境は、主に年齢や食生活によって変化します。 乳児の腸内細菌は、母乳に含まれる乳糖やオリゴ糖をエサにする善玉菌が大半を占めています(赤ちゃんのうんちが臭くないのは、悪玉菌がいないからでもあります)。そして、固形食を食べるようになって以降、食べ物が多様になったのに比例するかのように、図2に示したような複雑な腸内フローラが形成されていきます。そして善玉菌は、残念ながら加齢により減少してしまいます。ビフィズス菌などを含むアクチノバクテリア門の細菌は、60歳くらいから大きく減少し、100歳を超える被験者たちからはほとんど検出されないという研究結果が出ています注3。年を重ねるにつれ、腸内環境の改善を、より意識したほうが良さそうです。 腸内フローラの状態が良くなるか悪くなるかには、食生活が大きく関わってきます。腸内細菌は、種類によって食べる(=代謝する)ものが異なるので、肉をたくさん食べれば、タンパク質を好む悪玉菌の数が増え、善玉菌が好む食物繊維などの食べ物をたくさん食べれば、善玉菌が増えます。また、後述するように、善玉菌自体を食べることによって、腸内環境を良くすることが可能です。そのため、食文化が異なる国を比較してみると、腸内フローラの組成が異なっているそうです注4。食べるものを工夫することは、手軽に腸内環境を改善する方法であり、腸活の王道です。 なお、腸内環境を維持していくにあたっては、抗生物質の濫用は避けたほうがよいでしょう。抗生物質は、病原菌を退治してくれるありがたい薬ですが、腸内の有用な細菌まで殺してしまい、腸内フローラのバランスを崩してしまいます。ウイルス性の風邪などでは抗生物質の服用は不要ですから、医師とよく相談して指示されたとおりの服用にとどめ、腸内環境を守りましょう。 ところで、抗生物質により腸内細菌が減ってしまうと、薬を服用した際の効き目にも影響を及ぼすことがあります。例えば、当社の便秘薬・毒掃丸は、有効成分の中に、腸内細菌によって分解されたあとに薬効を発揮するもの(ダイオウ)を含んでいますから、腸内細菌が少なくなっていると、効果が弱まってしまうかもしれません。 ————————————————————————- では、おススメの腸内環境改善方法4つを、今回(その1)と次回(その2~4)に分けてご紹介します。■おススメの腸内環境改善方法 前編
自分に合ったヨーグルトを食べる
腸内環境を良くするために、自分に合ったヨーグルトを見つけて毎日食べてみましょう。ヨーグルトとは、牛などの乳に乳酸菌や酵母で発酵させた食品で、古くから健康によいことが知られています。ヨーグルトには、タンパク質や脂質の他に、乳酸菌・ビフィズス菌といった善玉菌を多く含んでおり、摂取することが便秘改善に有効であることを示す様々な研究成果があります。しかしながら、どの菌をどのくらい摂取すれば便通が改善するのかについては、まだエビデンスが十分にありません注5。 お店で売られているヨーグルトには、実に様々な種類があります。それぞれのヨーグルトに含まれている乳酸菌・ビフィズス菌は、メーカーやブランドごとに色々な菌種のものがあり、異なる菌種では、代謝過程や、産出する乳酸のタイプ(異性体)や、産出する乳酸以外の生成物が異なります。ヒトの腸内にいる細菌の種類と割合は、人によって大きく異なるので、ヨーグルトの菌種によって相性の良し悪しがあり、人によって合う製品とあわない製品があるようです。 ◆自分に合ったヨーグルトの見つけ方 そこで当社では、自分にあったヨーグルトを見つけるために、同じ銘柄のヨーグルトを1~2週間食べ続けてみることをおススメしています。摂取量は、できれば1日100~200g程度。そして、おなかがグルグルと動くような状態になるものが、自分に合うヨーグルトと考えられます。お腹の調子が良くない場合や、効き目を感じない場合は、今とは違うタイプの菌が使われているヨーグルトに代えてみましょう。トクホと機能性表示食品 特定保健用食品(トクホ)とは、健康増進に良い影響があり安全であることを、消費者庁が個別に審査して認めた食品です。令和3年11月末時点で、「はっ酵乳」(ヨーグルト)では47品目が認められていて、ほとんどが腸内環境の改善をうたっています。機能性表示食品とは、同様の根拠を消費者庁に届け出た食品です。成分名に「菌」を含む加工食品(多くがヨーグルト)では199件届け出されていて(2022年1月27日時点)、腸内環境改善の他にも幅広い機能をうたっています。一般的に、食品→機能性表示食品→トクホの順に発売の難易度は上がり、保健機能への信頼度は高くなります。但し、とちらも医薬品のような病気の治療や予防の機能はないこと、無冠のヨーグルトに体への良い影響がないとはいえないことを理解の上、お財布とも相談して商品を選びましょう(続けることにも、意義があります)!
自分に合ったヨーグルトに出会えたら、毎日食べ続けてみてください。食べる時間は、腸の活動が高まる夜がよいと言われていますが、時間ごとに効果を比較した研究は見当たりませんでした。無理せずきちんと続けられる時間に食べましょう(筆者は、毎朝+時々寝る前に摂っています)。朝に食べる場合には、栄養豊富で便秘改善にも良いバナナをカットしてヨーグルトの中に入れ、バナナヨーグルトにして食べることもおすすめです。朝食を用意する時間がないような忙しい朝でも、バナナヨーグルトならさっと作れるうえに、ヨーグルトだけを食べるよりもボリュームがあり、胃結腸反射(いけっちょうはんしゃ)という朝のお通じを促す体の機構を起動させることができます。 関連記事:ブログ記事「便秘を改善する食材:バナナ」/「便意と便意」 なお、ヨーグルトを食べ続けた場合に体重が減りやすいという嬉しい研究結果が多くあります注6。毎日のヨーグルト摂取で、ダイエットと腸内環境の改善の両方を目指してみましょう。(ダイエットをされる場合、ダイエットと便秘についての記事もご参照ください) ヨーグルトの市場は、便秘に関連する産業の中でも最大規模で、かつ最も急速に伸びています。ヨーグルト+乳酸菌飲料の市場は、2010年から2020年までの間に1.5倍に拡大したそうです(TPC調べ:日本経済新聞電子版2020年10月12日参照)。しかもその規模は、直近で7000億円近いとのこと。当社を含む便秘薬の市場はわずか約200億円弱で、長年横這いか微増ですから、違いに驚きます。 便秘の原因は様々であり、腸内環境を改善するだけで便秘しらずのお腹になれるとは限りません。ヨーグルトを食べるだけで万人の便秘の悩みをなくすことは難しいでしょう(実際、ヨーグルトの市場拡大にも関わらず、厚生労働省の調査では便秘有訴者数自体は長年ほぼ横ばいです)。とはいえ、前述の通り、善玉菌の摂取で便通が改善する人がいることははっきりしていますし、便秘以外にも、免疫力UPなど多くの効果が期待されています。ぜひ積極的に食べてみてはいかがでしょうか。 ヨーグルトを毎日食べても効果がなく、便秘が改善しない場合は、ヨーグルトをやめてしまうのではなく、違う製品を試してみたり、他の便秘解消法と組み合わせるようにしてください。(その際は、便秘のセルフケアについての記事や、腸活の記事群、便秘薬をのむ時に気を付けてほしいことの記事もご一読頂けると幸いです)。また、生活改善だけではスッキリしない方は、市販の便秘薬の力を借りることも考えてみましょう。その場合も、漫然と強すぎる薬を使い続けるのではなく、服用量を上手に調節して自然なお通じがでるようにすると、腸に負担が少なくなります。 関連リンク:複方毒掃丸ブランドサイト/おすすめの服用方法/複方毒掃丸の無料サンプルお申込みフォーム 複方毒掃丸は、6種類の生薬が自然に近いお通じを促す便秘薬です。小さな丸剤なのでのむ量を調節しやすく、ちょうどよいお通じを目指せます。ブログ記事:「生薬の便秘薬と、漢方の便秘薬」続編目次(クリックで記事に飛びます)
「腸内環境と便秘 ② 発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用」
■お薦めの腸内環境改善方法 後編 発酵食品を摂る オリゴ糖を摂る 食物繊維を摂る 実践のポイント 整腸薬でサポートする ■便秘対策には運動などの腸活も行い、それでも困ったときには便秘薬 (最終更新日:2022年5月22日) 注1:Turnbaugh, P.J et al, Microbial ecology: human gut microbes associated with obesity, Nature. 2006; 444 : 1027-1031 注2:参考文献:入江 潤一郎ほか, 腸内細菌叢と肥満症, 日内会誌 2015; 104 : 703-709 注3: K. Kato et al. Age-related changes in the composition of gut Bifidobacterium species, Current Microbiology 2017; 74(8): 987-995 注4:例えば、Suguru Nishijima et al., The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness, DNA Research, 2016; 23,(2): 125–133 注5:日本消化器病学会関連研究会,慢性便秘の診断・治療研究会:慢性便秘症診療ガイドライン 2017.南江堂,2017 p.62-63 注6: 例えば、Jessica D Smith et al. , Changes in intake of protein foods, carbohydrate amount and quality, and long-term weight change: results from 3 prospective cohorts, Am J Clin Nutr 2015;101:1216-1224 . アメリカでの、12万人を対象にした大規模調査。 写真説明:腸内フローラは、お花畑にたとえられることも多いです。今年の春の、花満開の写真にタイトル文字をのせてみました。 ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)「腸活」について①
2021.04.26「腸活」とは一般に、腸内環境を整えたり腸の働きをよくすることで、便秘を改善したり、より健康な全身状態を目指したりすることを指します。便秘は生活の質(QOL)を低下させますし注1、最近では、腸内環境が肥満や神経伝達物質のバランスにも関係しているのではないかとの指摘注2が注目さみてれています。腸内環境や腸の調子を整える腸活は、健康のために重要です。今回から3回シリーズで、この腸活についてみていきたいと思います。今回は腸活の大切さや分類などの全般を概観し、各論として、次回は「食べる腸活」、その次は「食べる以外の腸活」についてお話します。■腸活とは、なにか?
「腸活」という言葉は割と新しく、「婚活」や「終活」と同じ「〇活」族のひとつです。「〇活」という言葉は、前向きかつ包括的で便利だからか好感度が高いようで、文化庁の「令和元年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」によると、「〇活」のような言い方を他人が言うのが気にならないと答えた人の割合は90%にのぼるそうです。2文字でイメージが膨らむ、わかりやすいネーミングですね。この2文字の裏には、とても幅広くて奥が深い世界が広がっています。腸活の目的
腸活の目的は、だいたい次の3つに絞られます。 (1)便通を改善する (2)腸内環境自体を改善する (3)以上の結果としての、ダイエット、長寿、美容など (1)の便通の改善は、いわゆる便秘解消・便秘改善です。日本人の約3割の人が便秘に悩んでいて、その中の約1割は、週に0回から2回しか排便ができていないという報告があります注3。便秘に悩む人は多く、人によっては大変深刻にとらえられています。便通の改善は、腸活の主要テーマです。(2)の腸内環境の改善は以前にもまして脚光を浴びてきている考え方です。腸内の環境を整えてあげることは、健康維持や便秘の改善・解消のために大切です。私たちの腸の中には、約100兆個もの細菌(腸内細菌)がいて、その状態は、健康と密接に関係しています。腸内環境を改善するような食材や、ヨーグルトなどの加工食品の人気は、高まっています。 関連リンク:ブログ記事「ニッポン人の便秘事情を俯瞰する」 (3)になると、やや高次な目的で、あまり短期的で明確な成果は期待しないほうが無難かもしれません。ただ、腸活を一生懸命実行しているうちに、だいたい半年くらいで食の好み全般や生活リズムが今より健康的なものに変わってくるはずです。そうすると美容健康上の様々な好影響が大いにみられるでしょう。 腸内環境と肥満の関係についてはまだわからない点が多いのですが、肥満の人は腸内細菌の多様性が失われていると考えられています注4。また、腸に良いヘルシーな食材(食物繊維やオートミール)を好む人たちにはスリムな人が多いという調査報告があります注5。腸活で腸内環境を改善すること自体が一種のダイエットといえるかもしれません。 また、便秘は生活の質を下げるだけでなく、寿命を縮めるという指摘が複数ありますので注6、便秘改善は長寿にも寄与すると思われます。更に、腸によい食物繊維の摂取が、長期の総死亡率を2割近く下げるという長期にわたる大規模追跡調査の報告もあります注7。腸活は、気長に続ければ、ダイエットや健康増進・長寿につながる可能性を秘めているといえるでしょう。 美容については、医学的なエビデンスは見つかりませんが、生き生きと腸活をしている人は、生活の質も高く、見た目も健康的なことでしょう。例えば、便秘で張ったお腹や、お腹周りの筋肉の衰えは、ぽっこりお腹の原因です。腸内環境の改善や運動といった腸活でこれらを改善すれば、ぱっと見の印象まで変わってきます。 関連リンク:ブログ記事「便秘と寿命」/「便秘と野菜の話」/「ぽっこりお腹と便秘」腸活のアプローチ
腸活のアプローチを大まかにわけると、2つに分類できます。(A)善玉菌のチカラを借りるための「食べる腸活」
まず、「食べる腸活」とはどういう活動なのでしょうか。広く知られているように、腸の中にはおよそ100兆個もの細菌がいて、私たちの体はそのうち善玉菌と呼ばれている菌に助けられながら生きています(乳酸菌やビフィズス菌は、善玉菌の代表格です)。善玉菌は、その代謝物で腸の動きを高め、また有害な菌の働きを抑えることで、便通を良くしたり、便の状態を改善したりしてくれます。この善玉菌を増やしてあげるために、食べるものに工夫を凝らすことが、「食べる腸活」です。腸によいとされるヨーグルトなどの加工食品や、食材を積極的に摂るようにします。 関連リンク:「腸内細菌と、健康・便秘」/「便秘によい食べ物」(B)それ以外の方法で腸の動きを正常にする、「食べる以外の腸活」
「食べる以外の腸活」は、主に腸の動きを助けてあげるような腸活で、腸内環境の改善というよりは、より便秘改善に比重を置いた活動です。腸内環境が整っても、腸が正常に動かなければ、快便や健康な毎日は望めません。腸活の具体的な方法
もうすこし詳しく方法論を分解してみます。(A)「食べる腸活」(=腸によい食生活)
(1)善玉菌を食す (2)善玉菌のエサになるものを食す (3)善玉菌が作り出すのと同じ良い物質を食す 人間は、生まれた時には、腸内に細菌を持っていません。生後間もなく母親から細菌を受け継ぎ、その後、食事や環境との接触を通じて徐々に善玉菌を含む安定した腸内フローラを作り上げていきます。(1)から(3)の方法は、その営みを意図的に補完しようとしているわけです。これらは、腸活の中核なので、次会に詳しく触れてみたいと思います。 (1)の善玉菌を食すとは、ヨーグルトを食べることや、乳酸菌・ビフィズス菌含有食品、サプリメント、あるいは整腸薬を摂ることです。腸活ブーム以前からある方法なのでエビデンスも豊富で、生きた善玉菌(プロバイオティクスとも言います)を食すことについては、排便回数の増加や腸管通過時間の短縮が認められるとして、慢性便秘の治療法の1つとしても推奨されています(「慢性便秘症治療ガイドライン」2017 南江堂)。 近年、善玉菌は免疫力を整えるのではないかと注目されています。腸は善玉菌だけでなく、大腸菌や口から入ってきた病原菌など様々な微生物にさらされますから、腸管には免疫機能にかかわる細胞が多く集まっています。この免疫細胞たちは、腸内の一部の細菌と共生しながら体を守ってくれています。ヨーグルトに用いられる様々な種類の善玉菌が、体の免疫全般を整えてくれるという調査結果も数多く出され、巷にはこうした菌が入った乳酸菌飲料があふれています。今や、ヨーグルトが「食べる腸活」のメインストリームになっているように感じる方もいらっしゃるかもしれません。 善玉菌を増やしてくれる方法は他にもあります。(2)(3)にあるように、善玉菌そのものを食べなくても、発酵食品・オリゴ糖・食物繊維といった食品を食べることで、腸内環境を改善し、便秘も改善することができます。第2回では、食べる腸活(=腸によい食生活)について、食品ごとに分けてご説明します。(B)「食べる以外の腸活」
大腸の働きは、自分の意思でコントロールすることができません。そのため、適切な刺激をあたえることで、働きをサポートしてあげよう― それが食べる以外の腸活に共通した考え方です。自律神経の乱れをとる、朝コップ1杯の水を飲む、マッサージ、有酸素運動や筋トレ等、腸を動かすための魅力的な方法がたくさんあります。これらは第3回でご説明したいと思います。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 便秘は様々な原因で引き起こされるので、実は腸活だけで便秘が解消されるとは限りません。なので便秘に悩んでいる方の中には、腸活で便秘が改善せず期待外れに感じてしまう人がいるかもしれません。しかし、便秘が完全に治らなかったとしても、腸活は腸内環境が悪化しがちな便秘の人にこそ、実行してほしい、便秘薬メーカーとしてはそんな風にも思います。今後、腸内細菌についての研究はさらに進むとみられ、健康維持の重要課題として腸活の実践がこれまで以上に注目されてくるでしょう。■シリーズ目次
腸活の具体的なアクティビティを解説する、次回以降の構成は、以下の通りです。クリックすると各項目に直接飛ぶことができます。「腸活」について② 腸に良い食生活 実践レシピ付き
ポイント1 朝食を食べる ポイント2 ヨーグルトなどの乳酸菌を摂る ポイント3 食物繊維を摂る ポイント4 発酵食品を摂る ポイント5 オリゴ糖を摂る 実践!腸活レシピ「腸活」について③ 食べる以外の腸活
■腸への語りかけ 1.リラックスして自律神経を整える 2.運動をする 3.マッサージをする 4.ツボ押しをする 関連リンク:ブログ記事「腸内環境と便秘 ① 腸内フローラ/ヨーグルト」/「腸内環境と便秘 ② 発酵食品やオリゴ糖、食物繊維、整腸薬の活用」/「便秘と運動」 (最終更新日:2022年4月23日) 注1:Sun, S.X. et al, Impact of chronic constipation on health-related quality of life, work productivity, and healthcare resource use: an analysis of the National Health and Wellness Survey, Dig Dis Sci., 2011 Sep;56(9):2688-95. 注2:Peter J Turnbaugh et al, An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest. Nature, 2006 Dec 21;444(7122):1027-31. や、Matsumoto M, et al., Cerebral low-molecular metabolites influenced by intestinal microbiota: a pilot study. Front Syst Neurosci. 2013 Apr 23;7:9. 注3:Tamura A, et al.Prevalence and Self-recognition of Chronic Constipation: Results of an Internet Survey. J Neurogastroenterol Motil. 2016; 22(4): 677-84. 注4:入江 潤一郎ほか, 腸内細菌叢と肥満症, 日内会誌 104 : 703~709, 2015. 注5:食物繊維と肥満の関係については、例えば Kuijsten, A et al., Dietary fibre and incidence of type 2 diabetes in eight European countries: the EPIC-InterAct Study and a meta-analysis of prospective studies. Diabetlogia. 2015 Jul;58(7):1394-408./ オートミールについては、Victor L Fulgoni 3rd, et. al., Oatmeal consumption is associated with better diet quality and lower body mass index in adults: the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES), 2001-2010, Nutr Res. 2015 Dec;35(12):1052-9. 注6:例えば、Joseph Y Chang, et al. Impact of functional gastrointestinal disorders on survival in the community. Am J Gastroenterol. 2010 Apr;105(4):822-32. や Kenji Honkura, et al. Defecation frequency and cardiovascular disease mortality in Japan: The Ohsaki cohort study. Atherosclerosis. 2016 Mar;246:251-6. 注7:Park Y, et al., Dietary fiber intake and mortality in the NIH-AARP diet and health study. Arch Intern Med. 2011 Jun 27;171(12):1061-8. アメリカでの9年間の追跡調査で、食物繊維の摂取は、男女両方における総死亡率低下と有意な関連を示した(男性 0.78(95% CI:0.73~0.82;p<0.001)、女性 0.78(95%CI:0.73~0.85;p<0.001))。 et al., Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study, Am. J. Clin. Nutr., 111(5), May 2020, 1027–1035 日本での18~21年の追跡調査で、食物繊維の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループに比べ、総死亡リスクが男性で23%、女性で18%、それぞれ低下した。 ひとこと 最後までお読みいただきありがとうございます。今後、記事がお役に立ちましたら、SNSでもご共有いただけますと幸いです! 毒掃丸のお買い求めは全国のドラッグストア・通販サイトで。見つからない場合は「毒掃丸をください」と申し出てください。こちら(SHOPどくそうがん)でも販売しております→ショップどくそうがん | 便秘薬の毒掃丸 山崎帝國堂のネットショップ (dokusougan.jp)